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39.結婚式の朝
しおりを挟む私は、何事もなく平和な日々を過ごし、結婚式の当日を迎えた。
ヴァーミリアン侯爵家には、朝からデザイナーのアリッサがアシスタントを引き連れて訪れ、賑わっている。
クリストファーの母シルヴィアのウェディングドレスは、誂えたかのように私のサイズにぴったりだった。
母のエリザベスは、その姿に驚く。
「まあ、リーチェの為のドレスみたいね。とても素敵!」
「お母様ったら。シルヴィア様とサイズが同じなんて、奇跡みたいだわ。私みたいに小さいお方だったのね。」
「ビオレータ皇后陛下からのネックレスは、披露パーティで着けるんでしょう?」
「はい、お手紙もいただいて、やっぱりシルヴィア様のウェディングドレスにアクセサリーは必要ないからって。確かに、首元からの刺繍だから、ネックレスを着けてしまうのは勿体ないわよね。」
「きっとお茶会が楽しくて、ついそう言ってしまわれたのね。でも、このレッドダイヤモンドのネックレスも素敵。披露パーティの前もアリッサが支度を手伝ってくれるし、お祝いにドレスを準備してくれたわ。アリッサ、さっき嬉し泣きしていたわ。」
「あら、アリッサったら!本当に昔から可愛がってくれて。親戚の伯母様みたいだわ。クリストファーも、アリッサが向かわせたアシスタントが素敵に仕上げてくれるわね。ふふ。」
結婚式の前夜は、ゆっくり両親と過ごして欲しいという配慮で、クリストファーは皇宮に戻っていた。
クリストファーも、関係が修復した陛下達と最後の夜を過ごした筈だ。
「何だかクリストファー様の居ない朝は静かね。」
「ほんと!いつの間にか我が家に馴染んでいたのね。」
母としみじみ話していると、父のディーゼルがやって来た。
「リーチェ、見事に化けたな!!」
相変わらず、ふざけたことを言っているのに、顔は涙でぐちゃぐちゃだ。
「やだっ、あなた、その顔!あははは!!」
母は笑うが、私は胸にぐっと来るものがあり、いつものように笑い飛ばせない。
「お父様…」
「な、なんだ、リーチェ…」
「産まれた瞬間から今日まで、ずっと大切に育てて、愛してくださって、ありがとうございます。
お父様からの『阿呆』に愛情がたくさん込められていたこと、いつだって私の最大の味方で居てくれたこと、ずっと感謝していました。
そして、うっかり連れて来てしまったクリストファー様を、ヴァーミリアン侯爵家の一員として迎え入れてくださることも、ありがとうございます。」
「な、何を!親なら当たり前ではないか!!
愛しい妻が命懸けで子を産んでくれて、その子が可愛いのは当然だ。
私によく似た性格で、恥ずかしいから『阿呆』と言ってしまったが、リーチェは私の宝なんだ。
私は、リーチェとエリザベスの為ならば、いつだって、どんなことだってするよ。
そして、リーチェの伴侶がクリストファーで良かったと思っているんだ。
普通の男なら、十分の一も気付かないだろうに、クリストファーは最初からリーチェの良さに気付いていたしな。
頭も良いし、時に大胆な策を平気でやって退けるクリストファーなら、きっとリーチェは安心して人生を託せるだろう。
それに、あの恥ずかしいまでの溺愛っぷり!
帝国の皇子を虜にしたリーチェを誇りに思うぞ。
一人っ子で寂しい想いをさせたかもしれないが、今となっては頼りになる婿と、結婚しても傍に居てもらえるから、私は嬉しいよ。」
父は、涙目で大演説をかましてくれた。
「そうね、嫁に出すとなると寂しいけど、クリストファーがお婿さんに来てくれて、何れ孫が産まれて。
我が家のこれからは足し算ばかりね!
はい、あなた、お鼻ちーんして!!」
母は、父の背中を撫で、鼻を拭きながら微笑んだ。
「さ、さあ、クリストファーが待っているぞ。そろそろ出発しよう。」
父や母と馬車に乗り込み、私は大聖堂に向かった。
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