【完結・外伝更新】 「貴様との婚約は破棄する」から始まった私達

紬あおい

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2.面白がる人

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バルコニーを後にし、ずんずん歩き、後ろから声がして、ふと我に返る。

「いい加減に、この手を離してくれないか?」

「っ!?し、失礼致しました!」

恐る恐る振り返ると、先程の令息だった。
 
「いきなり手を掴まれて、他人の情事の目撃者となり、婚約破棄の証人になるなんてな。クククッ!」

楽しげに笑うその人は、ただの令息ではなく、よくよく見れば、この国の皇子殿下だった。

「ク、ク、クリストファー第三皇子殿下!?」

私は掴んでいた手を振り払い、土下座に近いカーテシーをする。

「おいおい、人の顔も見ずに証人に仕立てたのかい?全く、君は面白いな。」

「も、も、申し訳ありません!」

「まあ、いいよ、取り敢えず、顔を上げて?面白いものを見せてもらったから許すよ。確か、君は、ヴァーミリアン侯爵家のリーチェ嬢だったよね?」

「は、はい、そうでございます。」

「先程のテオナルド・チカプリオン伯爵令息は、ヴァーミリアン侯爵家に婿入りする予定だったのか?」

「はい、私は一人娘ですので…」

「では、また婚約者探しからなのだな。」

「はい…そういうことになりますが…しばらくは一人で居たいです。」

「それは、傷心ゆえの?チカプリオン伯爵令息を愛していたのか?」

「とんでもございません。結婚なんて家の為だけですわ。父が選んだ相手でしたから、婚約破棄となっても、精神的にはノー・ダメージです。でも、いくら政略結婚だからといって、最初から浮気されて、事実無根の噂を広められたり、馬鹿にされていたのは、流石に悔しかったのです。自分に魅力や信用がないのを突き付けられた気がして…」

「そんなことはないぞ?相手を指差して叫ぶ姿は勇敢で魅力的だった。クククッ。」

クリストファー殿下は、美しい顔をくしゃくしゃにして笑った。

「こんなに笑ったのは、生まれて初めてだ。リーチェ嬢、今夜はもう帰るのか?馬車で送ろう。」

「い、いえ、帰りますが、流石に殿下に送っていただくのは不敬ですから…」

「後ろから手を掴み、人の情事を見せる方が不敬じゃないのか?」

「っ!?そ、それは…」

「ほら、行こう。」

今度は、逆に私が手を掴まれて、引き摺られて行く。
この状況を創り出してしまったのは、完全に私だ。
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