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8. 異性愛者が同性に股間を弄られるのって、どんな気持ちなんだろうな
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あれは中学の頃だっただろうか。
性的マイノリティの人のための団体が学校に来て講演して、そのあと多様性についてレポートを書かされた。
俺は言語に着目し、日本国内でも方言があること、国外に出れば言葉は通じないことを述べて、普通という概念がいかに脆いかを熱弁して最高評価をもらった。それで、俺は分かった気になっていたのだ。
いざこうやってマイノリティになってみると、生活は辛いなんてもんじゃなかった。
日常風景そのものが辛いという現象は、もはや社会が受容したところでどうにもならない。
だからこそ俺は諦めて溶け込もうとしていたのだが――その決意はまた折れそうになっていた。
「これなんてエロゲだよ…」
体育館のステージ脇。
この世界では誰も理解してくれないであろう呟きを漏らしながら、手にゴム手袋を嵌める。
事前に言われていたとおり、しっかりと爪も切ってきたから問題はないはずだ…俺の心以外は。
「諦めろ、慣れるためだろ」
「そうですよ。チャンスと捉えればいいんです」
野次馬をしにきた浜場と、きっちりと男子の制服を着込んだ白宮さんが、俺を励ました。
「というか白宮さんはなんてイカせスタッフ側にいるんだ?絶頂我慢大会に出るのは女子だけだろ」
「男子が苦手だから女子に担当してほしいという女子もいるんですよ。統計的に見ても、男性より女性の方が同性相手に対する抵抗感がないそうですし」
「そうなの…?」
俺は首を傾げたが、かといって今ここで掘り下げる話題でもないだろう。
そんな会話をしていたら、表から島地のMCが聞こえてきた。
『ただいまより第一回絶頂我慢チキチキレースを開催します!』
「第二回以降もやるつもりなの!?」
俺のツッコミをよそにルール説明がなされていく。
といってもタイトルの通りだ。
全員で同時にやって、一番最後までイかなかった人の勝ち。
今回出場するのは8人らしい。
『優勝した人には5000円分の図書カードが、負けた人には恥ずかしい罰ゲームが待っています!』
聞いたところによると、どうやらこれはバラエティ番組とかではわりかしポピュラーなものらしい。
恥ずかしい罰ゲームも…まあ想像できてしまう。
一体どうなることやら…
『それでは、準々決勝を行います!』
"普通"の服を着た女子たちがステージに上ってきて、俺たちイカせスタッフの前に用意された椅子に座り、脚を広げた。
俺のところに来たのは、別のクラスの関わったこともない女子。
見たことがあるようなないような、というレベルだ。
「よろしく、奥原くん。お手柔らかにね」
「手だけにか」
若干精神的に余裕が出てきたので冗談を返してみたが、彼女は首を傾げてから少ししてその意味に気づいたような素振りを見せた。
世間一般的にはスベったということになるのだろうこの状況に、俺の精神は再び締め付けられることになった。
…仕方ない。余計なことは考えず、彼女をイかせることだけに集中しよう。
指の動かし方もちゃんと練習したからなんとかなるはず。
「それでは…よーい、スタート!」
ローションに濡らした手を、彼女の秘部へとあてがって、指を挿入する。
きつすぎず緩すぎずの膣内を弄って、おそらくGスポットと呼ばれるであろう場所を擦ることに注力する。
彼女の腰がビクッと跳ね上がった。
「ちょ、ちょ…っ!うますぎ、イっちゃう!!」
「知るか、これが仕事だ…っ!それに他人のやつを触るの初めてだから何もわからないんだよ…!」
俺の精神的余裕は消え失せて、秘密の一部を彼女に漏らしてしまったものの、彼女はそれ以上に余裕がない様子だ。
「んあぁっ!」
別のところで嬌声が上がった。
視線をやってみると、白宮さんが担当した女の子を見事イカせていた。
『おおっと、7番アウトー!潮まで吹かせるとは、白宮さんテクニシャン!』
「ふぅ…」
白宮さんは涼しい顔をして、額に浮かんだ汗を拭った。
一仕事終えた感が満載である。
「ちょ、んっ、無理っ…!イっ――」
続いて、俺の担当していた女子がキュッと目を瞑ったかと思うと、指先が強く締め付けられた。
目を配っていた審判が島地に合図を送る。
『4番アウトー!開始30秒で2人が脱落!』
「はぁ…はぁ…やられちゃった…手加減してよー」
「バカ言え、俺が手加減したら八百長になるだろ」
俺は呟きながら指を抜いた。
ぬるりと滑るような感触がした。
指先に目をやると、糸を引いていた。
「…どうしたの?そんな見つめて」
「いや…」
こんな光景を見ても特別な感慨を抱かなくなった自分に、奇妙な感心と呆れを感じた。
性的マイノリティの人のための団体が学校に来て講演して、そのあと多様性についてレポートを書かされた。
俺は言語に着目し、日本国内でも方言があること、国外に出れば言葉は通じないことを述べて、普通という概念がいかに脆いかを熱弁して最高評価をもらった。それで、俺は分かった気になっていたのだ。
いざこうやってマイノリティになってみると、生活は辛いなんてもんじゃなかった。
日常風景そのものが辛いという現象は、もはや社会が受容したところでどうにもならない。
だからこそ俺は諦めて溶け込もうとしていたのだが――その決意はまた折れそうになっていた。
「これなんてエロゲだよ…」
体育館のステージ脇。
この世界では誰も理解してくれないであろう呟きを漏らしながら、手にゴム手袋を嵌める。
事前に言われていたとおり、しっかりと爪も切ってきたから問題はないはずだ…俺の心以外は。
「諦めろ、慣れるためだろ」
「そうですよ。チャンスと捉えればいいんです」
野次馬をしにきた浜場と、きっちりと男子の制服を着込んだ白宮さんが、俺を励ました。
「というか白宮さんはなんてイカせスタッフ側にいるんだ?絶頂我慢大会に出るのは女子だけだろ」
「男子が苦手だから女子に担当してほしいという女子もいるんですよ。統計的に見ても、男性より女性の方が同性相手に対する抵抗感がないそうですし」
「そうなの…?」
俺は首を傾げたが、かといって今ここで掘り下げる話題でもないだろう。
そんな会話をしていたら、表から島地のMCが聞こえてきた。
『ただいまより第一回絶頂我慢チキチキレースを開催します!』
「第二回以降もやるつもりなの!?」
俺のツッコミをよそにルール説明がなされていく。
といってもタイトルの通りだ。
全員で同時にやって、一番最後までイかなかった人の勝ち。
今回出場するのは8人らしい。
『優勝した人には5000円分の図書カードが、負けた人には恥ずかしい罰ゲームが待っています!』
聞いたところによると、どうやらこれはバラエティ番組とかではわりかしポピュラーなものらしい。
恥ずかしい罰ゲームも…まあ想像できてしまう。
一体どうなることやら…
『それでは、準々決勝を行います!』
"普通"の服を着た女子たちがステージに上ってきて、俺たちイカせスタッフの前に用意された椅子に座り、脚を広げた。
俺のところに来たのは、別のクラスの関わったこともない女子。
見たことがあるようなないような、というレベルだ。
「よろしく、奥原くん。お手柔らかにね」
「手だけにか」
若干精神的に余裕が出てきたので冗談を返してみたが、彼女は首を傾げてから少ししてその意味に気づいたような素振りを見せた。
世間一般的にはスベったということになるのだろうこの状況に、俺の精神は再び締め付けられることになった。
…仕方ない。余計なことは考えず、彼女をイかせることだけに集中しよう。
指の動かし方もちゃんと練習したからなんとかなるはず。
「それでは…よーい、スタート!」
ローションに濡らした手を、彼女の秘部へとあてがって、指を挿入する。
きつすぎず緩すぎずの膣内を弄って、おそらくGスポットと呼ばれるであろう場所を擦ることに注力する。
彼女の腰がビクッと跳ね上がった。
「ちょ、ちょ…っ!うますぎ、イっちゃう!!」
「知るか、これが仕事だ…っ!それに他人のやつを触るの初めてだから何もわからないんだよ…!」
俺の精神的余裕は消え失せて、秘密の一部を彼女に漏らしてしまったものの、彼女はそれ以上に余裕がない様子だ。
「んあぁっ!」
別のところで嬌声が上がった。
視線をやってみると、白宮さんが担当した女の子を見事イカせていた。
『おおっと、7番アウトー!潮まで吹かせるとは、白宮さんテクニシャン!』
「ふぅ…」
白宮さんは涼しい顔をして、額に浮かんだ汗を拭った。
一仕事終えた感が満載である。
「ちょ、んっ、無理っ…!イっ――」
続いて、俺の担当していた女子がキュッと目を瞑ったかと思うと、指先が強く締め付けられた。
目を配っていた審判が島地に合図を送る。
『4番アウトー!開始30秒で2人が脱落!』
「はぁ…はぁ…やられちゃった…手加減してよー」
「バカ言え、俺が手加減したら八百長になるだろ」
俺は呟きながら指を抜いた。
ぬるりと滑るような感触がした。
指先に目をやると、糸を引いていた。
「…どうしたの?そんな見つめて」
「いや…」
こんな光景を見ても特別な感慨を抱かなくなった自分に、奇妙な感心と呆れを感じた。
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