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39. イベントは嫌いでも、イベントの空気は好き
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『只今より、私立有屋第一学園運動会を開催します!』
開会式が終わり、俺たちは校庭に特設された座席へと集まる。
9月の終わりにしては暖かい気温で天気も快晴。これ以上ない良好な運動会日和だ。
さて、この運動会は俺にとってはわりと気楽なイベントとなっていた。
出場種目を絞ったのもそうだが、このイベントでは体育と同じく全員が同じ体操着を着る。
そう。全員、即ち女子も含めてだ。
体の保護だかなんだか知らないが、視覚的な負担が減ることはとても嬉しい。
おまけに、男女の分かれた種目がそこそこあるために男女の席も分けられていて、これ以上ない良い環境と言えた。
「…というわけだ。別に運動会に浮かれてるわけじゃない」
「いいんだぞ、浮かれてても。空気感ってものがあるしな」
隣に座る浜場が言う。
ちなみに彼は、彼女である島地と離されて若干不機嫌である。
「別に男女分ける必要ないだろ。ほら今はトランスジェンダーとかそういう時代だろ」
「雑すぎるわ、どうあがいても男女の体のつくりは違うんだよ」
この世界にいると特にそれを認識することが多い。
なにせ常に見せられているからな。
「まあいいじゃんか。今日は男子同士、積もる話でもしようぜ」
「そんな積もらせるほど思い出があるかよ」
加賀の言葉に、俺はそう返す。
実際、時々絡むだけで特にこれといった思い出が蓄積された覚えはないのだが…
「もしかして白宮さん関係か?」
「…正解。ぶっちゃけ、俺もいろいろ話聞いてみたいんだわ」
「おっ、面白そうな話をしているね。僕も混ざっていいかな」
…なんだかんだで、俺が絡んだことがある奴らが集合してしまった。
◆ ◆ ◆
最初の種目に全力で取り組む生徒たちを眺めながら、俺たちはだらだらと話をする。
「…で、何が聞きたいんだよ」
「まあ、そりゃ最近の動向というか?」
「ぶっちゃけお前白宮さんとどんな感じなのよ」
ぼかした浜場に対して、加賀が直球でブッ込んで来た。
「どんな感じ、と言われてもなぁ…」
「ほら、君は確か女子に慣れるために白宮さんと二人きりで話をしているんだろう?あの白宮さんと、二人きりで。しかも春からずっとそれが続いてるんだ」
「まあ、そうだが…それがどうかしたのか?」
「おいおい奥原、それを『どうかしたのか』で片付けたら男子全員に刺されるぞ。もちろんオレも刺す」
「なんでだよ!お前、島地に言いつけてやろうか!」
思わず言い返すと、俺以外の3人が思い切り笑った。なんか納得行かない。
ひとしきり笑われたあと、近藤がいち早く落ち着いた。
「知らなかったなら申し訳なかった。白宮さんは、入学後の一ヶ月でもう…言って良いのかな…なんというか、八方美人って感じだったんだよ。実際美人だしね」
「あー、確かになあ。話しかけづらいってわけでもないんだけど、踏み込ませてくれないというか」
「オレも踏み込もうとして散っていったヤツらを何人も見たぜ…」
多分告白のことだろう。
それは最初の一ヶ月で告白するほうが悪いんじゃなかろうか。
「で、そんな状況の中でいきなりお前と白宮さんがベタベタしだした。気になるわけだが、相変わらず白宮さんはお前以外には八方美人だしお前はなんか絡みづらいしで相変わらず情報が入ってこない」
「そうこうしているうちに夏休みだ。そこでも、白宮さんがお前を指名して騒ぎになった。だから何か聞きたいと思った矢先、ビーチバレーという機会が巡ってきた」
「それで折角だからと声をかけることにしたってわけさ」
近藤がそう言ったところで、俺の出る男子100m走のアナウンスが響いてきた。
「悪い、また後で」
「あいよ」
三人に見送られ、俺は座席をあとにした。
さっさと済ませて戻ってこよう。
開会式が終わり、俺たちは校庭に特設された座席へと集まる。
9月の終わりにしては暖かい気温で天気も快晴。これ以上ない良好な運動会日和だ。
さて、この運動会は俺にとってはわりと気楽なイベントとなっていた。
出場種目を絞ったのもそうだが、このイベントでは体育と同じく全員が同じ体操着を着る。
そう。全員、即ち女子も含めてだ。
体の保護だかなんだか知らないが、視覚的な負担が減ることはとても嬉しい。
おまけに、男女の分かれた種目がそこそこあるために男女の席も分けられていて、これ以上ない良い環境と言えた。
「…というわけだ。別に運動会に浮かれてるわけじゃない」
「いいんだぞ、浮かれてても。空気感ってものがあるしな」
隣に座る浜場が言う。
ちなみに彼は、彼女である島地と離されて若干不機嫌である。
「別に男女分ける必要ないだろ。ほら今はトランスジェンダーとかそういう時代だろ」
「雑すぎるわ、どうあがいても男女の体のつくりは違うんだよ」
この世界にいると特にそれを認識することが多い。
なにせ常に見せられているからな。
「まあいいじゃんか。今日は男子同士、積もる話でもしようぜ」
「そんな積もらせるほど思い出があるかよ」
加賀の言葉に、俺はそう返す。
実際、時々絡むだけで特にこれといった思い出が蓄積された覚えはないのだが…
「もしかして白宮さん関係か?」
「…正解。ぶっちゃけ、俺もいろいろ話聞いてみたいんだわ」
「おっ、面白そうな話をしているね。僕も混ざっていいかな」
…なんだかんだで、俺が絡んだことがある奴らが集合してしまった。
◆ ◆ ◆
最初の種目に全力で取り組む生徒たちを眺めながら、俺たちはだらだらと話をする。
「…で、何が聞きたいんだよ」
「まあ、そりゃ最近の動向というか?」
「ぶっちゃけお前白宮さんとどんな感じなのよ」
ぼかした浜場に対して、加賀が直球でブッ込んで来た。
「どんな感じ、と言われてもなぁ…」
「ほら、君は確か女子に慣れるために白宮さんと二人きりで話をしているんだろう?あの白宮さんと、二人きりで。しかも春からずっとそれが続いてるんだ」
「まあ、そうだが…それがどうかしたのか?」
「おいおい奥原、それを『どうかしたのか』で片付けたら男子全員に刺されるぞ。もちろんオレも刺す」
「なんでだよ!お前、島地に言いつけてやろうか!」
思わず言い返すと、俺以外の3人が思い切り笑った。なんか納得行かない。
ひとしきり笑われたあと、近藤がいち早く落ち着いた。
「知らなかったなら申し訳なかった。白宮さんは、入学後の一ヶ月でもう…言って良いのかな…なんというか、八方美人って感じだったんだよ。実際美人だしね」
「あー、確かになあ。話しかけづらいってわけでもないんだけど、踏み込ませてくれないというか」
「オレも踏み込もうとして散っていったヤツらを何人も見たぜ…」
多分告白のことだろう。
それは最初の一ヶ月で告白するほうが悪いんじゃなかろうか。
「で、そんな状況の中でいきなりお前と白宮さんがベタベタしだした。気になるわけだが、相変わらず白宮さんはお前以外には八方美人だしお前はなんか絡みづらいしで相変わらず情報が入ってこない」
「そうこうしているうちに夏休みだ。そこでも、白宮さんがお前を指名して騒ぎになった。だから何か聞きたいと思った矢先、ビーチバレーという機会が巡ってきた」
「それで折角だからと声をかけることにしたってわけさ」
近藤がそう言ったところで、俺の出る男子100m走のアナウンスが響いてきた。
「悪い、また後で」
「あいよ」
三人に見送られ、俺は座席をあとにした。
さっさと済ませて戻ってこよう。
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