127 / 164
127. お世話になったら、挨拶しないといけない
しおりを挟む
年が明けて五日経った。
世間一般の学校より早く、俺たちの通う私立有屋学園の三学期は始まる。
様々なイベントで失った授業時間をここでまとめて取り戻すつもりなのかもしれない。
「どうだ、奥原。不満か?」
「学校のほうが美香といられる時間が長いから、むしろ助かるな」
「ふっ、合格だ。バカップルの世界へようこそ」
休みの日は能動的に動かなければ会えないが、学校という同じ狭い空間にいればいくらでも会える。
学生の身分で恋愛をするのだから、その利点はしっかり活かしていくつもりだ。
「それにしても、やっとくっついたんだね」
斜め前の席から、島地が呆れたように息をつく。
「ホント、いつになったらくっつくんだろうと常々思ってたけど…ま、良かったよ。やるじゃん、クリスマスに告白なんて」
「お前らのおかげだよ。本当に助かった、ありがとう」
「良いんだよ。こっちも助けられたからね」
「そうそう。なんだかんだ、わたしたちのくっつくきっかけって奥原くんだからね」
反応したのは近藤と色葉だ。
近くまで寄ってきて俺たちの会話に参加している。
この二人は、文化祭の時に付き合ったらしく、時々セックスをしている様子を見かける。
…どちらかといえば、近藤が色葉を乳首責めしている頻度のほうが高い気がするけども。
「それでそれで、二人はさ、どこまで進んだの?」
「あ、わたしも気になる!どう?ちゅーした?ちゅーしちゃったの?」
ここでの「ちゅー」は多分元の世界的には「ぱんぱん」くらいの隠語である。
下ネタを憚らない女子二人に苦笑いをしながら、どう説明したものか俺は考えた。
「そうだな…キス『は』した」
「「「おぉー…」」」
四人が全く同じ声を上げる。
「やるねぇおっくん。隅に置けないなぁ」
「…ん?待て、『は』って言ったよな?もしかしてセックスはしてないのか?」
「実はそうなんだ。これに関してはちょっと許可なしでは言えない事情があるんだが…今、できるようにお互い努力してるところだ」
「まぁ、お前の事情は特殊だからな。仕方ない」
ここの四人には、俺の常識についての話を通してある。
「応援してるよ。僕たちもできるだけ長い間恋人同士でいられるよう頑張るからね」
「別れる前提!?」
「あ、いや、そんなつもりでは…」
言ったそばから近藤と色葉が破局しかけていて、俺たちは笑いながら二人を宥めた。
◆ ◆ ◆
「…で、その後片理さんにも話して、これで報告はし終わったと思う」
「お疲れ様。こっちも、仲いい友達にはこっそり話しておいたよ」
「こっそりか。大変だな」
俺と美香は、例によって会議室を借りていた。
もはや、勉強という大義名分すら存在していなかったが、先生からはすんなり借りられた。
なんだか、積み上げた信用を消費している気分になる。
その分いろいろと貢献しているつもりだから許してほしい。
「それで…いいんだな?付き合ってることは隠す、ってことで」
「隠すというか、親しい人以外には伝えない。普段どおりに付き合って、時々こうやって会って、まぁ…聞かれたら答えるくらい」
「これだけ二人で会ってたら、まあいずれは問いただされそうな気もするけど」
とりあえず、下手に詮索されない限りは何も話さない方針を決めた。
「じゃ、今日は帰ろうか。もう遅いしな」
「うん。また明日ね」
俺は荷物をまとめ、立ち上がる。
「あっ、総司くん…」
美香に呼び止められ、出口で振り返る。
「どうした?」
「い、いや、大したことじゃないんだけど…三学期も、よろしくね?」
「――ああ、よろしく」
三学期だけじゃなく、これからもずっと――と言おうと考えたものの、流石に恥ずかしい気がして口を閉じた。
世間一般の学校より早く、俺たちの通う私立有屋学園の三学期は始まる。
様々なイベントで失った授業時間をここでまとめて取り戻すつもりなのかもしれない。
「どうだ、奥原。不満か?」
「学校のほうが美香といられる時間が長いから、むしろ助かるな」
「ふっ、合格だ。バカップルの世界へようこそ」
休みの日は能動的に動かなければ会えないが、学校という同じ狭い空間にいればいくらでも会える。
学生の身分で恋愛をするのだから、その利点はしっかり活かしていくつもりだ。
「それにしても、やっとくっついたんだね」
斜め前の席から、島地が呆れたように息をつく。
「ホント、いつになったらくっつくんだろうと常々思ってたけど…ま、良かったよ。やるじゃん、クリスマスに告白なんて」
「お前らのおかげだよ。本当に助かった、ありがとう」
「良いんだよ。こっちも助けられたからね」
「そうそう。なんだかんだ、わたしたちのくっつくきっかけって奥原くんだからね」
反応したのは近藤と色葉だ。
近くまで寄ってきて俺たちの会話に参加している。
この二人は、文化祭の時に付き合ったらしく、時々セックスをしている様子を見かける。
…どちらかといえば、近藤が色葉を乳首責めしている頻度のほうが高い気がするけども。
「それでそれで、二人はさ、どこまで進んだの?」
「あ、わたしも気になる!どう?ちゅーした?ちゅーしちゃったの?」
ここでの「ちゅー」は多分元の世界的には「ぱんぱん」くらいの隠語である。
下ネタを憚らない女子二人に苦笑いをしながら、どう説明したものか俺は考えた。
「そうだな…キス『は』した」
「「「おぉー…」」」
四人が全く同じ声を上げる。
「やるねぇおっくん。隅に置けないなぁ」
「…ん?待て、『は』って言ったよな?もしかしてセックスはしてないのか?」
「実はそうなんだ。これに関してはちょっと許可なしでは言えない事情があるんだが…今、できるようにお互い努力してるところだ」
「まぁ、お前の事情は特殊だからな。仕方ない」
ここの四人には、俺の常識についての話を通してある。
「応援してるよ。僕たちもできるだけ長い間恋人同士でいられるよう頑張るからね」
「別れる前提!?」
「あ、いや、そんなつもりでは…」
言ったそばから近藤と色葉が破局しかけていて、俺たちは笑いながら二人を宥めた。
◆ ◆ ◆
「…で、その後片理さんにも話して、これで報告はし終わったと思う」
「お疲れ様。こっちも、仲いい友達にはこっそり話しておいたよ」
「こっそりか。大変だな」
俺と美香は、例によって会議室を借りていた。
もはや、勉強という大義名分すら存在していなかったが、先生からはすんなり借りられた。
なんだか、積み上げた信用を消費している気分になる。
その分いろいろと貢献しているつもりだから許してほしい。
「それで…いいんだな?付き合ってることは隠す、ってことで」
「隠すというか、親しい人以外には伝えない。普段どおりに付き合って、時々こうやって会って、まぁ…聞かれたら答えるくらい」
「これだけ二人で会ってたら、まあいずれは問いただされそうな気もするけど」
とりあえず、下手に詮索されない限りは何も話さない方針を決めた。
「じゃ、今日は帰ろうか。もう遅いしな」
「うん。また明日ね」
俺は荷物をまとめ、立ち上がる。
「あっ、総司くん…」
美香に呼び止められ、出口で振り返る。
「どうした?」
「い、いや、大したことじゃないんだけど…三学期も、よろしくね?」
「――ああ、よろしく」
三学期だけじゃなく、これからもずっと――と言おうと考えたものの、流石に恥ずかしい気がして口を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる