【完結・外伝更新】 「貴様との婚約は破棄する」から始まった私達

紬あおい

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53.バルテルンの牧場 ①

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結婚して三ヶ月。
父とすっかり仲良しになったクリストファーは、ヴァーミリアン侯爵家が手掛ける事業にも意欲的に参加している。

「リーチェ、父上と三人でバルテルンの牧場に行かないか?慰謝料として差し出させた、あの牧場だ。」

「いいですね!お天気も良いし。良い馬と羊が居るんでしたよね?」

「そうだ。リーチェは動物は好きか?」

「だぁい好きです!羊とか、可愛いじゃないですか。」

ヴァーミリアン侯爵家の敷地が広いとはいえ、流石に皇都で馬や羊は飼えないが、実は私は動物好きである。
なので、牧場に行くと聞いた瞬間から、わくわくが止まらない。

「俺よりも…好き…?」

「はっ!?」

「だから、俺よりも動物の方が好きなのか!?それは駄目だ、リーチェ!俺が一番でないと!!」

隣に居た父は、遠くを見ている。

「えっと…私の一番大切な旦那様と、動物達は比較出来ないわ…」

「阿保なこと言ってないで、さっさと行くぞ!」

父に引き摺られるクリストファー。
私も後ろから着いて行く。

そして、馬車に揺られること一時間。
思っていたよりも近い牧場。
目の前には、たくさんの羊と二十頭位の馬。

「うわぁ、羊いっぱい!クリストファー様、見て見てーーー、可愛い!!」
 
「そんなリーチェが可愛いぞ?」

「当たり前だ、うちのリーチェが一番可愛いのだ。」

父もクリストファーも頓珍漢で話にならない。
諦めて、私は羊の群れへと走り出した。

「「おい、リーチェ!!」」

羊と言えば、絵本でもよく見るメリノ種だと思っていたら、ここには耳と顔が黒い変わった種類の羊が居た。

「おとーさまー、この羊は、なぁにぃーー?」

私が叫ぶと、牧場を管理しているのか、男性が走って来た。

「お嬢様、初めまして。私は羊を管理しているバウザーです。
これは、ヴァレー・ブラックノーズ・シープという種類なんです。
外国人がつがいでペットとして飼っていたようですが、旅行が終わって帰る時に捨てていったんです。
可哀想だから引き取って、ここで育てていたら増えてしまいました。」

「勝手に連れて来て、捨てていったって…それは可哀想に…許せないわっ!」

「でも、ここの土地や空気が気に入ったのか、直ぐに馴染んでくれました。この仔達は、雑草もよく食べてくれるし、年二回毛刈りをして質の良い羊毛を提供してくれるし、お乳も良く出るし、凄く良い仔達なんですよ!」

「何て良い仔達なの!それに、バウザーのお世話が行き届いているからね。この仔達を大切に育ててくれて、ありがとう。」

「そ、そんな!お嬢様にお礼を言われるようなことはしていません。
好きなことが仕事になっているだけです。
それに、前のご主人様よりも、ヴァーミリアン侯爵様はとても良くしてくださいます。
お給金は十倍に上げていただいて、すっかり暮らしは楽になりました。
お礼を言わなければならないのは、私を始め、ここで働かせていただいている者達の方です。」

「あら、お父様、良い仕事しているのね。」

しかし、父とクリストファーは、私に着いて来たかと思いきや、いつの間にか羊まみれになっていた。

「「リーチェ、リーチェ!助けてくれー!!」」

羊は楽しそうに父とクリストファーの周りを囲み、中にはぺろぺろと舐めて、懐いている仔も居る。
動物好きの私よりも好かれている二人に、ちょっとイラっとしたので、私はしばらく二人をそのままにすることにした。
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