【完結・外伝更新】 「貴様との婚約は破棄する」から始まった私達

紬あおい

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54.バルテルンの牧場 ②

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父のディーゼルとクリストファーが羊にまみれている間、私はバウザーと羊毛やミルクお乳について語り合っていた。

ミルクお乳で作るチーズが絶品なんですよ、お嬢様!クリーミーですが、ちょっと表面を火で炙っていただくと、パンも食べ過ぎてしまう位に!!」

「あら!それは美味しそうね。今日、いただけるかしら?」

「もちろんです。今、妻に準備させていますので、是非昼食をお召し上がりください!」

「ありがとう!私のことはお嬢様じゃなくて、リーチェと呼んで?これでも、あの羊まみれになっている人の妻だから。」

「はははっ、大旦那様も若旦那様も、すっかり羊に懐かれましたね。あの仔達は、基本人見知りはしないのですが、群れて取り囲むのも珍しいですよ?」

「あの二人、似てますからねぇ、中身が…」

相変わらず、ひぃひぃ言いながら、羊を追い払う訳でもなく、ただ羊と同化していく父と夫を、私は更に放置する。

「あっ、バウザー!羊の毛はどうしてるの?」

「主に掛け布団ですね。保温性、吸湿性に優れていて、冬は暖かく夏は涼しいという優れ物です。」

「お布団かぁ…クッションに羊毛を詰めたら、馬車に乗る時、楽ちんだし、冬は暖かく夏は涼しいなら尚良いわね!昔読んだ本では、使い物にならない残った羊毛は、肥料になると書いてあったわ。無駄なく使えるから、商売になるか、お父様にもお知恵を拝借しましょう。」

「なるほど!今は残った羊毛は、厩の断熱材に使っているのですが、肥料は農作物の担当が喜びますね。」

バウザーは、嬉しそうに笑う。

「さて、そろそろお父様とクリストファー様を救出しますか!」

「口笛を吹けば、牧羊犬のパルルンがやって来ます!」

ぴゅーっとバウザーが口笛を吹くと、羊達とは真逆の配色の犬が走って来た。
耳と顔が白い、黒い犬。
なかなかの眺めで、私も楽しくなる。

「リーチェ、ひどいー、何で助けてくれなかったんだよーーー!」

よれよれなクリストファーと、疲れ切った顔の父。

「楽しそうだったじゃない。動物に好かれる人に悪い人は居ないもの。やっぱり私の旦那様と父は素敵ね!」

「「そうだろ?」」

「あっ、妻が食事の準備が出来たと合図しています。参りましょう。(ククっ…)」

あまりの単純さを目の当たりにして、バウザーはぴくぴくと笑いを堪えているが、そろそろ昼食の準備が整ったようだ。

「お腹空きましたね。さあ、お父様、クリストファー様、行きましょう!」

二人の間に割り込み、腕を絡ませると、すっかりご機嫌さんだ。

そして、バウザーの家に着くと、チーズの良い匂いがする。

「お父様、クリストファー様、羊達、良い商売になりそうよ?」

「「羊肉を食べるのか?」」

「違うわよっ!毛とミルクお乳!!あんな可愛い仔達、食べられないわ。」

散々羊達と戯れて、食肉にする訳ないだろうと私は呆れたが、そこから父とクリストファーは、この羊達で一大事業を成し遂げるのであった。
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