【連載版】 極秘任務で使いたいから自白剤を作ってくれと言った近衛騎士団長が自分語りをしてくる件について

紬あおい

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35.備えあれば憂いなし




二日目の今日は歓迎パーティが開かれる。
リースハルトとリンネも正装で、ガルディアン公爵夫妻として参加する。
夫婦となって初めての公の場で、リンネは全身リースハルトの色を身に纏う。
というのは建前で、陛下や殿下達の傍は離れないつもりだ。

そして、リンネはこっそり調合していた媚薬の解毒剤をリースハルトと殿下達に渡した。

「媚薬の体内への吸収を抑制する成分を調合しました。口から胃まで保護するようなイメージです。丸一日は効果があると思いますので、皆様お飲みいただけましたら。」

薬瓶の無色透明な液体をシルヴェスタ殿下とジルフリード殿下が光に翳して繁々と見ていると、リースハルトは迷いなく飲み干した。

「リースハルトは…躊躇わないのだな。」

「もちろん!リンネの調合した物ですから。薬は効かないと思っていましたが、未知の物を使用されてもそう言えるのかと考えたら疑問ですし、俺はリンネを信じます。」

「なるほど。では、飲むとするか。」

シルヴェスタ殿下はリースハルトの言葉に同調し、一気に飲み干した。
しかし、ジルフリード殿下はまだ迷っていた。

「リンネ夫人、君はどうやってこういう薬を調合しているんだ?飲んでみなければ効き目も分からないだろう?」

ジルフリード殿下の疑問はもっともだ。

「自分で試しています。少量を口に含んだり、飲んでみたり。幼い頃から薬草が友達のような環境でしたので、試すことに抵抗がないと言いますか…そんなことをしている内に耐性が付いたのか、私も毒薬などは効かないと思います。
そして、皇室の文献もとても参考になりました。勘を頼りにしていたら、四ヶ月では完成しなかったと思います。」

リースハルトは言葉にはしないが、リンネが自分で試していたことを快く思っていないようで、眉間に皺を寄せたが口出しはしない。

「そうか…ならばリンネ夫人を私も信じよう。皇帝陛下や皇后陛下の分もあるのか?」

「はい、準備してあります。ただ陛下や皇后様にこのような薬をお渡しして大丈夫でしょうか?」

「これは、後から飲んでも解毒作用はあるのか?」

「僻地の村で採取してきた万能な花を調合しましたので、後からでも効果はありますが、毒薬の成分で胃や食道が荒れて吐血するかもしれません。保護して防ぐ為に、事前にお飲みいただいた方がよろしいかと思います。」

「分かった。陛下達の判断に委ねよう。」

リンネは薬瓶を二つジルフリード殿下に手渡した。

「リンネ夫人、ジルフリードが疑うようなことを言ってすまない。私が毒に倒れてから、心配性になってな。私もジルフリードは幼い頃から、出逢ってからはリースハルトも、それなりに耐性を付けてきた筈だが、一度だけ私が危なかったことがあって…あの時もフェルディナンド公爵夫人が出席していたパーティだったな。」

「あの時はリースハルトに止められなければ、私は一気に飲み干していたかもしれないな。」

「舌に違和感を感じたんだ。ジルフリード殿下は飲む前だったが、シルヴェスタ殿下はひと口飲んでしまって…俺が毒味してから飲んでくださいよ。」

「たまたま喉が渇いていてなぁ…すまない。」

「全く…命が幾つあっても足りませんよ?」

苦笑いするシルヴェスタ殿下をちらりと見て、リースハルトは呆れて笑った。

「リースハルト様は、毒味役もされていたんですね…」

リンネは、立場上仕方ないことだと思いながらも、胸が痛くなった。

(これからは、私がリースハルト様も護る!)

「大丈夫だ、リンネが居るから。」

リースハルトに想いが伝わっているようで、リンネは満面の笑みを返した。


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