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17.ルーセントのイライラ
しおりを挟むその頃、ルーセントはロザリンドとの逢瀬を楽しんでいた。
いや、楽しむ筈だった。
情事の後、眠るロザリンドを横に、ルーセントは言いようのないモヤモヤを胸に抱えていた。
ロザリンドとの付き合いは、もうすぐ一年近くになる。
最初に抱いた女はロザリンドだった。
切っ掛けは、ロザリンドの父キャメロン公爵の言葉だった。
高位貴族を集めたパーティで、挨拶に来たキャメロン公爵が言ったのだ。
「皇族が特定の公爵家と懇意にすると、秩序が乱れますな。ルーセント殿下は柔軟で優秀とお見受け致します。是非、公爵家の秩序とバランスをお取りになる為に、次世代の若い貴族との交流を積極的にお願いしたい。」
「公爵家の秩序とバランス…どうすれば?」
「まずは、ルーセント殿下の美貌を武器に令嬢との親交を深め、その兄弟や父親への媒介とすべきです。令嬢達は憧れのルーセント殿下と親しくなれるし、娘可愛いの親達はルーセント殿下のお優しさに、協力を惜しまないでしょう。ルーセント殿下は何一つ手を汚すことなく、広い人脈を得ることが出来るでしょうね。」
残念なことに、ルーセントは何不自由無く育ち、素直で優しい気質につけ込まれた。
キャメロン公爵の自信溢れる話し振りに、すっかり騙されたのだ。
「しかし、私はレナリア以外の令嬢とは殆ど話したことがない。今更どうしたもんか…」
「我が娘、ロザリンドがおります。レナリア嬢とは違い顔も広く、社交界の華とも言われております。令嬢だけでなく令息達にも繋がりがあります。是非ロザリンドを利用して、ルーセント殿下の人脈を広げてください。」
そして、キャメロン公爵が引き合わせたロザリンドは、同い年であるにも関わらず、レナリアとは違い、妖艶さを持ち合わせた美しい令嬢だとルーセントは思ってしまった。
少し考えれば分かることなのに、妖艶さと手練手管に長けた女の違いを見極める思慮深さがルーセントには無かった。
言われるがままに会い、あっという間に体の関係を持つまでとなってしまった。
それでもロザリンドが優秀だったのは、他の令嬢とも会う機会を積極的に作ったことだ。
キャメロン公爵とロザリンドは、簡単にルーセントの信頼を得て、彼を思うままに操った。
キャメロン公爵の最終的な目的は、セルフォート公爵家と皇族の繋がりを阻止し、ロザリンドとルーセントを結婚させることだった。
キャメロン公爵家は皇族と繋がること、ロザリンドを正妻にするならば、女性に溺れたルーセントには、側室を何人持とうが制限しない。
こんな浅はかな計画にルーセントは巻き込まれた。
そうとは気付かないルーセントは、一年後にはレナリアと結婚すると信じて疑わない。
ロザリンドは魅力的ではあるが、レナリアの清楚な美貌と思慮深い人柄には、到底敵わない。
しかし、今日見たレナリアは、平民の服装で騎士と自然に微笑み合っていた。
そんなレナリアをルーセントは知らない。
(あんな奴に、あんな可愛らしい顔で笑いかけるなんて…あの騎士は一体何者なんだ?俺のレナリアに寄り添って。 考えただけでイライラする…)
ルーセントはその感情が嫉妬であることに気付かなかった。
そして、その感情をレナリアに与え、傷付けてきたことも。
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