【完結】 仮面で隠していた傷痕を撫でたら愛が溢れてきた大公様 〜普通じゃなかったらしい私の中の普通〜

紬あおい

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22.睨む女

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大公邸に来て3日目。
今朝は、早くからテオドリクスが領地を見に行ったので、侍女のリリアナに支度を手伝ってもらいながらお喋りする。
リリアナは16歳で私と同い年だ。
髪と瞳が明るいブラウンで、可愛らしい顔立ちをしている。

「奥様は、閣下と6つ違いですが、お話とか合います?」

普通は聞かないようなことを平気で聞いてくるが、リリアナに腹は立たない。
嫌味っぽくなくて、単に素直なのだ。
これが兄嫁予定のナリエラだと、ちょっと違った印象で、リリアナよりも断然厄介だった。

「歳の差かぁ…考えたことないわ。テオって気遣いが凄いから、歳を感じさせない何かがあるのかも。それに、昔から私の実家には、よく来てたしね。」

「これは言っていいのか分かりませんが、仮面を取ったら怖くないですか?」

「あぁ…傷痕の話ね?怖くないわよ!」

「3年前、あのケガをしたのは、騎士のカトリン様を守ったせいだって言われてますけど…閣下はカトリン様に気があるって噂もありまして…でも、奥様とご結婚なされたのなら、単なる噂ってことですね!」

「あら、そうなの。ケガをした理由まで聞いたことなかったわ。噂は勝手に一人歩きするから、あまり話さない方がいいわね。」

支度の手伝いを終えたリリアナは、やべぇといった顔をして出て行った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


テオドリクスと女性の話なら、これからいくらでも出てきそうだなぁ、なんて私は考えた。
この前、ちゃんと話しておいて良かったかもしれない。

そんなことを考えていたその日に、カトリンに話し掛けられるとは思わなかった。

テオドリクスが外出中で暇だったので、庭園を1人で散歩していた。
とは言え、迷子になりそうな敷地面積なので、ガゼボに行っただけだ。

すると、騎士のカトリンが話し掛けてきた。

「奥様ご機嫌麗しゅうございます。カトリン・アンジューです。」

「あら、アンジュー卿、ご機嫌よう。大公なら外出中よ?」

「奥様にお聞きしたいことがありまして。」

「何かしら…?」

カトリンは、また睨むような表情で切り出した。

「奥様は、閣下を愛していらっしゃるのですか?」

ド直球で驚いた。
これってテオドリクスに片想いフラグ立ったのかしらなどと考える。

「もちろんです。」

「あの傷でも?」

「もちろんです。」

「何も知らないくせに!閣下は私を守る為に、あのケガをされたのです。元婚約者のメルラ様と婚約破棄されてから、閣下が興味を示したのは私だけですわ!そのメルラ様もご結婚されましたし、傷心の末、奥様とご結婚なさるつもりでしょう。でも、私の方が相応しいと思います。」

同じ答えを繰り返したからか、カトリンは感情的になってきた。
そんなカトリンに、私もちょっとイライラしてきた。

「だから?あなたの事情とか、今の私達夫婦に関係ありますかしら?」

「奥様より、私の方が閣下を大切に思っております!だから、ケガをしても私を守ってくださったのたわ!奥様、潔く身を引いてください!!」

「それは出来ませんね。」

「どうせ大公妃になりたいとか資産目当てでしょう?じゃなきゃ、あんな傷痕がある人と結婚しようなんて、普通思わないじゃない!!」

(あぁ、出たよ『普通』。これはガツンと芽を摘んどく?人生詰むけど?)

「あんな傷痕とは聞き捨てならないし、普通って何なのよ?あなたの常識の枠に、私を勝手にはめ込まないでちょうだい。それに、閣下は元婚約者様にお気持ちはなかったし。寧ろ、ご結婚されてほっとなさっていると思いますよ?あなたを庇ってのケガというのも、領地民であり臣下だからではないかしら?勝手な妄想はおやめなさい!」

ガバッと椅子から立ち上がり、私がブチ切れた瞬間、後ろから声がした。
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