【完結】 仮面で隠していた傷痕を撫でたら愛が溢れてきた大公様 〜普通じゃなかったらしい私の中の普通〜

紬あおい

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23.仁王立ちの男

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「セシリア、ここに居たのか。探したぞ?」

突然の声に振り向くと、テオドリクスが仁王立ちしていた。
笑顔が怖い気がする。
いや、見たことない位に目が笑っていない。

「たまたまお会いしたので、アンジュー卿とお話してましたの。」

私はテオドリクスが来てくれた安心感に、怒りが消えてしまった。
それよりも、この後どうなるのかが気になる。
そんな私の気持ちを察したのか、テオドリクスはカトリンを睨み付けた。

「そうか。ちょっと聞こえてしまったのだが、妻に何と言ったか、もう一度聞かせてもらおうか。」

「あ、あの、いえ、私は別に…」

カトリンが震え出す。

「では、妻への質問に俺から答えよう。
まず、これは、そなたを守る為にしたケガではない。を守る為だ。
あの状況では、男だろうが女だろうが、子どもだろうが年寄りだろうが、そこに居ても俺は戦うし守っただろう。
それが、俺と婚約しておいて浮気したメルラであっても、あの時は助けただろう。
まあ、さっさと結婚してくれたメルラは、今は夫と上手くやっているようだから、良かったけどな。
あと、妻は大公妃や資産目当てで結婚したのではない。
妻の実家は帝国でも一、二を争う公爵家だ。
それに、人柄も申し分ない!
顔に傷痕がある男など、嫌われても好かれることはないと思っていた俺の傷を撫でて、セシリアは言ったんだ。
『その傷痕は命懸けで戦ってくれた証』と言って涙し、『守ってくれてありがとうと思っても、離れていく理由にはならない』と言ってくれる優しい妻だ。
この3年、そなたは俺に何をしてくれた?
『大公に守られた女』などという戯言を吹聴しただけではないか!
面倒だから、訂正せず黙っていただけだ。
これ以上、余計なことを言うなら、この騎士団を辞するがいい。
それが嫌なら、今すぐ心を入れ替えて、セシリアに仕えろ!!」

「も、申し訳ございません…閣下…」

「そなたは、一体誰に謝ってるんだ?謝罪するなら、俺の妻にだろ?」

「奥様、申し訳ございませんでした…」

カトリンは項垂れたまま、この場から立ち去った。

テオドリクスは、やれやれといった顔で私を見た。

「凄いタイミングで現れましたね!」

「ちょうど帰宅したところ、マービンが知らせてくれてな。セシリアの顔を見たくて、早目に戻って来たんだが、それも良かったのかもしれないな!」

私はテオドリクスの頭をヨシヨシ撫でる。

「おい、これじゃ本当にワンコじゃないか!」

「そうよ、私の愛しい愛しい閣下!あんなに話すのは初めて見ました。お怒りになると饒舌ですのね!」

「いや、その…ああいうのは…つけ上がるから…俺のセシリアに………あぁ、もう、単に許せなかったんだ!」

テオドリクスは顔をくしゃくしゃにして笑った後、ひょいと私を抱き上げて領地邸に戻った。

いい加減な噂の火消しをするよりも、この『閣下のお姫様抱っこ』の方が絶大な効果があった。

おまけに、心配してこっそり見ていたマービンが皆に話したことにより、テオドリクスの妻愛が知れ渡ってしまった。

翌日には「閣下、妻溺愛」と知れ渡り、皆のあたたかい視線に包まれたのだった。
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