53 / 67
49.喋る剣達
しおりを挟む気付いたら見知らぬ場所にいた。
草木も生えぬ荒涼とした場所。
在るのは、大きな岩と二本の剣。
「あれは、魔気の封印?」
北部の森で見た景色に似ている。
近付いて見ると、北部で見た剣の形と違う。
古めかしいが、美しい宝石のような装飾が施されている。
ブルーサファイアとアメジストみたいな。
「綺麗な剣ね。」
話し掛けるでもなく、呟いてみる。
「お前が新しい主か…」
どこかから声が聞こえる。
「まさか、あなた、今喋った??」
「そうだ。私だ。」
ブルーサファイアっぽい方が喋る。
「いや、ちょっと待って?誰なの?ていうか、何で剣が喋ってんの?!」
「喋る剣、一本じゃないわよ?」
「はぁっ!?えぇぇーーーっっっ??」
何なの?
何処なの?
「私、死んだの?ヴィル様の上で?腹上死したの?やだやだやだやだやだー!!」
「くくっっっ、落ち着け。意識だけここに呼んだんだ。体はあちらに在る。」
「やだ、この子、ウケる!腹上死って!!あははははっ!!」
剣達が笑う。
「な、何なんですか?!」
これが落ち着いていられるかっつうの。
ふふっと笑いを堪えながら、アメジストっぽい剣が話し出す。
「あなたと旦那、この後、封印の儀をやらなきゃいけないから、事前に呼んだのよ。」
陛下が言ってたアレのこと?
「ちゃんと説明して!てか、誰?何?!」
混乱して、自分でも何を言っているのか分からない…
「あたしがフェスティナで、もう1本の剣がジェスティナよ。あたし達も前世は人間で夫婦だった。勝手に選ばれて、封印に使われてる。」
二人は、西部の領地に住み、夫婦で共鳴して封印の儀をしていた。
子どもには恵まれなかったが仲の良い夫婦で「命尽きる時は一緒に逝きたい」と願っていたら、剣として存在するなら願いが叶うと『神』のお告げがあった。
共に過ごせるならと了承して今に至る、と。ちなみに、二人を岩に突き刺したのは『神』。
そして長い時を経て、剣としての役割りを終える時がやって来たので、代わって欲しい、とも。
話を聞きながら、怒りが湧いてくる。
「帝国を守る為にヴィル様と剣になれと?馬鹿言ってんじゃないわよ?私達、新婚だし、まだまだやりたいことたくさんあるの!たまの封印だったらやるけど、剣になるのは無理!!!」
「まぁ、落ち着いてくれ。代わって欲しいのは、剣としてここに存在するのではなく、完全に封印し、この世を正常化することだ。北部はこの前、お前達夫婦が完全に封印し浄化した。あとは皇宮の魔気を浄化すればいいのだ。」
ジェスティナが落ち着いた声で話す。
「剣が根元まで刺さって、あの時の黄金の魔法陣が発動すれば、全て完了するのね?でも、あなた達はどうなるの?」
「それは、その時にならなければ分からない。お告げは、死ぬまで一緒にいるってことだから。もしかしたら、一緒に生まれ変われるかもしれないし、生まれ変わってから出会えるかもしれない。例え、ここで消滅しても、後悔しない位に、たくさんたくさん一緒に過ごしてきたの。ねぇ、ジェスティン。」
さっきまでのふざけた感じは消えて、フェスティナはしみじみと語り、ジェスティナも「そうだ」と呟く。
そんな状況を受け入れられるのか…
「この後も、ずっと一緒にいられるといいですね…」
こんな経験してまで一緒にいたいんだから。
「あ、でも、あなた達が失敗したら、あたし達は魔気に飲み込まれるし、帝国も滅茶苦茶になるからね?」
フェスティナ、先に言えよ…
「剣を抜いて、刺せばいいんでしょ?」
「それには、強固に共鳴していないと。お前、今旦那と微妙な状態だっただろ?」
「それは、これのせいじゃない!意識戻ったら仲直りするわよ!!」
「あっ、あなた、体に戻った瞬間に旦那の危機に遭遇するから、そこの二本の剣を持って帰りな。封印の儀には役に立たないけど、サクッと人は斬れるよ?あと、少しは浄化出来るから、旦那を狙う奴らに向かって振り回してみな!魔気を浄化したら、正気に戻せる筈。」
フェスティナもジェスティンも楽しそうな雰囲気を醸し出す。
しばらく話してたら、長年寄り添ってきたお茶目な夫婦って感じだ。
「ヴィル様の危機って何よ?!取り敢えず、おかしな奴に狙われてる真っ最中なのね?早く帰りたいっ!てか、帰せーーーっ!!」
「今見た景色は、皇宮の庭園を再現して見せてるだけだから、十日後の暁月に会いましょう!」
「じゃー、またな、お嬢ちゃん!」
「はーい!またねっ!!」
そうして、分かったんだか分かんないんだか、やや曖昧さを残しつつ、光が射す方に飛ばされた。
360
あなたにおすすめの小説
愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜
あさとよる
恋愛
親の命令で決められた結婚相手は、私のことが大嫌いだと豪語した美丈夫。勤め先が一緒の私達だけど、結婚したことを秘密にされ、以前よりも職場での当たりが増し、自宅では空気扱い。寝屋を共に過ごすことは皆無。そんな形式上だけの結婚なら、私は喜んで離婚してさしあげます。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
私から何でも奪い取る妹は、夫でさえも奪い取る ―妹の身代わり嫁の私、離縁させて頂きます―
望月 或
恋愛
「イヤよっ! あたし、大好きな人がいるんだもの。その人と結婚するの。お父様の言う何たらって人と絶対に結婚なんてしないわっ!」
また始まった、妹のワガママ。彼女に届いた縁談なのに。男爵家という貴族の立場なのに。
両親はいつも、昔から可愛がっていた妹の味方だった。
「フィンリー。お前がプリヴィの代わりにルバロ子爵家に嫁ぐんだ。分かったな?」
私には決定権なんてない。家族の中で私だけがずっとそうだった。
「お前みたいな地味で陰気臭い年増なんて全く呼んでないんだよ! ボクの邪魔だけはするなよ? ワガママも口答えも許さない。ボクに従順で大人しくしてろよ」
“初夜”に告げられた、夫となったルバロ子爵の自分勝手な言葉。それにめげず、私は子爵夫人の仕事と子爵代理を務めていった。
すると夫の態度が軟化していき、この場所で上手くやっていけると思った、ある日の夕方。
夫と妹が腕を組んでキスをし、主に密会に使われる宿屋がある路地裏に入っていくのを目撃してしまう。
その日から連日帰りが遅くなる夫。
そしてある衝撃的な場面を目撃してしまい、私は――
※独自の世界観です。ツッコミはそっと心の中でお願い致します。
※お読みになって不快に思われた方は、舌打ちしつつそっと引き返しをお願い致します。
※Rシーンは「*」を、ヒロイン以外のRシーンは「#」をタイトルの後ろに付けています。
(完)大好きなお姉様、なぜ?ー夫も子供も奪われた私
青空一夏
恋愛
妹が大嫌いな姉が仕組んだ身勝手な計画にまんまと引っかかった妹の不幸な結婚生活からの恋物語。ハッピーエンド保証。
中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。魔法のある世界。
(完)子供も産めない役立たずと言われて・・・・・・
青空一夏
恋愛
グレイス・カリブ伯爵令嬢である私は、家が没落し父も母も流行病で亡くなり借金だけが残った。アイザック・レイラ準男爵が私の美貌を気に入って、借金を払ってくれた。私は、彼の妻になった。始めは幸せだったけれど、子供がなかなかできず義理の両親から責められる日々が続いた。
夫は愛人を連れてきて一緒に住むようになった。彼女のお腹には夫の子供がいると言う。義理の両親や夫から虐げられ愛人からもばかにされる。「子供も産めない役立たず」と毎日罵られる日々だった。
私には歳の離れた兄がいて、その昔、父と諍いを起こし家を出たのだった。その兄が生きていて、チートな冒険者になっており勇者と共に戻って来た。だが、愛人が私のふりをして・・・・・・ざまぁ。納得の因果応報。
虐げられる美貌の主人公系。
大14回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。ちなみに順位は37位でした。投票して頂きありがとうございました。
【完結】愛する夫の務めとは
Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。
政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。
しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。
その後……
城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。
※完結予約済み
※全6話+おまけ2話
※ご都合主義の創作ファンタジー
※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます
※ヒーローは変態です
※セカンドヒーロー、途中まで空気です
「聖女失格」と追放された令嬢ですが、辺境伯に溺愛されて覚醒しました
桜月あいす
恋愛
妹に婚約者を奪われ、「聖女の素質なし」と王都から追放された伯爵令嬢リュシエル。
唯一の「罪滅ぼし」として与えられたのは、死地と呼ばれる辺境への嫁入りだった。
冷たい目をした若き辺境伯レオニス。
政略の犠牲として押しつけられた自分が、彼の邪魔にならないようにと、リュシエルはひたむきに役目を果たしていく。
──ただ、ほんの少しでも、この地で必要とされたいと願って。
けれどある日、彼の言葉と腕に抱かれた夜、リュシエルの中で何かが目覚めた。
聖女失格と捨てられた令嬢が、愛と誇りを取り戻す、溺愛×ざまぁの甘く熱い逆転劇。
国の英雄は愛妻を思い出せない
山田ランチ
恋愛
大幅変更と加筆の為、再掲載しております。以前お読み下さっていた方はご注意下さいませ。
あらすじ
フレデリックは戦争が終結し王都へと戻る途中、襲われて崖から落ち記憶の一部を失くしてしまう。失った記憶の中には、愛する妻のアナスタシアの記憶も含まれていた。
周囲の者達からは、アナスタシアとは相思相愛だったと言われるがフレデリックだが覚えがない。そんな時、元婚約者のミレーユが近付いてくる。そして妻のアナスタシアはどこかフレデリックの記憶を取り戻す事には消極的なようで……。
記憶を失う原因となった事件を辿るうちに、中毒性のある妙な花が王城に蔓延していると気が付き始めたフレデリック達はその真相も追う事に。そんな中、アナスタシアは記憶がなく自分を妻として見れていない事を苦しむフレデリックを解放する為、離婚を決意する。しかし陰謀の影はアナスタシアにも伸びていた。
登場人物
フレデリック・ギレム
ギレム侯爵家の次男で、遠征第一部隊の隊長。騎士団所属。28歳。
アナスタシア
フレデリックの妻。21歳。
ディミトリ・ドゥ・ギレム
ギレム侯爵家当主。フレデリックの兄。33歳。
ミレーユ・ベルナンド
ベルナンド侯爵の妻で、フレデリックの元婚約者。26歳。
モルガン
フレデリックの部下。おそらく28歳前後。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる