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43. 柄にもなく、復讐に燃えてしまった
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地面に落ちた玉を掻き集め、何個かまとめて押し上げるように投げる。
俺の投げた塊が、すっぽりとカゴに収まる。
「え、ちょ、奥原それどうやってんの!?」
「簡単だぞ?いくつか集めて、カゴから1mくらい離れたとこから、カゴのちょい上を狙って押すようにほいっとやりゃ入る」
「マジで?…あ、マジだ!!」
訊いてきた奴にコツを伝授してやると、それはあっという間にチーム内に広まった。
皆同じフォームで玉を投げ始め、他のチームに比べれば圧倒的に効率が良くなった。
そして最終的には、制限時間内に全ての玉をカゴに収めるという完璧な勝利を手にしたのだった。
他のチームが唖然としている中、こちらのチームはたかが玉入れに勝利したとは思えないほどの熱狂ぶりだった。
「うぉっしゃぁ!奥原、お前がMVPだ!まあ、俺達ちょっと大人気ないけどな」
「小学生の玉入れとは訳が違うんだよ。作戦を立てて相手をキッチリ潰すのがスポーツだろ」
「それはスポーツへの偏見だぜ…」
実を言うと、相手チームにさっき100m走で俺をボロクソに負かした奴のうちの一人がいたので、ここで汚名返上しつつ仕返ししてやりたかったという気持ちがあった。
あんなことにならなければ、俺も普通に一個ずつのんびり投げるだけだっただろう。
◆ ◆ ◆
「ただいま」
「おう、お疲れ。見ろよアレ」
浜場が指したほうを見てみると、ちょうどスコアボードが更新されつつあった。
「えっと…うちのクラスは…おお、大逆転じゃねえか!」
先程まで最下位だった俺達のクラスが、他3クラスを抑えて1位に躍り出た。
「すげえな!でも玉入れであんな逆転できるもんか?」
「なんか、事前に知らされてなかったパーフェクトボーナスがあったらしいぞ」
漏れ聞こえてきたことではあったが、どうやらネタ競技に隠し得点をぽつぽつと配置しているらしい。
どんなことで勝つかわからないというわけだ。
「玉入れとかみたいな、こんな歳になってやるもんでもなさそうな競技があると思ったらそういうことか…」
この後も、バラエティに富んだ障害物競走とかみたいなものがあるから、そこらへんでも何かあるのかもしれない。
「ま、運営側としちゃお楽しみ競技とはいえ手抜きをしたら痛い目見るようにしてるんだろうな」
「そのとーり!」
「うおっビビったぁ!」
浜場の背後からそーっと島地が近づいて、いきなり肩を掴んだ。
向かい合って話している俺にはバッチリ見えていたが、口元に指を当てて「しーっ」のジェスチャーをしてきたので俺は黙っていた。
「島地が運営側に立ってるってことは…イベント企画委員会が一枚噛んでるってことか」
「そゆこと。ただの『体育祭』じゃつまんないから、ってことで今年は『運動会』。普段の体育の延長線上にはないものにしようってなったんだよ」
「なるほど。ちなみにこの後もいろいろあるのか?」
「秘密だよー。言ったらつまんないじゃん」
島地は意地悪そうな笑みを浮かべた。
…こういう運動会なら、俺も案外楽しめるものなんだな。
俺の投げた塊が、すっぽりとカゴに収まる。
「え、ちょ、奥原それどうやってんの!?」
「簡単だぞ?いくつか集めて、カゴから1mくらい離れたとこから、カゴのちょい上を狙って押すようにほいっとやりゃ入る」
「マジで?…あ、マジだ!!」
訊いてきた奴にコツを伝授してやると、それはあっという間にチーム内に広まった。
皆同じフォームで玉を投げ始め、他のチームに比べれば圧倒的に効率が良くなった。
そして最終的には、制限時間内に全ての玉をカゴに収めるという完璧な勝利を手にしたのだった。
他のチームが唖然としている中、こちらのチームはたかが玉入れに勝利したとは思えないほどの熱狂ぶりだった。
「うぉっしゃぁ!奥原、お前がMVPだ!まあ、俺達ちょっと大人気ないけどな」
「小学生の玉入れとは訳が違うんだよ。作戦を立てて相手をキッチリ潰すのがスポーツだろ」
「それはスポーツへの偏見だぜ…」
実を言うと、相手チームにさっき100m走で俺をボロクソに負かした奴のうちの一人がいたので、ここで汚名返上しつつ仕返ししてやりたかったという気持ちがあった。
あんなことにならなければ、俺も普通に一個ずつのんびり投げるだけだっただろう。
◆ ◆ ◆
「ただいま」
「おう、お疲れ。見ろよアレ」
浜場が指したほうを見てみると、ちょうどスコアボードが更新されつつあった。
「えっと…うちのクラスは…おお、大逆転じゃねえか!」
先程まで最下位だった俺達のクラスが、他3クラスを抑えて1位に躍り出た。
「すげえな!でも玉入れであんな逆転できるもんか?」
「なんか、事前に知らされてなかったパーフェクトボーナスがあったらしいぞ」
漏れ聞こえてきたことではあったが、どうやらネタ競技に隠し得点をぽつぽつと配置しているらしい。
どんなことで勝つかわからないというわけだ。
「玉入れとかみたいな、こんな歳になってやるもんでもなさそうな競技があると思ったらそういうことか…」
この後も、バラエティに富んだ障害物競走とかみたいなものがあるから、そこらへんでも何かあるのかもしれない。
「ま、運営側としちゃお楽しみ競技とはいえ手抜きをしたら痛い目見るようにしてるんだろうな」
「そのとーり!」
「うおっビビったぁ!」
浜場の背後からそーっと島地が近づいて、いきなり肩を掴んだ。
向かい合って話している俺にはバッチリ見えていたが、口元に指を当てて「しーっ」のジェスチャーをしてきたので俺は黙っていた。
「島地が運営側に立ってるってことは…イベント企画委員会が一枚噛んでるってことか」
「そゆこと。ただの『体育祭』じゃつまんないから、ってことで今年は『運動会』。普段の体育の延長線上にはないものにしようってなったんだよ」
「なるほど。ちなみにこの後もいろいろあるのか?」
「秘密だよー。言ったらつまんないじゃん」
島地は意地悪そうな笑みを浮かべた。
…こういう運動会なら、俺も案外楽しめるものなんだな。
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