【完結】 初恋を終わらせたら、何故か攫われて溺愛されました

紬あおい

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54.二本の剣

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ヴィル様と庭園にやって来た。
無事に任務遂行出来ることを祈りながら。

岩の周りに魔気を感じ、フェスティナ達からもらった剣を振り回し浄化する。

「北部の封印のせいで、ここの魔気が噴出したっていうのは、本当のところ分からないですね。」

「ああ。ただ北部より岩のひびは酷いな。まずは剣を抜くか。」

一本ずつ二人で抜くことにした。

「フェスティナ、抜くよー」

「はーい!」

剣も返事するんだ…

スッと抜けた。
ヴィル様は拍子抜けした顔をしている。

フェスティナを抜いた場所から魔気が漂ってきた。

「サラ、急ぐぞ!」

「ジェスティナ、抜くよ!」

「おう!」

無事に抜けた。

しかし、その瞬間、岩が真っ二つに割れて、白い魔法陣が発動した。

「ヴィル様!これじゃないですよね?!」

「黄金じゃないな。」

話しているうちに、白い魔法陣の光が増し、ヴィル様と二人吸い込まれた。

「うわぁーーー!!!」

岩の下は、岩だった…
以前見た、荒涼とした景色。

「ヴィル様、前に意識不明になった時、ここに来たんです。あの岩にフェスティナとジェスティナが刺さってましたが、今は私達が持ってるから…あの岩を封印すればいいんですかね?」

「そうだろうな。見渡す限り、あの岩しかないしな…」

「取り敢えず、岩の周りの魔気を浄化してからにしましょうか。」

「振り回すだけで浄化出来るって、便利だな。」

振り回しているうちに楽しくなって、ステップ踏んで踊り出すと、ヴィル様もつられて踊り出す。

私一人だとアホっぽいのに、ヴィル様が加わるとそれなりに華麗な舞に見えなくもない。

フェスティナがそれを見て吹き出す。

「ほんと、この子達、奇想天外でうけるーーー!」 

「ははは、危機感ゼロ夫婦だな。この調子でサクッと封印してくれ!」

そうだ、封印だ…
みたいなアホヅラのスペンサー夫婦。

「じゃーフェスティナ、いくよ!ヴィル様、準備おっけー?」

「大丈夫だ。いくぞ!」

よいしょっ!!
で、サクッと刺せた。

「次っ、ジェスティナ!」

「了解!」

よいしょっ!
で、刺せた。

楽勝じゃね?と思っていたら、出たよ、黄金の魔法陣!!
で、また吸い込まれること二回目。
今度は何処へ???

「よく来たな。ご苦労。」

神々しい銀髪の紳士。

「え…もしかして『神』?」

キョトンとするヴィル様と私。

「そうだ『神』だ。これで魔気は、しばらく封印出来た。」

『神』が言うには、人間達の不平不満等の黒い感情が、長年に渡り蓄積して魔気になること。
限界を超えると封印が解け、世に溢れ出し人間が汚染される。

今までは、短期的な効果しかなかった封印と浄化が、ヴィルヘルムとサラーシュによって長期的、若しくは永遠に封印することが出来た、ということだった。

「何で、ヴィル様と私に出来たんでしょう?」

「そなた達は、もしかしたら『神』と名付けられたわたしの末裔かもしれないな。特にヴィルヘルムの方にそれを感じる。サラーシュは、過去のヴィルヘルムの想い人だったようだ。あの執着からすると、な。」

執着って。
ふふふとなる。

「では、『神』とは何なんでしょう?」

ヴィル様が 首を傾げる。

「わたしにも分からぬ。『神』と勝手に名付けられ、封印が必要な時に起こされるが、大抵いつも寝ている。わたしもナニモノかに造り出された存在なのだろう。」

「結局よく分からないけど、しばらくは平和ということなんだな。」

ヴィル様よ、まとめになってなーい!!

「一つ言えるのは、人間の欲望は小さなものなら可愛げがあるが、時として害となるということかな。積りに積もったものは、膨大な悪となる。」

寝てばかりの『神』は、恐らく欲望に無縁の存在なんだろうなぁ。

「で、『神』様?私達、これで帰れるの?フェスティナとジェスティナはどうなるの??」

肝心なのはそこ!

「ヴィルヘルムとサラーシュは、この後、元の世界に戻す。フェスティナとジェスティナは、人間の姿としてここに残るか、生まれ変わるという選択肢がある。」

フェスティナとジェスティナは、どんな選択をするのだろうか。
それは二人の選択なので、ヴィル様と私は戻ることにした。

どの道を選んでも、きっとフェスティナとジェスティナなら幸せになれる筈。
強い絆で結ばれた二人だから。
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