【完結】 その身が焼き切れるほどの嫉妬をあなたにあげる

紬あおい

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48.レナリアの秘密

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私はジークフリードとの暮らしに、この上ない幸せを感じていた。
優しい夫、子ども達の素敵な父親、そして未だに恋人のように接してくる姿。
その姿、全てが愛おしくて幸せで、時折泣きそうになる。

私は気付いていた。
ジークフリードが、私とルーセント殿下が過ごした日々に、たまに嫉妬していることに。
ルーセント殿下の話の時は、いつもより饒舌なジークフリードに、私は敢えて興味のない態度を取る。
実際、今の暮らしが幸せ過ぎて、ルーセント殿下を思い出すこともない。

確かに幼少期は楽しかったが、ルーセント殿下がおかしくなってからは、私自身、嫉妬することがつらかった。
お節介な人や悪意のある人にルーセント殿下のことを聞かされるのも嫌だった。
ましてや、閨事を見てしまってからは理解出来ずに苦しんだ。

それでも、長い付き合いのルーセント殿下に執着して、気付けば自分が自分でなくなってしまっていたことに、恐怖すら覚えた。

どうして?
私の何がダメだったの?
何で?何で?何で?

真っ黒で汚い感情、溢れそうな涙。
時には叫び出したくなる衝動。
被り続ける淑女の仮面は、密やかに確実に心にひびを入れた。
もう、こんな思いはしたくない。

だから、ルーセント殿下に婚約解消を承諾させ、逃げる決意をした。
これを逃したら、きっと私は壊れてしまうと。
大事に育ててくれた両親には、申し訳ない気持ちはあったが、狂ってしまったり、自死するよりはマシだと思った。

そんな中、ジークフリードを連れて行くことは、何故か自分の中で迷うことない決定事項だった。
女一人では心細かったということもあるが、ジークフリードだけは特別な存在だったのだろう。

今思えば、その瞬間、私の中で人生最良の決断をしたと言える。
そして、それが間違っていなかったから、今の幸せが在る。

ジークフリードは私に何も強要しない。
閨以外は…それすら優しいけど…
どんな時も有りの儘の私を受け止め、傷付けない。
時には、自分を押し殺しても私を優先する。
そんな人だから、私はジークフリードが平民でも構わなかった。

ホルヘン陛下は、未だに鉱山と引き換えにしたと揶揄うが(もちろん冗談で)、お金より宝石より、何よりもお互いが大切なのだ。

ある日、ジークフリードに聞かれた。

「あのバカに対する処置に不満はないのか?」

ジークフリードは私がお願いすれば何でもするだろう。
公爵家の影を操らず、自ら剣を抜くことも躊躇わずに。

でも、直接ルーセント殿下への罰を与えたのは、ホルヘン陛下とセラフィ皇后陛下とエステファン殿下だ。
徹底的に私をガードし、ルーセント殿下から遠去けてくれたことには感謝しかない。

クロムウェルでの合同結婚式の翌日、エステファン殿下からつらい過去を聞いた時、私と同じ想いをしていたのだと心が痛んだ。
私はジークフリードを頼ったが、エステファン殿下は一人耐えたのだ。

「ルーセントを甘やかし過ぎた。これは父上と母上と兄である俺が、躾を怠ったせいだ。だからこの先は、皇家の庇護の無い場所でルーセントは暮らす。あとは本人次第だ。キャメロン公爵家は子爵に降爵したから、苦労は絶えないだろう。それで潰れるなら、ルーセントはそこまでの人間だ。ルーセントがレナリアやジークには手を出すことはないと約束するから、安心して幸せにおなり。レナリアは俺の妹のような存在だったよ。」

次期皇帝のエステファン殿下は、お強い心と思い遣りに満ち溢れた御仁だと、ジークフリードは笑った。

エステファン殿下の言う通り、ルーセント殿下はキャメロン子爵家に婿入りした。
未だに大した働きもせず、ロザリンド夫人に養われているようだが、頑張れとも思わない。

勝手に転がり堕ちて行け。
もう、あなたの顔さえ思い出せないわ。
忘却、それが私の復讐だから。

ねえ、ジーク。
そんな私を、あなたは知らなくていいの。
嫉妬なんてしなくていいの。
全てを包み込んでくれるあなたを愛してる。
私の心の中は、あなたと子ども達で幸せが溢れているの。
今、本当に幸せなの。
私の最愛、ジークフリード。

あなたには、いつまでも可愛くて愛しい女と思われたいから、どうか私の隠した部分には気付かないでね。
何でも話し合える私達だけど、これはたった一つ、あなたに隠している秘密。


【本編・完】





◇ ◇ ◇ ◇ ◇




これで本編完結となります。
たくさんの方々にお読みいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
正直、驚きビビりました。😱💦
あたたかく見守っていただき、ありがとうございました。

あと二話、外伝を掲載します。
お時間ございましたら、そちらもご覧くださいませ。😊
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