【完結】 生まれ変わってもあなたと

紬あおい

文字の大きさ
1 / 16

1.夫の瞳は口ほどにものを言う

しおりを挟む

私はアンリーヌ・グレイル、18歳。
グレイル公爵家の四女で、成人を機に父のアーサーと継母のクレアに多額の持参金とともに政略結婚をさせられたばかりだ。

実母は幼い頃に亡くなり、継母はその後、父と結婚した。
上の姉達も、私と同様にあちこちに嫁がされ、今では疎遠になっている。
公爵家は、継母が産んだまだ8歳の長男が、いずれ後を継ぐことになっている。
娘を4人も持参金付きで嫁がせても、びくともしない資産が我が家にはあるらしい。

夫となった人は、ジェスター・スタッド公爵で、22歳。
先代の公爵夫妻を不治の病で亡くし、同じ病の寝たきりの妹が居る。
妹とは便宜的な名称で、血の繋がらない養子だそうだ。
亡くなった公爵夫妻が孤児院から引き取って育てていたらしい。

筆頭公爵家の我が家、特に継母は、事を荒立てずに、厄介者である血の繋がらない末娘を追い出したい。
かたやスタッド公爵家は、私の父が事業で利用したいわずかな土地を手放せば、お飾りの妻と公爵家同士の表面上の繋がりが手に入る。
妻を言いくるめて、持参金を妹の治療費に使うことを考えているかは、まだ分からない。

しかし、私としては、衣食住を確保出来れば、あとはどうでも良かった。
その位、公爵家では居場所が無かったからだ。
継母に身体的な虐待はされなかったが、近い将来、追い出す者として扱われていた。
ひと通りの教育や公爵家の執務を学べたのは、嫁ぎ先から離縁されない為の必要最小限の手段だ。
あたたかい気遣いなどは受けたことがない。

不安な気持ちでスタッド公爵家に嫁いできたが、思っていたよりも環境は良かった。
隅々まで掃除が行き届いている邸宅、充分な人数の使用人達に、たくさんの本に囲まれた図書室。
これだけでも充分だが、薬草がいっぱいの庭もある。

ひとつだけ残念なのは、愛する夫と幸せな家庭を築きたいという夢は叶いそうにない。

夫のジェスターは、血の繋がらない妹のアンヌマリーを溺愛している。
それが肉親の情なのか、恋愛の愛なのかは、アンヌマリーを見つめる瞳で分かる気がする。
黒髪に金色の瞳のジェスターは、アンヌマリーを見つめる時だけ、瞳の金色が明るく輝く。
反対に、私と目を合わせる時は、鈍色がかった金色だ。
愛想笑いは上手くても、瞳の色は隠せない。

それでも、夫は不快感を感じさせない美丈夫だ。
結婚式で誓いの口付けがギリギリ唇に触れなくても、私なりに夫を大切にしていこうと思っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴方の✕✕、やめます

戒月冷音
恋愛
私は貴方の傍に居る為、沢山努力した。 貴方が家に帰ってこなくても、私は帰ってきた時の為、色々準備した。 ・・・・・・・・ しかし、ある事をきっかけに全てが必要なくなった。 それなら私は…

婚約破棄される令嬢は最後に情けを求め

かべうち右近
恋愛
「婚約を解消しよう」 いつも通りのお茶会で、婚約者のディルク・マイスナーに婚約破棄を申し出られたユーディット。 彼に嫌われていることがわかっていたから、仕方ないと受け入れながらも、ユーディットは最後のお願いをディルクにする。 「私を、抱いてください」 だめでもともとのその申し出を、何とディルクは受け入れてくれて……。 婚約破棄から始まるハピエンの短編です。 この小説はムーンライトノベルズ、アルファポリス同時投稿です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

再構築って簡単に出来るもんですか

turarin
恋愛
子爵令嬢のキャリーは恋をした。伯爵次男のアーチャーに。 自分はモブだとずっと思っていた。モブって何?って思いながら。 茶色い髪の茶色い瞳、中肉中背。胸は少し大きかったけど、キラキラする令嬢令息の仲間には入れなかった。だから勉強は頑張った。両親の期待に応えて、わずかな領地でもしっかり治めて、それなりの婿を迎えて暮らそうと思っていた。 ところが、会ってしまった。アーチャーに。あっという間に好きになった。 そして奇跡的にアーチャーも。 結婚するまで9年かかった。でも幸せだった。子供にも恵まれた。 だけど、ある日知ってしまった。 アーチャーに恋人がいることを。 離婚はできなかった。子供のためにも、名誉の為にも。それどころではなかったから。 時が経ち、今、目の前の白髪交じりの彼は私に愛を囁く。それは確かに真実かもしれない。 でも私は忘れられない、許せない、あの痛みを、苦しみを。 このまま一緒にいられますか?

令嬢が眠る時

五蕾 明日花
恋愛
愛する婚約者と仲睦まじい元平民の男爵令嬢に嫉妬し、嫌がらせを続けた挙句に処刑された我儘で傲慢な公爵令嬢コーネリア。悪魔の力を借りて人生を繰り返していくうちに性格や言動を改め、〝完璧な令嬢〟と評されるようになっていく。しかしそうなっても婚約者は、男爵令嬢を選んでしまう運命は変えられない。濡れ衣を着せられ、結局はありもしない罪で処刑されてしまう。心が折れてしまいせめて処刑されてしまう運命だけでも変えたいコーネリアに、悪魔は〝仮死状態になり、死んだと誤解させた後でこっそり逃げ出してしまえばいい〟と提案する。 仮死状態(意識のみ有り)での性描写有り、嘔吐描写も一瞬 完結済。6話+エピローグ。♡マーク付きの話に性描写有り。 Nolaノベルにも同名義で投稿。

離縁希望の側室と王の寵愛

イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。 国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。 いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──? ※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。 シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み

処理中です...