女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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Last. 女の子がエロい服を着てる世界でも――

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 噂が広まるのは日が昇るより早かったようで、携帯に来ていたメッセージは十件を超えた。
 わざわざ既読をつけてやることもない。何も見ていないという体でいることにした。
 それでも、付き合っていると宣伝するつもりなのは、何ら変わりはない。

 ◆ ◆ ◆

 朝食はビュッフェとかバイキングとか言われる形式だ。
 会場に着いてみたが、まだ誰も来ていなかった。
 指定された集合場所も、まだ先生たちがいる程度だ。
 自由席ということだったので、俺たちはさっさと二人席を確保した。
 二人で談笑していると、少しずつ人が増える。
 やがて、ちらほら人が来るようになる。
 人の多さに比例して、視線も多くなっていく。
 しかし、誰もこちらには来ない。どう質問していいか、みんな考えているようだ。
 妙な居心地の悪さを感じつつ質問するならさっさとしてくれと思っていると、ついに一人こちらへやってきた。

「おう、おはよう奥原」
「…加賀」
「お前、白宮さんと付き合ってたのか?」
「そうだ」

 ハッキリと、聞こえるように宣言する。
 加賀は、フッと小さな笑みを浮かべてから、近くの席にどっかりと腰を下ろした。

「やるな。先越されちまったな」
「…えーと」
「ああいや、お前が悪いとかそういうつもりは毛頭ない。恋愛ってのはそういうもんだからな」

 俺の困っていたことを的確に見抜いて先回りしてくれるのは、コミュニケーションが苦手な俺としては助かった。

「やあ、横から失礼するよ」
「お、坂田じゃん」

 加賀が反応した。ここも知り合いだったらしい。

「おめでとう…と言うのは違うよね。いつから?」
「去年のクリスマスからです」

 美香がそれはもう人当たりの良さそうな笑顔で言った。
 通る声なので、当然周りにも聞こえているだろう。
 諦めたように顔を背けた人が数人いた。

「そりゃロマンチックだな!ちなみにどっちから告白したんだ?」
「俺からだ」
「ちなみに二人ともいつから好きだったんだい?」
「それ今ここで言わせるのかよ、さすがに恥ずかしいわ」

 そう言いながらも、想定される質問をここで投げかけて消費してくれる二人には内心で感謝していた。
 そして、浜場と島地も連れ立って来た。

「お前らようやく公表したんだな?」
「え、前から知ってたのかよ浜場!?」

 そうして、俺たちの周りには知り合いが集まった。
 相変わらず、話題は俺たちの関係について。
 それが防波堤となって、周りの知らない人たちから答えづらい質問が飛んでくることはなかった。
 だが、これは確実に聞こえている。
 俺たちの関係を公表する、という目的は達成されたと考えても良いだろう。

 ◆ ◆ ◆

 それから終業式までのおよそ一週間、俺は美香と一緒にいる時間を増やすよう注力した。
 防波堤の効果は宿泊学習の後も続いていたが、それに頼ってばかりではいけないと思ったからだ。
 具体的には、休み時間に会いに行ったり、放課後も会議室ではなく教室で話をするようにした。
 そして、週末には家で美香とセックスをした。
 さすがにまだ人前で堂々とやるのは美香としても緊張しすぎてしまうらしいが、この調子ならいつかは…とも言っていた。
 人の慣れというのはすごいもので、それを始めて三日も経てば、あまりこちらを気にする人はいなくなった。

 そうして、終業式も終わって、春休み。

「またお世話になります」
「いいのいいの、美香ちゃんなら大歓迎」

 美香はまたうちに泊まりに来ていた。
 最近はなんだか家族ぐるみの付き合いという感じになってきていて、なんなら俺の方も美香の家に泊まらないかと言われているほどだ。
 さて、そんな感じで擬似的な同棲生活をするわけだが…

「…もう…っ、まだお昼だよ…っ…」
「いいだろ…、別に…っ」

 テレビの前のソファで美香の身体を弄ったり…

「えっと…こう?あんまり挟めないけど…」
「大丈夫、気持ちいいから」

 風呂に入れば、やっぱりいちゃついてしまったり…と、我ながら、初々しいムーブをしてしまっている。
 そして夜はもちろん、同じベッドの上で唇を――これは言うまでもないか。

 まあ、要はまとめてしまえば――女の子がエロい服を着てるような、そんな別の常識の世界に行ってしまっても、案外なんとかなるということだ。

「ね、早く…しよ?」
「そうだな」

 俺は短く答えて、身体を擦り寄せてきた美香の方を向いて、顔を近づけた。

(完)


 ◆ ◆ ◆

 (あとがき)
 これで本編は終了となります。
 サイドストーリーを3話載せて、完全に完結する予定です。
 ここまでお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました。
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