1 / 6
その光、命に変えて星となる
しおりを挟む
死することのない存在。
それが当たり前であるように、彼の背にはどんな刃も届かなかったし、世界はその光に膝を折った。
だが光は、ある日、突然に消えた。
何百、何千と訪れた愛し子の神殿を、星々を宿した漆黒の髪が舞い、光の残滓のように駆け抜けていく。
そして見つけた、中央神殿の奥。
「……レイアス」
声が震えていた。ひとたび耳にすればどんな魂も耳を傾ける神の声が、今は不安で仕方がないと言うように。
「そんな……」
無惨だった。
その身に纏っていたはずの祝福も加護も、血に染まり、砕け散っている。
世界の均衡を担っていた“光”の神レフ=レイアスは、すでに、神の器として限界を迎えていた。
天と魔の間で始まった戦の火は、人間界にまで及び、三界の均衡は崩れ去った。
そして、レイアスはその中心で、それぞれの命を尊び、最後まで人と魔と神の対話を望んだ。
だが、その姿勢こそが、他の神々の怒りを買った。
「……エリュア様、もう……」
脇にひざまずくのは、レイアスに仕えていた神獣の眷属。
半身を失おうと、なお主の側を離れない。
彼の神力を分け与えられ生きていたその身は、レイアスの死によって崩壊が始まっていた。
「これがこの子の運命だというの?認めないわ」
神として越えてはならぬ一線。だがどうしても、ただひとりの母として、姉として黎光の母神エリュアは彼をこのまま手放すことなどできなかった。
レフ=レイアスは最後まで、恨まず、怒らず、否定もしなかった。ただ、静かに目を閉じたのだ。
それがどれほど苦しい決断だったかを、誰よりも知っていた。
だからこそ、許されぬ禁を破る。
「この命をもって、あなたの魂を繋ぎましょう」
「主、共に生きます。」
震える手で、崩れかけた子の額に触れた。
柔らかな白色の光が生まれ、それはやがて神殿全体を包みこんだ。
「来世でも、あなたがあなたでいられるように」
「どうか――もう一度、光となって」
神の法に背いたその祈りは、やがて魂の糸を紡ぎはじめた。
レフ=レイアスの胸に宿った、わずかな輝きが応えるように脈を打ち、強く光った。
血に染まった神殿の天が割れる。
空へ昇る光の柱が、星々の流れを変えていく。
その中心で、黎光の母神エリュアが愛し子の白い魂を名残惜しげに抱きしめながら、ただ静かに空へ消えていった。
ーー誰も知らない。
神界から消えたその光が、地の果てで再び命を灯すことを。
その光、命に変えて星となる。
それが当たり前であるように、彼の背にはどんな刃も届かなかったし、世界はその光に膝を折った。
だが光は、ある日、突然に消えた。
何百、何千と訪れた愛し子の神殿を、星々を宿した漆黒の髪が舞い、光の残滓のように駆け抜けていく。
そして見つけた、中央神殿の奥。
「……レイアス」
声が震えていた。ひとたび耳にすればどんな魂も耳を傾ける神の声が、今は不安で仕方がないと言うように。
「そんな……」
無惨だった。
その身に纏っていたはずの祝福も加護も、血に染まり、砕け散っている。
世界の均衡を担っていた“光”の神レフ=レイアスは、すでに、神の器として限界を迎えていた。
天と魔の間で始まった戦の火は、人間界にまで及び、三界の均衡は崩れ去った。
そして、レイアスはその中心で、それぞれの命を尊び、最後まで人と魔と神の対話を望んだ。
だが、その姿勢こそが、他の神々の怒りを買った。
「……エリュア様、もう……」
脇にひざまずくのは、レイアスに仕えていた神獣の眷属。
半身を失おうと、なお主の側を離れない。
彼の神力を分け与えられ生きていたその身は、レイアスの死によって崩壊が始まっていた。
「これがこの子の運命だというの?認めないわ」
神として越えてはならぬ一線。だがどうしても、ただひとりの母として、姉として黎光の母神エリュアは彼をこのまま手放すことなどできなかった。
レフ=レイアスは最後まで、恨まず、怒らず、否定もしなかった。ただ、静かに目を閉じたのだ。
それがどれほど苦しい決断だったかを、誰よりも知っていた。
だからこそ、許されぬ禁を破る。
「この命をもって、あなたの魂を繋ぎましょう」
「主、共に生きます。」
震える手で、崩れかけた子の額に触れた。
柔らかな白色の光が生まれ、それはやがて神殿全体を包みこんだ。
「来世でも、あなたがあなたでいられるように」
「どうか――もう一度、光となって」
神の法に背いたその祈りは、やがて魂の糸を紡ぎはじめた。
レフ=レイアスの胸に宿った、わずかな輝きが応えるように脈を打ち、強く光った。
血に染まった神殿の天が割れる。
空へ昇る光の柱が、星々の流れを変えていく。
その中心で、黎光の母神エリュアが愛し子の白い魂を名残惜しげに抱きしめながら、ただ静かに空へ消えていった。
ーー誰も知らない。
神界から消えたその光が、地の果てで再び命を灯すことを。
その光、命に変えて星となる。
0
あなたにおすすめの小説
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
偽りの聖者と泥の国
篠雨
BL
「感謝すら忘れた者たちに、明日を語る資格はない」
自らの都合で聖王セシルを追放し、異世界から新たな「勇者」を召喚したアドレアン聖王国。
しかし、その身勝手な選択が、国を、大地を、そして人々の心を根底から腐らせていく。
壊れゆく少年勇者と、彼を歪に愛した騎士。
二人の執着が交わったとき、聖王国は二度と再生不能な終焉へと突き進む。
裏切り者たちには、因果応報という名の、容赦なき報いが下る。
これは、傲慢な国が崩壊するまでの、無慈悲な記録。
-----------------------------------------
『嘘つき王と影の騎士』から引き続き読んでくださる皆様へ
この物語は、セシルを虐げた者たちが、ただただ因果応報の末路を辿るだけの物語です。
本編に救いはありません。
セシルたちのその後が気になるという方は、本編は飛ばして、最終話の後に掲載する「閑話」のみをお読みいただくことをお勧めいたします。
本作は『嘘つき王と影の騎士』の続編となりますが、前作をお読みでない方でも一つの物語としてお楽しみいただけます。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる