契約が終わったら静かにお引き取りくださいと言ったのはあなたなのに執着しないでください

紬あおい

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3.街に出る

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クライスはファニアを連れて、約束通りに街の洋品店へと足を運んだ。
そこには、平民が着るようなラフな服がたくさんあり、ファニアは店員を質問攻めにしていた。

「コルセットじゃない下着って、本当にするんと着るだけなの?落ちたりしない!?」

「大丈夫ですよ。締め付けがないから、とても楽です。」

「じゃあ、この上下セットで十着ください。あと、ドレスも楽なやつがいいです。動きやすくて、乾きやすいやつ!」

「サイズをお測りして、それぞれ十着ずつご用意いたしましょうか。ドレスはお色違いで、ベージュや濃紺などで如何ですか?」

「はい!白じゃなければ何でもいいです。汚れが目立たないやつで!!」

「畏まりました。お掛けになってお待ちくださいませ。」

店員は嬉々いそいそとバックヤードに向かって行った。
それを見ていたクライスは、女性の買い物とは忙しないものだと感心していた。
それは決して不快ではなく、楽しんでいる様子にほっこりしていたのだった。

「ファニア、気に入った物があって良かったな。」

「はい、初めて見る物ばかりでしたが、機能的で良い感じです。」

「別の店も行ってみるか?」

「いえ、これ以上はお金がないので、公爵家で働いてお給金をいただけたら嬉しいのですが…」

もじもじしながら働きたいと申し出るファニアに、クライスは心底驚いた。

「仮にも君は公爵家の夫人だぞ?」

「はい、仮ですから。契約ならばお給金をいただけたら…」

「わざわざ働かなくても品位維持費が支給される。」

「いや、何も出来ないのに二年後に放り出されるのは困ります!品位維持費がいただけるなら、その分働かせてください。」

クライスは埒があかないこの会話に疲れてきたので、ここは折れてやろうかと思い直した。
どうせなら領地管理も学ばせたら、何れ役に立つかもしれない。

「分かった。明日から執務を一緒にやろう。帳簿や契約書類を作成するのも、よい勉強になるだろう。」

「ありがとうございます。一応、算術は得意ですので、何かお役に立てればと思います。」

「仕事も良いが、子を産むことも念頭においてくれよ?」

「…あっ……はい…」

(そこは消極的か…金を引き出すなら、それが一番なのにな。)

「早速今夜、お相手願おう。」

「承知しました。」

どこまで本気なのか分からないが、真面目な顔で頷くファニアに、クライスは内心面白くなってきた。

「そこの者、俺達は新婚なのだが悩ましい下着はないのか?」

「へっ!?」

「あります!ものすごーくセクシーで、朝まで寝かせないぜって位のやつが!!」

「ちょっ、セクシーって!?えぇーーーっ?」

ファニアの驚いた顔が可愛らしく思えて、クライスは店員にこの店で一番セクシーな下着も注文した。
その悪戯が、夜自分にブーメランとなることも想像せずに。



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