【完結】 心だけが手に入らない 〜想い人がいるあなたは、いつか私を見てくれますか?〜

紬あおい

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10.新婚旅行 ⑦

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やっと新婚旅行らしくなってきたフィーロと私。
浜辺で戯れて、温泉に浸かって、ほぼそんな毎日。
気付けば、今日で新婚旅行も終わりだ。
最後だからと、海岸に夕陽を見に来ている。

「あっという間でしたね。いろいろあった筈なのに、楽しい思い出ばかりになりました。」

「そう思ってもらえたら嬉しいよ。」

いろんな感情が入り混じり、大真面目に愛とはなんぞや?と考えた日もあった。
それでも、この人と一緒にいたいという気持ちが残った。

「フィーロは、何が一番印象に残ってますか?」

「んー、そうだな…レイが大笑いしたとこかな。普段も笑うけど、あんな笑顔は初めて見た。」

「泣かすのも笑わせるのも、全部フィーロなんですけど?」

沈む夕陽を見ながら、揶揄ってみる。
フィーロは真っ直ぐ夕陽を見ながら黙っている。
私も完全に夕陽が沈むまで見ていた。

辺りが暗くなると、今度は月とたくさんの星達の出番だ。
余計な光が邪魔しない分、星空が綺麗だ。
寝転んで、星を繋げて夜空に絵を描く。
あれはお家、これは猫。
自分の発想の貧弱さに、ふふふっと声が出てしまう。

「どうした?」

「何でもないわ。ただ、こういうのも楽しいなと。」

「また来ような。」

「うん。絶対よ?」

砂だらけの私を抱き上げて、フィーロは別荘に戻った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


砂だらけからの温泉。
すっかり定番だ。
温めの温泉でじっくり汗をかくまで浸かるので、すっかりお肌がつるつるだ。

「この温泉に入れなくなることだけが残念ですわ。」

「湯浴み中のあれも、なかなか良いからな。」

「ちょっと…フィーロ、そんな人でしたっけ?」

「レイ限定ならいいだろ?」

「それはそうですけど…今度他の女性に気持ちが向いたら、私も同じことしますからね?」

バシャッと湯船から一人で出る。
実はのんびりし過ぎてのぼせただけなのだが。
ささっと髪と体を拭いて、お水を飲むのも定番だ。

フィーロは勘違いしたようで、慌てて出て来た。

「レイ、それはダメだよ?他の男とか、ダメダメ!」

「フィーロ、それはあなたが浮気する前提のお話かしら?あなたがしなきゃ、そんなこと起こらないわ。」

「あ…いや、俺は浮気なんぞしない!絶対に!!」

あ、この人、根は真面目な人だった。
揶揄い過ぎたかな。
飴と鞭なら、今度は飴だ。

「冗談ですよ?抱っこしてください。」

両手を広げて、にっこり笑うと、すぐ近寄って来る。
抱き上げて頬擦りして、ベッドまで運んでくれる。

「レイ、俺、この旅でよく分かったから。君といれば幸せだって。毎日君を大好きだって思ってる。この先も、ずっと君だけだ。愛してるよ。」

私は返事の代わりに口付けで応えた。
新婚旅行最後の夜は、朝まで抱き合って一睡も出来なかった。
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