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50.再び、手を掴んで
しおりを挟むクリストファーが住んでいた離宮を訪れて、早ひと月。
私とクリストファーは、まだここに滞在していた。
「クリストファー様、そろそろヴァーミリアン侯爵家に戻らなくていいのでしょうか…?」
「戻りたい?」
「お父様やお母様が心配しているかと…」
「うーん…父上は落ち着かないだろうなぁ…母上は、たぶん大丈夫!」
「でも、こんな籠りきりの生活もそろそろ…」
覚えたてのクリストファーは、疲れ知らずで、昼も夜も野獣のように求めてくる。
月のものの時は、唇が腫れても口付けて、私の手を握り、自分のものを扱き達する。
気遣いの方向性が間違っている。
げっそりやつれているのは私だけで、クリストファーのお顔は、つやつやつるぴかりんだ。
「リーチェがそう言うなら、今日はちょっと皇宮の庭園でも散歩するか?温室は季節問わず皇后陛下の好きな花が咲いているぞ。」
「いいですね!外の空気も吸いたいし。」
私が笑い掛けると、クリストファーはにやりと笑って言った。
「もう一回した後に、ね?」
「ひぃっっっ!」
そのまま組み敷かれ、結局庭園に出たのは昼過ぎだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
疲れただろうと、庭園の散歩はクリストファーに横抱きにされたままだ。
確かに外の空気が吸いたいとは言ったが、本当に吸いに来ただけになっていた。
「クリストファー様、大丈夫だから下ろして?」
「駄目だ、さっきふら付いただろう?」
如何にも妻を気遣う優しい夫の体で言うが、クリストファーの絶倫の所為である。
「そうなんですけど…でもぉ………あっ!コンラート殿下とナディエ様だっ!!」
その時、私は見つけた。
愛おしげにナディエを見つめるコンラート殿下を。
「四阿の方に行くみたいだな。」
「ねぇ、後をつけてみません?」
呟くクリストファーと、いたずら心が湧いてくる私。
「暇潰しに行ってみようか。」
「コンラート殿下がデレデレするところ、見たいですねー!」
クリストファーは、私を抱いたまま、一定の距離を保ち、そろりそろりとコンラート殿下とナディエの後を歩いた。
「やっぱり、あの二人は上手くいくと思ってました!」
「兄上が恋をするとはねぇ…女好きなのは知ってたけど。」
「えっ?女好き!?捻くれ皇子が?」
「女好きが、必ずしも女の扱いに慣れているとは限らないぞ?」
「なるほど…って、変な声しません!?」
四阿を見ると、後ろからナディエに抱き付いたコンラート殿下が腰を振っている。
「リーチェ、君はまた俺に、人の情事を見せたのか…?何のデジャヴだよ…しかも、兄上…勘弁してくれ…」
即座に私は、クリストファーの腕から飛び降りて、四阿と逆の方向に走り出した。
もちろん、あの時のようにクリストファーの手を掴んで。
女好きのコンラート殿下が閨教育の実地をおかわりしたと、皇太子になったカリスト殿下から聞いたのは、一年後、コンラート殿下とナディエの結婚式の日だった。
その時、クリストファーが、自分は閨教育自体を受けていないと必死に言ったが、端から疑ってもいなかったので、放置プレイとしたのは、ちょっとしたいたずらだ。
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