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7.賑やかな夕食
しおりを挟む夕方、双子達はエミリオンの指導を終えて、楽しそうに執務室にやって来た。
がばっと開いたドアに、双子達の興奮が伝わる。
「お母様、終わりましたーーー!」
「今日も楽しかったです!」
「良かったわね!頑張りましたね。エ、エミリオン、さ、まっ……いや、違っ、せ、先生は?」
「きゃーっ!お母様、エミリオン様って言い掛けたわ!!」
「エミリオン様ってお呼びする許可はいただきましたよ、お母様!」
その時、開いたままのドアからコンコン、コンコンとノックの音がした。
「っ!?」
振り向くと、笑いを堪えたエミリオンだった。
「エミリオンです!リオラお嬢様とリディアお嬢様に、夕食のお誘いを受けましたので、ヴェリティ様にもお許しをいただきに参りました。」
「えっ!?お夕食?」
「ねぇ、お母様、いいでしょう?」
「エミリオン先生とご一緒がいいわ!」
双子達は、既に私の許可を得たものとして、にこにこと話す。
「エ、エミリオン様は、お、お忙しいのでは?」
「今日、この後の予定はありません。ヴェリティ様が宜しければ、ご招待を受けても?」
エミリオンも乗り気らしいと察した私は、コリンヌに目配せし、料理長への指示を頼んだ。
エミリオンが夕食まで共にするのは初めてだが、急な来客対応は可能な状態にしてある。
(確か、今日は旦那様はオーレリア様と食事なさる日だったから、ご連絡の必要ないわね…)
私は内心ほっとした。
いくら絵画の指導をお願いしている先生でも、若い公爵令息との食事は、レオリックは良い顔をしないだろう。
双子達も父親と今まで通りに接しているが、この先はどうなるか分からない年頃だ。
今日は仕方ないとしても、今後はエミリオンへの接し方も、双子達に話しておかなければと、私は悩みが一つ増えた。
しかし、私も双子達に甘い。
今夜は楽しい宴としよう。
「子ども達の我儘にお付き合いいただいて、ありがとうございます。ささやかですが、ご一緒にお夕食をお召し上がりください。」
「ヴェリティ様やお嬢様達との夕食なんて、美女に囲まれて幸せです。是非ご一緒させてください!」
「「やったーーー!!」」
また爽やかに笑うエミリオンに、双子達は嬉しそうだ。
「お母様は、残りのお仕事を片付けてしまいますから、リオラとリディアは、コリンヌも連れて、エミリオン先生をお庭でもご案内して差し上げて?」
「「はーい!!」」
「では、後程、楽しみにしています、ヴェリティ様。」
エミリオンは、リオラとリディアに手を引かれ、弾むような足取りで執務室を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして夕食の時間となり、食堂にはたくさんの料理が並んでいた。
「エミリオン先生は、お母様のお隣ね!」
リオラがさり気なくエミリオンを案内し、双子達は向かいの席に着いた。
「リオラの好きなローストビーフがあるわ!」
「リディアの好きなサーモンのカムリーヌ・ソース掛けもあるね!」
ここ最近は、私と双子達だけの食事が多くなっていたので、食事の補佐の必要はなかったが、今夜はエミリオンを招待したので、侍女長のクレシアとコリンヌに給仕をしてもらう。
(そう言えば、旦那様との週三日の食事は、朝夕の両方が叶わない日が増えたわね。朝だけとか、夜だけとか…まぁ、仕方ないかしらね。別居していたら皆無だもの…)
「お母様!お疲れのようですが大丈夫ですか?」
リヴィアが心配そうに声を掛けてきた。
「え、ええ…大丈夫よ!リディアもリオラも、たくさんお食べなさい。エミリオン様も遠慮なさらず、お召し上がりくださいね?」
「はい、美味しくいただいております。ヴェリティ様のお好きな物は何でしょう?」
「お母様はね、お肉もお魚も好き嫌いないの。だけど、一番お好きなのはお野菜!人参とか葉っぱとか、まるでうさぎさんみたいなの!!」
「ちょっ、リオラ!うさぎさんて…」
「確かに、ヴェリティ様は小動物のようにお可愛らしいですね。小さなお口で葉っぱとか…くくっ、萌える!」
「っ、なっ、何を!?今日のエミリオン様は、ちょっと変ですわ!」
双子達はにやにや見ているが、エミリオンはしれっとしている。
「お母様、実はエミリオン先生はこんな感じよ?」
「そうそう、悪戯っ子なの!この前なんて、リオラの描いたライオンを、勝手に猫にしちゃったし。」
「はっ!?」
「いや、それは内緒って言ったじゃないか!リオラお嬢様の描いたライオンがあまりにも可愛かったので、一層の事猫にしてしまおうって、皆で話しただろう?」
「そう!それで、可愛い猫が仕上がったの!」
「ライオンが…猫…?随分と楽しそうね。今度、お母様も描いて欲しいわ。」
リオラの直感的な筆使いと、リディアの幻想的な色使いで描かれる自分を見てみたい。
人間に仕上がるかも興味がある。
「では、私がヴェリティ様を描きましょう。執務室に飾っていただけたら嬉しいです。」
「わぁー、エミリオン先生がお母様を!?」
「素敵!絶対にお綺麗なお母様の絵になるわ!」
「はっ!?今、何と?」
「ですから、私にヴェリティ様を描かせてくださいと。」
「いやいや、エミリオン様の絵は値がつけられない程の価値がありますのよ?そのようなお方の絵のモデルとか、私、無理ですわ!」
「もちろん、お金などいただきません。私が、是非描いてみたい対象として、ヴェリティ様にお願いしたいのです。個展が終われば暇ですから、描かせてください。」
「では、あまり美化せず、有りの儘に描いてくださるなら…」
「もちろんです!そのままの美しさを描いてみせましょう。」
「「楽しみ!楽しみーーー!!」
エミリオンの押しの強さに負けた気もしないではないが、双子達が喜ぶので、私は承諾することにした。
「さあ、夕食も済みましたから、リオラとリヴィアは少し休んで、コリンヌに湯浴みをお願いしましょうね。」
「「はーい!エミリオン先生、またねー!!」」
「リオラお嬢様もリディアお嬢様も、湯浴みで温まって、ゆっくりお休みください。」
双子達が去った後、エミリオンはまだ上機嫌な微笑みを浮かべていた。
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