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20.密談 Side クリストファー
しおりを挟む「リーチェ達を待たせているから、手短かに。」
応接間に残った俺は、ポペス侯爵と向き合う。
「殿下、密かに送っていただいた報告書のことですが、ジェニファを操っていたのが、ソフィーだと…」
「そうだ、ポペス侯爵夫人だ。夫人は、幼い頃からヴァーミリアン侯爵に懸想して、執着していたようだ。だが、ヴァーミリアン侯爵はあんな性格だ。そのことに全く気付かず、エリザベス夫人と大恋愛の末に結婚し、リーチェを授かった。だから、自分の娘を使ってでも、ヴァーミリアン侯爵夫妻を、いや夫人を傷付けたかったのだろう。」
「そんな………ジェニファは…実の子なのに…」
愕然とするポペス侯爵には、厳しい現実だろう。
しかし、罪は罪だ。
「ポペス侯爵が今回の件について、どれだけ尽力したかは見て取れる。しかし、あの母親が傍に居る限り、令嬢は更生出来ない。一人娘であることや、侯爵家として考えるなら、今後の選択は厳しいものとなるだろう。本来なら、令嬢も夫人も処罰の対象だ。しかし、リーチェ嬢はそこまで望んでいない。」
「リーチェ嬢は、妻のことは…?」
「知らせていない。ヴァーミリアン侯爵夫妻にも、だ。私としては、皇位継承はないとしても、ポペス侯爵家は帝国を支える臣下として、大切な人材と家柄だと思っている。だからこそ、ポペス侯爵の判断を仰ぎたい。出来るか?」
「はい。ジェニファは医師の診察を受けさせ、病院に入れるか、トラジック修道院に送るかのどちらかに致します。そして、妻とは離縁し、ジェニファに先んじて、ポペス侯爵家の名の下に、トラジック修道院へ送り込みます。私に賜った殿下のご厚情に添えるのは、もう、これしかないと思っております。」
ポペス侯爵の表情は固いが、決心もそれ以上に固いと俺は感じた。
「このことは、今後も私とポペス侯爵だけの話だ。上手くやるように。くれぐれも、夫人は守備よくトラジックへ送り込むように。」
「承知致しました。気晴らしに旅行でもと言い包め、必ずやトラジックに送ります。殿下、数々のご配慮、感謝致します。」
そう、今回の騒動は、裏で頭の弱い娘を操っていた、ソフィー・ポペス侯爵夫人の謀だったのだ。
一人の男に執着し、憎む女と同じ爵位になる為に愛のない結婚をし、娘まで利用する。
強かに見えて、穴だらけの策略。
前の俺ならば、知らぬ振りをしただろう。
しかし、リーチェやヴァーミリアン侯爵夫妻に出会ってしまった。
守りたいものに出会ってしまったのだ。
そして、妻や娘を失うポペス侯爵にも感情移入する始末だ。
俺がこんなふうになるとは、自分でも不思議だ。
他人どころか、自分のことさえ無頓着だったのに。
それもこれも、全てリーチェに出会ったからだ。
「悪くないな…」
「殿下、どうされました?」
一人呟くと、隣に座っているリーチェが顔を覗き込む。
「ん?侯爵家の馬車の乗り心地だ。悪くないな、と。」
「そりゃあ、そうですよ!お父様の思い入れたっぷりの馬車ですから。乗り心地、良いでしょう?」
「ああ、最高だ。」
ふふふと笑うリーチェ。
この笑顔を俺は守り続ける。
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