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邂逅編
七
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スマホの着信音が鳴り、目を開ける。
「うわっ!」
健吾の顔の目の前には、大口を開けたバケモノの顔があった。健吾達が突き刺した資材が支えとなっていたので、健吾は下敷きにならずに済んでいた。
「あのまま寝ちゃったのか・・・」
体を見ると、バケモノの血と思われる緑色の液体まみれだった。液体は乾いて、ほぼ固まっている。匂いは、あまり良いものではない。
スマホの着信音が鳴り止んだ。相手は職場先からだ。本来なら今日は勤務日である。もう出勤することはないかもれないが。
バケモノの下から抜け出し、立ち上がった。側には心結が寝ていた。
心結を抱きかかえようかと思ったが、自分の体を見やって止めた。バケモノの血で汚れすぎている。
健吾は、その場に座り込んだ。バケモノに目をやる。
全部夢だったら良かったのに。健吾は心の底からそう思った。心結という少女でなく、例えば、おじさんとかが相手だったら自分は見捨てただろうか――。
「あ、おはよう」
心結も目が覚めた。
「おう、おはよう」
「いつ起きたの?」
「おれもちょうど起きたとこだよ」
心結もバケモノの屍体を見た。
「うわっ、改めて見るとエグいね・・・」
「だな」
「・・・とりあえず、玲奈とウォルの仇がとれた・・・」
玲奈とはおそらく母親のことだろう。
「健吾、コイツの血だらけだね」
「一回家帰るか。さすがにこれだと出歩けん」
「だね。家に戻るの意外と早かったね」
「はは・・・」
シャワーを浴び、血を洗い落とす。
体中が打ち身やら筋肉痛やらで痛かった。こんなに体を痛めたことは、仕事でもなかった。左腕には、バケモノに切られた傷もある。上腕部に長く細い切り傷だ。シャワーが染みる。
浴室を出て、鏡を見た。血は落ちたが、ひどく疲れた顔だった。
居間に戻ると、心結がソファにうつ伏せで寝ていた。爆睡である。
テレビを点けると、バケモノ関連のニュースばかりだった。その内、あの屍体も見つかって、更に騒動は大きくなるだろう。なんせ、地球では見ることのできないバケモノだ。
というかあいつらは、何なんだ?宇宙人?考えても分かることではなかった。
頭がボーッとしている。また睡魔が襲ってきた。健吾は顔を机に突っ伏した。
目を覚ますと、もう夕方だった。18時。
心結は、起きていた。外の景色を眺めている。シャワーは浴びたようだ。
「寝過ぎた」
「もう夕方だねー。でもだいぶ疲れはとれた!」
「出発しないとだな」
「今度こそ、ね」
「もう当分奴らも来ないだろ。心結の話じゃ、あのバケモノともう一人灰色の男だっけか。なんか今はいないっぽいし」
「そうね。でもあの男がいつまた来るかわかんないし、早く移動はした方がいいと思う」
「行くか」
今度こそしばらく戻らないであろう家に別れを告げ、バス停へと向かった。
バスが来るまで十分程あった。
二人共、特に何も話さなかった。昨日起こったことが強烈すぎて、頭がボーっとしている。
そんな健吾の頭が切り替わった。道の向こうから一人の人影。女性である。それもとびきり綺麗な。
肌は小麦色で黒髪のポニーテール。服はなんとも奇抜な赤色の露出の高いものだった。目は鋭いが、その鋭さが綺麗な顔を映えさせる。
思わず健吾は見入った。
その様子を見てた心結が、健吾を肘で突く。
「ちょっと!見過ぎだよ。失礼だよ」
「お、おう、そだな。でも見ろよ。おれあんな綺麗な人見たことないぞ」
その美女はゆっくりバス停へと向かってきた。健吾と心結を交互に見ている。そして、微笑みを向けてきた。
健吾はその笑顔に嬉しくなって、思わず話しかけてしまった。
「あ、あはは。こんばんはー。いやー、まいったな」
心結がすごい顔で健吾を見たが、健吾は気にしない。すると美女が笑顔で口を開いた。
「おぬしがツカハラシユウじゃな」
その言葉に、二人が固まった。
「え、塚原・・・何でお姉さんが知ってるの?」
「男、お前に用はない。去ね」
美女の右手がいきなり燃えた。いや、燃えたのではない。炎を出したのだ。その炎を健吾めがけて放った。
「いい!」
咄嗟に健吾は避けたが、炎をかすめた。
「健吾!とりあえず逃げよう!」
二人は走ったがすぐに追いつかれる。昨日のバケモノのようなのろのろした動きは一切ない。
美女は追いついた勢いで、健吾の背中を蹴とばした。健吾が吹き飛ばされる。
「健吾!」
激痛でもだえた。痛すぎる。心結が走り寄ってきた。
「大丈夫!?」
美女が歩いて近づいてくる。まったく逃げられそうにない。
「ちょ、どゆこと!?何!?あのお姉さん!」
「わかんないけど、あいつらの仲間だよ!」
「昨日、あんなに戦ったばかりだぞ!こういうのって普通もうちょうい間が空くもんだろう!」
「私に言われても知らないわよ!」
「こんなの聞いてないぞ!心結!」
「だから私に言わないでよ!バカ!」
「何を言い合っておる?」
美女が目の前まで来た。
「ちょ!待った!お姉さん!ひとまず話し合おうじゃないか!」
「うるさい男じゃ」
美女の右手からまた炎が出た。
と、心結が健吾の前に立ちふさがった。
「健吾は、殺しちゃダメ!確かにうるさいけど!」
「ふむ、シユウ、それでどうする?」
「あなたを倒すわ」
「ほう、それは面白い」
美女が心結を燃やした。
「心結!」
「熱い!」
心結がしゃがみこむ。
「少しどいておれ」
心結を蹴り飛ばす。火だるまになって、心結が転がって行った。
「ちょ!お姉さん、やり過ぎだぜ」
拳銃を抜いた。狙うは頭。
「ごめん、お姉さん」
ラスト一発だ。打った。
しかし、美女はなんと首を曲げて銃弾を避けた。
「へ?」
「なんじゃ、今のは・・・?当たってたらヤバかったのう」
美女も驚いていたが、健吾の驚きはそれの比べものにならない。
銃弾を避けるとか反則すぎる。健吾にもはや為す術はなかった。力を抜き、俯く。
「ちくしょう!どうにでもなれってんだ!」
「では、今度こそ死ね」
例の如く、炎を出す。
死んだ。そう思った瞬間、大きな影が美女が突き飛ばした。
獣になった心結だ。
心結は、体を美女に向けながら、健吾に目を合わせてきた。
「今の内に逃げろってか」
心結が頷く。
「わかった。死ぬなよ、心結」
健吾は走った。できることは、心結が死なないことを祈ることばかりであった。
「うわっ!」
健吾の顔の目の前には、大口を開けたバケモノの顔があった。健吾達が突き刺した資材が支えとなっていたので、健吾は下敷きにならずに済んでいた。
「あのまま寝ちゃったのか・・・」
体を見ると、バケモノの血と思われる緑色の液体まみれだった。液体は乾いて、ほぼ固まっている。匂いは、あまり良いものではない。
スマホの着信音が鳴り止んだ。相手は職場先からだ。本来なら今日は勤務日である。もう出勤することはないかもれないが。
バケモノの下から抜け出し、立ち上がった。側には心結が寝ていた。
心結を抱きかかえようかと思ったが、自分の体を見やって止めた。バケモノの血で汚れすぎている。
健吾は、その場に座り込んだ。バケモノに目をやる。
全部夢だったら良かったのに。健吾は心の底からそう思った。心結という少女でなく、例えば、おじさんとかが相手だったら自分は見捨てただろうか――。
「あ、おはよう」
心結も目が覚めた。
「おう、おはよう」
「いつ起きたの?」
「おれもちょうど起きたとこだよ」
心結もバケモノの屍体を見た。
「うわっ、改めて見るとエグいね・・・」
「だな」
「・・・とりあえず、玲奈とウォルの仇がとれた・・・」
玲奈とはおそらく母親のことだろう。
「健吾、コイツの血だらけだね」
「一回家帰るか。さすがにこれだと出歩けん」
「だね。家に戻るの意外と早かったね」
「はは・・・」
シャワーを浴び、血を洗い落とす。
体中が打ち身やら筋肉痛やらで痛かった。こんなに体を痛めたことは、仕事でもなかった。左腕には、バケモノに切られた傷もある。上腕部に長く細い切り傷だ。シャワーが染みる。
浴室を出て、鏡を見た。血は落ちたが、ひどく疲れた顔だった。
居間に戻ると、心結がソファにうつ伏せで寝ていた。爆睡である。
テレビを点けると、バケモノ関連のニュースばかりだった。その内、あの屍体も見つかって、更に騒動は大きくなるだろう。なんせ、地球では見ることのできないバケモノだ。
というかあいつらは、何なんだ?宇宙人?考えても分かることではなかった。
頭がボーッとしている。また睡魔が襲ってきた。健吾は顔を机に突っ伏した。
目を覚ますと、もう夕方だった。18時。
心結は、起きていた。外の景色を眺めている。シャワーは浴びたようだ。
「寝過ぎた」
「もう夕方だねー。でもだいぶ疲れはとれた!」
「出発しないとだな」
「今度こそ、ね」
「もう当分奴らも来ないだろ。心結の話じゃ、あのバケモノともう一人灰色の男だっけか。なんか今はいないっぽいし」
「そうね。でもあの男がいつまた来るかわかんないし、早く移動はした方がいいと思う」
「行くか」
今度こそしばらく戻らないであろう家に別れを告げ、バス停へと向かった。
バスが来るまで十分程あった。
二人共、特に何も話さなかった。昨日起こったことが強烈すぎて、頭がボーっとしている。
そんな健吾の頭が切り替わった。道の向こうから一人の人影。女性である。それもとびきり綺麗な。
肌は小麦色で黒髪のポニーテール。服はなんとも奇抜な赤色の露出の高いものだった。目は鋭いが、その鋭さが綺麗な顔を映えさせる。
思わず健吾は見入った。
その様子を見てた心結が、健吾を肘で突く。
「ちょっと!見過ぎだよ。失礼だよ」
「お、おう、そだな。でも見ろよ。おれあんな綺麗な人見たことないぞ」
その美女はゆっくりバス停へと向かってきた。健吾と心結を交互に見ている。そして、微笑みを向けてきた。
健吾はその笑顔に嬉しくなって、思わず話しかけてしまった。
「あ、あはは。こんばんはー。いやー、まいったな」
心結がすごい顔で健吾を見たが、健吾は気にしない。すると美女が笑顔で口を開いた。
「おぬしがツカハラシユウじゃな」
その言葉に、二人が固まった。
「え、塚原・・・何でお姉さんが知ってるの?」
「男、お前に用はない。去ね」
美女の右手がいきなり燃えた。いや、燃えたのではない。炎を出したのだ。その炎を健吾めがけて放った。
「いい!」
咄嗟に健吾は避けたが、炎をかすめた。
「健吾!とりあえず逃げよう!」
二人は走ったがすぐに追いつかれる。昨日のバケモノのようなのろのろした動きは一切ない。
美女は追いついた勢いで、健吾の背中を蹴とばした。健吾が吹き飛ばされる。
「健吾!」
激痛でもだえた。痛すぎる。心結が走り寄ってきた。
「大丈夫!?」
美女が歩いて近づいてくる。まったく逃げられそうにない。
「ちょ、どゆこと!?何!?あのお姉さん!」
「わかんないけど、あいつらの仲間だよ!」
「昨日、あんなに戦ったばかりだぞ!こういうのって普通もうちょうい間が空くもんだろう!」
「私に言われても知らないわよ!」
「こんなの聞いてないぞ!心結!」
「だから私に言わないでよ!バカ!」
「何を言い合っておる?」
美女が目の前まで来た。
「ちょ!待った!お姉さん!ひとまず話し合おうじゃないか!」
「うるさい男じゃ」
美女の右手からまた炎が出た。
と、心結が健吾の前に立ちふさがった。
「健吾は、殺しちゃダメ!確かにうるさいけど!」
「ふむ、シユウ、それでどうする?」
「あなたを倒すわ」
「ほう、それは面白い」
美女が心結を燃やした。
「心結!」
「熱い!」
心結がしゃがみこむ。
「少しどいておれ」
心結を蹴り飛ばす。火だるまになって、心結が転がって行った。
「ちょ!お姉さん、やり過ぎだぜ」
拳銃を抜いた。狙うは頭。
「ごめん、お姉さん」
ラスト一発だ。打った。
しかし、美女はなんと首を曲げて銃弾を避けた。
「へ?」
「なんじゃ、今のは・・・?当たってたらヤバかったのう」
美女も驚いていたが、健吾の驚きはそれの比べものにならない。
銃弾を避けるとか反則すぎる。健吾にもはや為す術はなかった。力を抜き、俯く。
「ちくしょう!どうにでもなれってんだ!」
「では、今度こそ死ね」
例の如く、炎を出す。
死んだ。そう思った瞬間、大きな影が美女が突き飛ばした。
獣になった心結だ。
心結は、体を美女に向けながら、健吾に目を合わせてきた。
「今の内に逃げろってか」
心結が頷く。
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