恋ってウソだろ?!

chatetlune

文字の大きさ
上 下
47 / 87

恋ってウソだろ?! 47

しおりを挟む
『御曹司もいろいろいますからね~、こっそり会社のお金で豪遊したりするんですか?』
『しません』
 司会者の冗談半分の問いかけにもにこりともせずにきっぱりと答える。
『ですよね~。啓應を主席で卒業!』
『周りが勉強しなかっただけじゃないですか?』
 こんな男にしれっと口にされるとカチンとくる輩は多そうだ。
『なるほど~、しかもこのルックスですからね~、言い寄る女を切っては捨て切っては捨て……』
『寄ってきませんよ、仏頂面なんで』
『何をおっしゃる、女子アナの間では人気NO.1、その理由が、なびかないところ? ハハ。で、古谷さんの話だと、土曜日、遅刻して古谷さんに怒鳴られたとか?』
『いや、先週末、金土日と宮崎でファンイベントがありまして、古谷さんもいらしたんですが、土曜日、遅刻じゃなくて、ギリで間に合ったんです。それに、古谷さんは怒鳴ったりしませんよ』
 淡々とトークが続いていく。
「……ウソ……トモ?」
 佐々木はようやく画面の中の男を見つめながらその名前を呟いた。
「あーん、もう始まっちゃってるぅ!」
 そこへバタバタとキッチンから直子が駆け込んできた。
『そうだ、肝心なことを忘れてました! 昨年に引き続き、三冠王、おめでとうございます!』
 三冠王?
 急速に佐々木は身体が冷えていくような思いがした。
『ありがとうございます』
『推定年棒五億円とか』
『推定です』
『聞くところによると、その程度のはした金、ぜーんぶいろんな慈善団体に寄付されているとか』
『一部です。それで生活しているんで』
 テレビの画面では司会者との軽快なやりとりが続いている。
 あかん、こいつはやばいで。
 佐々木は茫然自失の状態で画面を見つめていた。
 こいつは………あかん………。
「野球の選手って、割とぬぼーっとダサーって雰囲気の人、多いけど、やっぱ、沢村っちは別格でカッコいいよね」
 唐突に直子の呟きが佐々木の耳に入ってくる。
「ナオちゃん、この人のファン? え、この人誰やって?」
 佐々木はとりあえず直子に聞いてみた。
「そっか、やっぱ知らないんだ? 佐々木ちゃん、野球とか興味ないもんね~。関西タイガースの沢村智弘。名前くらい聞いたことない?」
「沢村智弘………やて……?!」
 いくら世間を知らない佐々木であれ、名前だけは知っていた。
「いや、名前は………知ってるけど………確か、啓應で活躍して、鳴り物入りでプロ野球に入った逸材とか何とか、あれって何年前だっけ?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私が王女です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:30,856pt お気に入り:329

欲しいのは惚れ薬、私が飲むんです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,356pt お気に入り:13

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:17,440pt お気に入り:3,349

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:15,499pt お気に入り:7,991

グローリーホール(ラッキーホール)寝取らせ

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:32

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:3,129

精霊王の花嫁(完結)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:116

処理中です...