【完結】 元婚約者の浮気相手の元婚約者が溺愛してくるってどういうことですか!?

紬あおい

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3.奇想天外な人

婚約破棄から二日、穏やかな日々を過ごしていたら、突然イザーク・スヴェンセン公爵から手紙が届いた。
全く心当たりがなく、恐る恐る開封したら『メイナージュ令嬢を妻に迎えたい』と書いてあった。

父のカールが腰を抜かしそうになっており、母のウィリスはニヤッとしている。
母は単なるイケメン好きなだけだ。

「何かのいたずらかしら…」

流石に私も疑心暗鬼だ。
何故、ジェニアの元婚約者に求婚されなければならないのだ。
遠目で見たことはあっても、実際に話したことがあったかも記憶にない。
私などが目に留まる筈もなく、高嶺の花とも言える位に、イザークは人気があるのだ。

取り敢えず、宛先間違いで返送しておいた。
揶揄っているなら、いくら普段ふざけてばかりの私でも気分が悪い。
万が一、本気なら、それはそれで頭がおかしいとしか思えない。

数日後、気を取り直して、また結婚相手でも探そうと思っていたら、庭園を散歩している時にイザークが訪れた。
しかも、あの日、温室に咲き誇っていたのと同じような白い薔薇の花束を持参して。
うわ、ヤバい奴が来た!としか思えなかった。

「あ、あのっ、スヴェンセン公爵様…ですよね…?」

「そうです。イザーク・スヴェンセンです。お手紙を送ったのですが、手違いで戻って来てしまったので、直接伺いました。今、お時間いただけますか?」

「っ!?」

庭園に二人、騎士のカルロスさえ居ない中、逃げられない雰囲気を察して、私は四阿に案内した。
白薔薇公爵と呼んでも相応しい位に、イザークは美しい人だった。

「メイナージュ・ローザンヌでございます。急なことでお茶も用意出来ず、申し訳ありません。」

「こちらこそ、急にすまない。是非、話をさせてもらいたくてな。俺のことは気楽にイザークと呼んでくれ。俺もメイナージュと呼ばせて欲しい。」

「初見に近いのに、お名前を呼ぶのは…」

「いや、呼んでくれ。距離を縮めに来たんだ。」

「はい、イザーク様。では、メイナージュとお呼びください。」

イザークは、人懐っこい笑顔で花束を差し出した。
ふわっと香る薔薇に、私も笑顔で受け取った。

「白薔薇の花言葉は、純粋・純潔・深い尊敬・相思相愛・私はあなたに相応しいというそうだ。そして、枯れてしまった白薔薇には、生涯を誓うという意味もある。花屋の受け売りだが、今の俺の気持ちだ。」

突然のガチな告白に、私はお茶がなくて良かったと思った。
絶対噴射する自信がある。
しかしイザークは、揶揄うでもなく、真剣に私の目を見て話している。
これはいい加減な返答は出来ないと感じた。

「イザーク様、真摯なお気持ちは嬉しいのですが…何故私なのでしょうか。このタイミングで私に求婚て、良からぬ噂になるだけでしょう。」

「確かに、それぞれ婚約がなくなったタイミングですが、今でなければ、俺はメイナージュの存在に気付けなかったと思う。メイナージュは俺の運命の人なんだ。」

御伽話のような運命の人という言葉に、私は急に胡散臭さを感じた。
そして、それは顔に出たのだろう。
イザークが突然手を握ってきた。

「何をなさるのですか!?ほぼ初めてお会いするに等しいのに、手を握るなんて!」

「すまない!メイナージュ、本気なんだ!!どうか、俺と結婚してください!」

そこに、戻りが遅いことを心配したカルロスがやって来た。
今にも剣を抜きそうだったので、私はカルロスを目で制した。

「イザーク様、今日はお気持ちを受け取りました。でも、お返事はもう少しイザーク様を知ってからでも宜しいでしょうか?」

「もちろんだ!こんな不躾な求婚に理解を示してくれて、ありがとう。近々お誘いするので、会って欲しい。」

「承知しました。」

イザークは満面の笑みで帰って行った。
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