【完結】 契約が終わったら静かにお引き取りくださいと言ったのはあなたなのに執着しないでください

紬あおい

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14.想うだけならば




一ヶ月後、牧場に生産所と仮住まいが建ち、クライスとファニアは一緒に過ごすこととなった。

(ジュリエット様がお戻りになったのに…あっ、そうか、きっとお子が授からないからだわ!やっぱりお子は私が産まなきゃいけないのね。環境を変えたら出来やすいとも言うし。だから、クライス様と牧場に住むのね!)

牧場に移住するのは、山羊のチーズの量産化の為とファニアに伝え、アルトとマリーナが敢えてクライスの肩を持たなかった為に、ファニアの勘違いは、もう潔い位に真っ直ぐな道を歩いていた。

「クライス様、チーズの量産化と子作りを頑張りましょうね!」

行き道の馬車の中で、ファニアがクライスの手を握って笑顔で話すと、一瞬驚いたがクライスの胸は喜びに満ち溢れた。

「そうだな!昼は山羊と、夜は俺と!!ファニア、愛しているよ。」

「私もです。ふふ。」

(子作りにはムードも大切ですものね。仮初でも愛情表現に手を抜かないクライス様はお優しいわ。)

「ファニア、口付けても?」

「馬車で口付けてもお子は授かりませんわ。牧場に着いて、夜ゆっくりいたしましょう?」

「わ、分かった。我慢する。でも、手は繋ぎたい。」

「はい、どうぞ。」

子どもの初恋のように、手を握り顔を赤らめるクライスに、ファニアはきゅんきゅんしていた。
しかし、これは全て契約だ。
ジュリエットの帰国で終わりを告げると思っていたが、二年の契約だ。

(クライス様のお傍に居られるのは、あと十ヶ月ちょっと…早めに身籠らないといけないわね。生産所で働かせていただけるなら、お子にも会うことが出来るかもしれないし。前向きに考えましょう。)

ファニアは、結婚してからの初めて尽くしの生活を楽しんでいた。
以前とは比べ物にならない上質な生活に慣れてはいけないと、自身を戒めつつ、クライスの傍に居ることが幸せだった。

(クライスが幸せになれるように、私も頑張らなくちゃ。)

ファニアの一つ一つの行動が自分の為でなく、クライスの為になるようにと思い始めたのと、愛おしく想う気持ちが連動するのは、きっと同時だった。

(クライス様と離れても想うだけなら、誰にも迷惑は掛けない。)

カウントダウンが始まった結婚生活を一秒も無駄にしないとファニアは思うのだった。


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