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391.【今が1番】
楓「夕太くんは俺よりずっと、俺のことを考えててくれてたんだな」
雅臣「……」
楓「俺のことを1番って言ってくれた。それだけで俺は生きていける」
何も言えないままの俺を見て、蓮池はふっと笑った。
楓「……楽しいな」
雅臣「何が?」
楓「夕太くんがいて、てめぇがいて、先輩がいて……今が1番楽しい」
その一言が、俺の気持ちにぴたりと重なった。
大人になったらもうこんなに楽しい時間はなくなってしまうかもしれない。
それに蓮池の今に自分を加えてくれたことも嬉しかった。
雅臣「俺もそう思うよ」
今が1番いい。
蓮池がいて、柊がいて、先輩がいる。
それは名古屋に来て本当に良かったと思える瞬間だった。
楓「……お前って、考えなしじゃん」
雅臣「な、何だよ、今度は俺の悪口か!?」
楓「いや、何かそういうのもいいなと思って」
雅臣「い、嫌味かよ!?」
楓「ただ楽しく今を過ごして、毎日バカみたいなことして笑って……」
聞けば聞くほどこいつの中の俺の印象は最悪だ。
ただの馬鹿だと言われてるみたいでつい不貞腐れて顔を背けると、蓮池は声を出して笑った。
楓「はは、夕太くんやっぱ見る目あるわ」
雅臣「何だよ、どうせ俺は馬鹿みたいだよ」
楓「お前がいて良かったわ」
雅臣「……は?」
……い、今なんて言った?
俺がいて良かった、って……。
楓「お前がいるから、これからは友達として夕太くんの隣にいられる」
蓮池の言いたいことは侮蔑でも何でもなく、素直に俺がいてくれて助かるという話だった。
でも……。
雅臣「友達 ……って、そこまでいきなり振り切らなくても……」
本当に柊のことが好きだったんだ。
だからこそ急いで感情の整理をつけなくてもいい気がする。
雅臣「そういうのは徐々に、でいいんじゃないか?
気持ちの切り替えなんて簡単にできるもんじゃない。
そう伝えた瞬間、蓮池の目が柔らかくなった気がした。
楓「10年、10年だぞ?俺のために夕太くんが考えてくれたことだからな。それを叶えられるなら幸せだよ」
雅臣「……幸せ」
そんなふうに思えるのが凄いと思った。
もし自分なら好きという感情を忘れる方が辛くて苦しくなると思う。
雅臣「お前は本当にすごいな……」
楓「文化祭終わったら仕事に勤しむとするかぁ……ハゲすっ飛ばして家元になんねぇといけねえからな」
キツい口調はすっかりいつも通りだが、どこか吹っ切れたような顔に思わずその肩を掴んだ。
雅臣「蓮池!!」
楓「あ?」
雅臣「お、お前の願いは俺が叶えてやるからな!!」
楓「……はぁ?」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出てしまった。
蓮池は何の話だと呆れている。
でもこれまで、蓮池は何だかんだ言いながらも俺を救ってきてくれたんだ。
今だって蓮池は柊の気持ちを優先して、これじゃあ蓮池だけが救われてない気がする。
だから今度こそ。
今度こそ俺が蓮池を_____。
雅臣「俺はお前が呼んだらすぐに行くし、困ったことがあったら言ってくれ!!」
蓮池が柊の願いを叶えたのなら、蓮池の願いは俺が叶えてやりたい。
楓「何をお前は急に勇者気取っどんだ」
雅臣「そうじゃない!お前は今まで俺の事助けてきてくれただろ?だから何か叶えて欲しいことができたら俺にすぐ言ってくれ!」
蓮池がまた何か言おうとした、その瞬間、
夕太「当たったー!!!!!!!」
部室の外から柊の馬鹿みたいにデカい声が聞こえてきた。
俺と蓮池は同時に瞬きして、何となく笑ってしまう。
楓「夕太くん、マジで1等出たのかな」
雅臣「アイスの可能性もあるぞ」
楓「俺には分かるよ、あの声の感じは1等だって」
扉が開くと柊はバンザイしながら中へ入ってきた。
夕太「購買半額券!!当たったー!!すごくね!?アツくね!?」
蓮池はほらねと言わんばかりに鼻で笑った。
楓「夕太くん、それ見せてよ」
夕太「でんちゃん、これこれ!雅臣も見て!!」
雅臣「よく当たったな」
楽しそうに笑う2人を見ながら、俺はミサンガに願いを込めたようにいつまでも3人で友達でいられたらと思った。
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