終焉のラメント(合唱)

Dragonfly

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一章

はじまりの詩(うた)

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歌が止まれば、世界は沈む。
声が絶えれば、時は閉じる。

わたしは〈島〉の心臓。
はじまりの時、女神の涙がひとつ落ち、
それが根を伸ばして、この地を形作った。

〈島〉は、女神の涙から生まれた果実。
霧に包まれ、世界の四方をつなぐ静かな軸。

精霊の国、人の世、魔法の世界、夢の底──
その境をやわらかく隔て、結び合わせる場所。
ここでは、時間も命も、歌によって巡る。

春が芽吹けば、声が溶け、
夏が燃えれば、旋律は弾け、
秋が沈めば、祈りが還り、
冬が眠れば、世界は息を継ぐ。

その循環を支えるのは、わたし――〈女神の竪琴〉。
わたしは世界樹の洞に浮かぶ、音の心臓。
女神の指先から生まれ、時を奏で続けてきた。

わたしの弦は十六本。
ひとつひとつが季節の声とつながり、
巫女たちの歌を受けて世界を回す。

音は枝葉を伝い、風となり、
風は霧をゆるやかに揺らし、
やがて命を呼び覚ます。

幾千の歳月のあいだ、
わたしは眠るように歌い、
歌うように眠ってきた。

巫女たちの歌はわたしの血潮、
わたしの音が、この〈島〉の脈動。

だが――ある日、音が歪んだ。

誰かが祈りの歌をやめたのだ。

わたしの弦は、微かに軋み、
霧が、濃く、重く、降りてきた。

空と海はその境を失い、
昼も夜も曖昧なまま、止まってしまった。

鳥はさえずりを忘れ、花は散ることを拒み、
風は眠り、波は呼吸をやめた。

〈島〉は、永遠の春に囚われた。

そして、わたしは気が付いた。
――秋の声が、消えている。

霧の底、世界樹の根のさらに奥で、
沈黙の波が、静かにわたしの弦を締め上げていた。
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