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10.自覚
翌日、私とヴェルハルトと一緒に兄のクリフォードを訪ねて、これからも顔を合わせるであろうセンティ公爵家の人達の対応を相談した。
ヴェルハルトの承諾を得て、過去の事情を話すと、クリフォードはあからさまに顔を顰めた。
「全く…ヴェルハルトは人が良過ぎる!あのマリアとかいう妹の結婚式の態度も含めて、手を打たないとな。」
「マリア嬢が何か…?」
そこで、ヴェルハルトが不思議そうな顔をした。
そう言えば、結婚式の日のマリアのことを話し忘れていた。
「あっ、お伝えしていなくて、ごめんなさい!控え室に乗り込んできて、どうせ白い結婚なんだろうから、数年後にヴェルハルト様を返せって言われたの。クレア様にそっくりだから、マリア様でもヴェルハルトはいい筈だって…お式の直前だったし、流石の私でも苛々したので、直ぐに追い返したけど。」
「あの妹、ちょっとヤバい奴かもな。ヴェルハルト、気を付けないと。フィオリーナに何かあったら大変だ。」
ヴェルハルトがぷるぷると震えている。
「マリア嬢など顔も見たくない。フィオリーナに手出しはさせない。何が白い結婚だ。昨夜もあんなに激し、、、」
「ヴェルハルトさまっ!ちょっ、今、そこじゃないです!!昨夜のお話はやめてっ!」
クリフォードが堪らず笑い出す。
「何だ、お前達、ちゃんと愛し合ってたのか!いや、兄としてほっとしたよ。実は白い結婚かもと…疑って悪かった!」
ヴェルハルトがきょとんとして、赤くなった。
閨事を口走ったことに、気付いていなかったのだろう。
そして、胸に手を当てて、じっとしている。
「ヴェルハルト様、どうしました?」
「フィオリーナ…愛してたんだな、俺は君を。今、ドキドキが止まらないんだ。こんな感情は初めてだ…」
「おいおい、ヴェルハルト。自分の気持ちも分からないまま、俺の妹を傷物にしたのか?くくっ。」
「いや、傷物などにはしていない!フィオリーナは大切な人で、妻で、家族だ。ただ、俺は愛の定義を知らなかったようだ。この気持ちは…大切だと思ったり、傍にいると安心したり、嬉しいと思うのは…愛なんだな…」
クリフォードが揶揄うと、ヴェルハルトが必死に答える。
言葉にして、初めて気付く感情もある。
「お兄様、私の夫って可愛いでしょう?この人で良かったって思うの。だから、ヴェルハルト様がまた傷付かないように、ちょっと周りを整理する案を練りましょう。」
「もちろんだ。お前とヴェルハルトは、俺が守ってやるさ。リンデルン侯爵家の財力と俺のコネクションを舐めるなよ?」
クリフォードはニヤリと笑った。
そうだった、クリフォードは我が家一番の遣手だったのだ。
道理に反することには、迷いなく鉄槌を下す人。
それがクリフォードだった。
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