23 / 47
23.仁王立ちの男
しおりを挟む「セシリア、ここに居たのか。探したぞ?」
突然の声に振り向くと、テオドリクスが仁王立ちしていた。
笑顔が怖い気がする。
いや、見たことない位に目が笑っていない。
「たまたまお会いしたので、アンジュー卿とお話してましたの。」
私はテオドリクスが来てくれた安心感に、怒りが消えてしまった。
それよりも、この後どうなるのかが気になる。
そんな私の気持ちを察したのか、テオドリクスはカトリンを睨み付けた。
「そうか。ちょっと聞こえてしまったのだが、妻に何と言ったか、もう一度聞かせてもらおうか。」
「あ、あの、いえ、私は別に…」
カトリンが震え出す。
「では、妻への質問に俺から答えよう。
まず、これは、そなたを守る為にしたケガではない。領地民を守る為だ。
あの状況では、男だろうが女だろうが、子どもだろうが年寄りだろうが、誰がそこに居ても俺は戦うし守っただろう。
それが、俺と婚約しておいて浮気したメルラであっても、あの時は助けただろう。
まあ、さっさと結婚してくれたメルラは、今は夫と上手くやっているようだから、良かったけどな。
あと、妻は大公妃や資産目当てで結婚したのではない。
妻の実家は帝国でも一、二を争う公爵家だ。
それに、人柄も申し分ない!
顔に傷痕がある男など、嫌われても好かれることはないと思っていた俺の傷を撫でて、セシリアは言ったんだ。
『その傷痕は命懸けで戦ってくれた証』と言って涙し、『守ってくれてありがとうと思っても、離れていく理由にはならない』と言ってくれる優しい妻だ。
この3年、そなたは俺に何をしてくれた?
『大公に守られた女』などという戯言を吹聴しただけではないか!
面倒だから、訂正せず黙っていただけだ。
これ以上、余計なことを言うなら、この騎士団を辞するがいい。
それが嫌なら、今すぐ心を入れ替えて、セシリアに仕えろ!!」
「も、申し訳ございません…閣下…」
「そなたは、一体誰に謝ってるんだ?謝罪するなら、俺の妻にだろ?」
「奥様、申し訳ございませんでした…」
カトリンは項垂れたまま、この場から立ち去った。
テオドリクスは、やれやれといった顔で私を見た。
「凄いタイミングで現れましたね!」
「ちょうど帰宅したところ、マービンが知らせてくれてな。セシリアの顔を見たくて、早目に戻って来たんだが、それも良かったのかもしれないな!」
私はテオドリクスの頭をヨシヨシ撫でる。
「おい、これじゃ本当にワンコじゃないか!」
「そうよ、私の愛しい愛しい閣下!あんなに話すのは初めて見ました。お怒りになると饒舌ですのね!」
「いや、その…ああいうのは…つけ上がるから…俺のセシリアに………あぁ、もう、単に許せなかったんだ!」
テオドリクスは顔をくしゃくしゃにして笑った後、ひょいと私を抱き上げて領地邸に戻った。
いい加減な噂の火消しをするよりも、この『閣下のお姫様抱っこ』の方が絶大な効果があった。
おまけに、心配してこっそり見ていたマービンが皆に話したことにより、テオドリクスの妻愛が知れ渡ってしまった。
翌日には「閣下、妻溺愛」と知れ渡り、皆のあたたかい視線に包まれたのだった。
390
あなたにおすすめの小説
姉の結婚式に姉が来ません。どうやら私を身代わりにする方向で話はまとまったみたいです。式の後はどうするんですか?親族の皆様・・・!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
家の借金を返済する為に、姉が結婚する事になった。その双子の姉が、結婚式当日消えた。私の親族はとりあえず顔が同じ双子の妹である私に結婚式を行う様に言って来た。断る事が出来ずに、とりあえず式だけという事で式をしたのだが?
あの、式の後はどうしたら良いのでしょうか?私、ソフィア・グレイスはウェディングドレスで立ちつくす。
親戚の皆様、帰る前に何か言って下さい。
愛の無い結婚から、溺愛されるお話しです。
【完結】恋多き悪女(と勘違いされている私)は、強面騎士団長に恋愛指南を懇願される
かほなみり
恋愛
「婚約したんだ」ある日、ずっと好きだった幼馴染が幸せそうに言うのを聞いたアレックス。相手は、背が高くてきつい顔立ちのアレックスとは正反対の、小さくてお人形のようなご令嬢だった。失恋して落ち込む彼女に、実家へ帰省していた「恋多き悪女」として社交界に名を馳せた叔母から、王都での社交に参加して新たな恋を探せばいいと提案される。「あなたが、男を唆す恋多き悪女か」なぜか叔母と間違われたアレックスは、偶然出会った大きな男に恋愛指南を乞われ、指導することに。「待って、私は恋愛初心者よ!?」恋を探しに来たはずなのに、なぜか年上の騎士団長へ恋愛指南をする羽目になった高身長のヒロイン、アレックスと、結婚をせかされつつも、女性とうまくいかないことを気にしている強面騎士団長、エイデンの、すれ違い恋愛物語。
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで
春野オカリナ
恋愛
母が亡くなる前、「これは幸せを運ぶ仮面だから」と言って、仮面を付けられた。
母が亡くなると直ぐに父は、愛人と子供を家に引き入れた。
新しい義母と義妹は私から全てを奪い婚約者も奪った。
義妹の嫁ぎ先の辺境伯爵に嫁いだら、知らない間に旦那様に溺愛されていた。
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―
望月 或
恋愛
「イヤよっ! あたし、大好きな人がいるんだもの。その人と結婚するの。お父様の言う何たらって人と絶対に結婚なんてしないわっ!」
また始まった、妹のワガママ。彼女に届いた縁談なのに。男爵家という貴族の立場なのに。
両親はいつも、昔から可愛がっていた妹の味方だった。
「フィンリー。お前がプリヴィの代わりにルバロ子爵家に嫁ぐんだ。分かったな?」
私には決定権なんてない。家族の中で私だけがずっとそうだった。
「お前みたいな地味で陰気臭い年増なんて全く呼んでないんだよ! ボクの邪魔だけはするなよ? ワガママも口答えも許さない。ボクに従順で大人しくしてろよ」
“初夜”に告げられた、夫となったルバロ子爵の自分勝手な言葉。それにめげず、私は子爵夫人の仕事と子爵代理を務めていった。
すると夫の態度が軟化していき、この場所で上手くやっていけると思った、ある日の夕方。
夫と妹が腕を組んでキスをし、主に密会に使われる宿屋がある路地裏に入っていくのを目撃してしまう。
その日から連日帰りが遅くなる夫。
そしてある衝撃的な場面を目撃してしまい、私は――
※独自の世界観です。ツッコミはそっと心の中でお願い致します。
※お読みになって不快に思われた方は、舌打ちしつつそっと引き返しをお願い致します。
※Rシーンは「*」を、ヒロイン以外のRシーンは「#」をタイトルの後ろに付けています。
【完結】婚約者には必ずオマケの義姉がついてくる
春野オカリナ
恋愛
幼い頃からの婚約者とお出掛けすると必ず彼の義姉が付いてきた。
でも、そろそろ姉から卒業して欲しい私は
「そろそろお義姉様から離れて、一人立ちしたら」
すると彼は
「義姉と一緒に婿に行く事にしたんだ」
とんでもないことを事を言う彼に私は愛想がつきた。
さて、どうやって別れようかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる