【完結】 その身が焼き切れるほどの嫉妬をあなたにあげる

紬あおい

文字の大きさ
47 / 50

47.変わらない気持ち

しおりを挟む

合同結婚式から五年。
レナリアとジークフリードは、あの小さな家で子ども達と暮らしている。
長男のベルナード、長女のマリアベルは双子で三歳となり、伸びやかに育っている。

いたずら好きのベルナードと、好奇心旺盛で天然なマリアベルは、まるでジークフリードとレナリアなミニチュアだ。
二人でコソコソといたずらを画策している姿は、ジークフリードとレナリアのいつかのデジャヴのようだ。

そして、レナリアとジークフリードは、以前二人で話した通り、小さな家に執務室の分室を作り、父のウィルヘルム公爵と領地管理にあたっている。
ウィルヘルムとヘライザは、まだまだ若くて現役なので、次期公爵はベルナードになるかもしれないと、ジークフリードはこっそり思っている。

大きな邸を羨ましがる人が多い中、レナリアは、どうしてもこの家で暮らしたかった。
ジークフリードの想いと、たくさんの思い出がある大切な家で、子ども達とのびのび過ごしたかった。
その夢が叶い、自然に触れ合いながら子育ても楽しんでいる。

ノックスと遊ぶ子ども達を見ながら、レナリアはジークフリードに寄り掛かり、聞いてみる。

「ジークは、私と結婚して幸せ?」

「ああ、幸せだ。過去にいろんなことがあったのは、レナリアと出会う為だったのかもな。今は、ベルやマリも可愛くて、賑やかで笑いの絶えない毎日で、こんな日々を大切に思うよ。レナリアも幸せだろう?」

「もちろん!私もベルもマリも、ジークと暮らせて幸せよ。ジークがこんなに良き夫や父になるなんて、あなたが護衛騎士の時には想像もしてなかったわ。それに、何だかんだ…皆、幸せになって良かったわ。」

(皆というのは、きっとあいつも…?)

ジークフリードの頭に、久々に一人の男が浮かんだ。

「お互いの両親も息災で、孫フィーバーだし。兄上とヴィヴィアン夫人も、子どもが三人で毎日大騒ぎみたいだな。あと、エステファン殿下はクリスティ嬢と新婚でアツアツだし。ルーセント殿下が婚約予定の女性を弄んだと聞かされた時は、肝を冷やしたが、クリスティ嬢と結ばれて良かったな。でも、レナリア…ルーセント殿下は、あれで良かったのか…?」

「あ…結局ロザリンド嬢が引き取った形で結婚されたし、別にいいんじゃない?」

「法で罰するほど悪いことはしてないけど、人道的には最低な行いだったしなぁ。引き取り手の無い二人を、ホルヘン皇帝が無理矢理くっ付けたみたいな感じだよな。でも、ロザリンド夫人はルーセント殿下に愛とか情はあったんだろうな。キャメロン公爵家は、子爵に降爵されて元公爵は僻地に蟄居だ。しかし、ロザリンド夫人が主となって事業を拡大中らしいよ。ルーセント殿下はヒモみたいに…」

「ふぅん…ま、いいんじゃない?ヒモでもイモでも、どうでもいいわ、お似合いの二人だし。それより、夕食は何にする?ベルとマリの好きな薄焼きパンを焼く?」

「ああ、チキンを焼いてロールサンドにしようか。」

レナリアは、ふむふむと聞いているようで、ルーセント殿下には関心がないのか、話題を変えた。
ジークフリードは、一度嫉妬して以来、レナリアの気持ちを疑うことは無かったが、あまりにも無関心になってしまったのだなと思った。

愛すればこその嫉妬。
苦しみ悲しんだ末、その愛が枯渇してしまえば無関心。
複雑な人の心は、壊れてしまう前に無関心という形で、心を守るのだろうか。
レナリアの一年は決して短い時間ではなかっただろう。

レナリアは、ルーセント殿下を愛していなかった訳ではない。
互いに思い遣り過ごした日々を無きものにする位、傷付いて涙した日もあった。
レナリアは壊れゆく心に気付いて、想いを手放したのだ。

そのタイミングで、レナリアの心に寄り添えたジークフリードは、自分は運が良かったのだと思っている。
ツンとすました淑女の仮面は脱ぎ捨てて、有りの儘のレナリアが自分の傍に居る。

この先何があっても、レナリアの心に他の誰かを入らせる隙がない位に、愛し続けていく自信がジークフリードにはある。
子ども達が大きくなり、いつか巣立って行っても、この気持ちは決して変わらないだろうと、目の前に広がる幸せな光景を見つめるジークフリードだった。

しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

王子様への置き手紙

あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。

処理中です...