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12.誕生日
しおりを挟むここに嫁いで来て、初めて迎える私の誕生日。
実家ですら祝ってもらえなかったので、まさかジェスターに祝ってもらえるなんて考えてもなかった。
「アンリーヌ、19歳の誕生日おめでとう。2人きりで祝いたくて。」
大きな手にケーキを持ってはにかんだ顔は、真っ赤になっている。
ジェスターのこんな顔は初めてだ。
「あ、ありがとうございます!」
「それと、これも…」
ケーキをテーブルに置き、一瞬足元に目線を移し、照れながら差し出したのは薔薇の花束と小さな箱だった。
「君はあまり装飾品を身に着けないけど、この指輪は似合うと思ったんだ。あと、薔薇は歳の数だと花言葉が良くない気がして、花言葉を優先して本数を決めた。33本で『生まれ変わってもあなたを愛します』というそうだ。何か素敵だなと思って。」
「生まれ変わっても…そうですね。素敵です。前世も今世も…来世も…」
美しいカットのダイヤモンドの指輪をはめてもらい、花束を抱えたまま、私は涙が溢れてしまった。
「ちゃんと伝えていなかったけど、君を愛してる。ずっと傍に居て欲しい。」
私は泣き笑いで、うんうんと頷いた。
「さあ、ケーキを食べよう。ご馳走もあるぞ?」
やっと泣き止んだ私の手を引き、椅子に座らせる。
私の好きな物ばかりが並んだテーブルを見て、意外と私を普段から見ていてくれたことに感動する。
お腹がはち切れそうな位、2人で食べ尽くした。
その後、ワインをいただきながら幸せいっぱいの気持ちだったが、私はジェスターにどうしても聞きたいことがあった。
「ジェスター様の想い人はアンヌマリー様かと思っていました…」
「そうだろうと思っていたよ。でも、アンヌマリーは家族で妹だ。アンリーヌに対する想いとは違う。」
「でも、閨で『アン』と…」
ジェスターは、はっとして頭を抱えた。
「まさか君は、俺がアンヌマリーの代わりに抱いていると思っていたのか?」
「……………」
「君も『アン』だろう?というか、すまない。意識してなかった…傷付けていたならば許してくれ。」
「もう大丈夫です。よく分かりましたから。」
「これからは、君のことを『アンリ』と呼んでいいか。」
「はい。私も『ジェス』と呼んでいいですか?」
「もちろんだ!」
ジェスターとの誤解が解けて、本当に嬉しかった。
でも、ジェスターの金色の瞳は、相変わらず鈍色がかったままだ。
「ジェスの瞳の色が、人によって違って見えるのは何故?」
「ん?どう違うんだ??」
「アンヌマリー様を見る時は、明るく光る金色で、私を見る時は鈍色がかった金色なの…私もキラキラした目で見て欲しかったな…」
ジェスターは、急に笑い出した。
「それは、アンリを女として見ているからだ。昔、母上から同じような話を聞いたことがある。父上が他の女性と仲良くしている時はキラキラした金色だったと。父上からすると、母上が好きだったから、いつも欲情していたらしい。その時の目の色が、まさに鈍色がかった金色だったそうだよ。俺の目は父上譲りなんだな。」
欲情だなんて、聞いていて恥ずかしくなってしまった。
だって、私を見る時は1日中鈍色がかっているのだから。
「真っ赤な顔をしてるぞ?俺が1日中アンリを意識してることに気付かれたか…」
「まさか最初から…?」
「最初から、たぶん…そんな目で見ていたと思う。美しい人だと思った。」
「ちょっ、やめてください…そんなふうには見えてませんでした…」
「そりゃあそうだよ。必死に隠してたんだから。でも、夜同じベッドに入ると、抑えきれない日ばかりで大変だった。これからは遠慮なく抱くぞ?」
「あれで遠慮なさってた…の…?」
ジェスターは、笑いながら私をベッドまで運んだ。
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