山王学園シリーズ〜カサブランカの君へ〜

七海セレナ

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343.【本質は変わらない】

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雅臣「サンドイッチを食べてからでいいんだ。その後一緒に直してくれよ?な?」

楓「それがテメェの本性か!!!」


………す、凄いな。

継続者たちに出てくる悪役と全く同じセリフじゃないか。

なかなかこんな言葉は素面で言えるもんじゃない。

蓮池、お前はもし華道家の道が閉ざされたとしても役者になれるぞ。

心の中で拍手喝采を送りながら顔を上げれば蓮池は今まで見たこともないほどギラギラと目を見開いていた。

今まで何を言っても敵わなかった相手にようやく勝てそうな感覚を得て大声でやったと叫びたいくらいだ。


雅臣「殴りたければ殴れよ。まぁ、柊は明日手伝うって言ってくれたけど……そもそもあいつのせいじゃないからなぁ……」

楓「クソがよ!やりゃいいんだろ!!工具持ってこいよ!!」


言われた通りに床に置いてあった工具を渡すと蓮池は気まずそうな顔で奪い取った。

ワーワー喚いているが内心では相当俺に悪い事をしたと思っているのだろう。

俺はもう1発トドメを食らわすことにした。


雅臣「……委員長が明後日にはクラス全員で展示を並べてみるって言ってたけど間に合うかな?」

楓「間に合わせたるわ舐めんな!!!」

雅臣「でも、これ夏休みから作ってるんだけど……」

楓「ばっ……!!何としてでも終わらしたるわ見とれよ!!」


今どき韓ドラでしかお目にかかれないセリフの連発で俺が審査員ならアカデミー賞をやりたいくらいの剣幕だ。

吹き出しそうになるのをグッと堪えてまずはサンドイッチをどうぞと勧める。


雅臣「心強いよ!!ほらもっと食べてくれ。俺はコーヒー入れるけどお前は何飲みたい?」

楓「アイスカフェラテ!!」


そう言って蓮池は苛立ち紛れに恐竜のように大口を開けてサンドイッチを食べ始めた。


____や、やったぞ!!!


作戦は成功したようで、蓮池が家に残ってくれるのが本当に嬉しい。

俺はいそいそとコーヒーマシンの前に立ちながら心を込めて蓮池好みのアイスカフェラテを入れることにする。

普段こいつと言い合いになると心労が酷いのに今日に限ってはめちゃくちゃ気が逸れて不思議なくらいに爽快でむしろ楽しいくらいだ。

ムシャムシャとサンドイッチを頬張る蓮池を見つめながら氷を入れたグラスをマシンにセットしエスプレッソが抽出されるのを待つ。

出来上がったら冷たい牛乳を多めに注いでガムシロを3個入れれば蓮池の好きな甘めのアイスカフェラテの出来上がりだ。

ストローを指してどうぞと渡すと蓮池は怒鳴り疲れた喉を潤すように一気にアイスカフェラテを啜った。


雅臣「おかわりも作っておくよ」


蓮池は頷くだけで黙ったままだが俺は最高に気分がいい。

今から時間の許す限り2人で一緒に模型を作って、蓮池を家に帰した後は俺は大人しくシャワーを浴びて大人しくベッドに入る。

そして余計なことは一切考えずにすぐに寝る!!

完璧な計劃だ!!!

そうすれば明日は………。


……。

……………。


明日は、一条先輩に何と言えばいいんだろう。

明日SSCで会ったら、俺は1番になんて声をかけるのだろうか。

それに俺は一条先輩のことを考えるのを余計なことだと思っていたのか……?


楓「な、何だよ」


ピタリと固まって動かない俺を蓮池は怪訝そうに伺っている。

でももう蓮池がいるからといって気が紛れることもなかった。

…………いや、大体気が紛れるってなんだよ。

一条先輩は俺の身の上話を親身に聞いてくれた人なのになんて言い様だ。

結局無茶を言ってまで蓮池をこの家に残したのも俺が何も考えたくなかっただけじゃないか。

穏やかで心優しい先輩の秘密を暴いたのはこの俺なのに、その事実に向き合うのが嫌で逃げていたも同然だ。


……本当に俺は何も成長していない。


東京にいた頃より遥かに成長したと思っていたけど本質は変わっていないままだ。

考えなしだった自分が嫌でどんな事もきちんと向き合って生きていくと決めたはずなのにまた考えたくなくて逃げ出そうとしている。

しかも蓮池を呼びつけてまで自分の中の弱い部分を誤魔化そうとして……。

勘違いとはいえ蓮池は心配してこの家まで来てくれたのにその優しさを無駄遣いしているようで情けなくて一気に落ち込んでしまう。


楓「……んな暗い顔せんでもこれ食ったら前より良いもんに仕上げたるわ」

雅臣「…………」


蓮池はそんな俺を見て模型が無事直せるか不安になっていると勘違いしたのだろう。

暗い感情に引っ張られないようにダン、とテーブルに拳を叩きつけて意識を無理やり引き上げてくれる姿は見ていて本当に頼もしい。

いつだってふてぶてしくて負けん気が恐ろしく強くて自信家で。

分かりづらいけど柊の言っていた通り蓮池は本当に優しい奴だった。

その強い存在感は確かに俺の気持ちを引き上げてくれるしそばに居てくれるだけで心強い。

それでも明日一条先輩になんて声をかけたらいいのかが全く思いつかなくて、蓮池が帰る前に何とか最善の答えを見つけだしたかった。


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