主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

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第14話

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テーグ村から現在勇者たちが拠点としている街ラスイーガまで、約40キロ離れており馬などの移動手段を持ち合わせていないゼンとセンサザールはその都度小さな村々に泊まらせてもらい休息をとりながら目的地を目指していた。
そして、ラスイーガまで残り10キロ弱にさしかかり、ミルダ村と呼ばれるテーグ村と同規模の小さな村の老夫婦に泊めてもらった次の日の早朝。
ゼンとセンサザールは老夫婦に旅立ちの挨拶と謝意を伝えると、老婦に小包を渡される。

「じゃあ、気をつけて行きなさい。それとこれ、干し肉と精白パン。お腹が空いたら食べなさい」

「世話になった。ありがたくいただく・・。」

「叔父様、叔母様一食一飯の恩があるなも関わらず携帯食まで頂いて、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます」

センサザールは、自身の赤茶色の髪がふわりと浮くほど勢いよく頭を下げる。

「気にしなくていいのよ、私たちがしたくてしただけなのだから、若い人がこの村を訪れてくれるだけで嬉しいのよ」

老婦はそう言いセンサザールに携帯食を渡しながら手を握る。
深い皺が入った、枯れ木のような渇いた手であったが、センサザールは居心地の良い暖かさを感じる。

「では、俺たちは出発させてもらう。割に合わないと思うが、せめてもの気持ちだ、受け取ってくれ」

傀儡はそう言うと、金貨を一枚老婦に渡し、踵を返して進み始めるのであった。

「こ、こんな大金貰えないわよ・・!?」

「いいんですよ!あんな態度ですけど、二人にはお世話になったからお礼がしたいんですよ。パーっと使ってやって下さい、本当にお世話になりました・・。」

センサザールは微笑みながらそう言い、無名残惜しいがゼンを追いかけるために老夫婦に背を向ける。

「あー、あんた最近ここいらで族らしき者たちがよく出没しているらしいんだよ。とくにあんたは可愛いんだから道中気をつけるんだよ?」

別れ際に老夫が冗談混じりにそう忠告する。

「ふふっ叔父さんありがとう、気をつけるわ」

「何を言っているんですかお父さん。この子はあの坊やが守ってくれるわよ・・。」

微笑ましく笑う老夫婦は二人のことをそういった目で見ていたようだ。

「そ、そういう関係じゃないですよっ!」

と、センサザールは顔を真っ赤にして否定するのであった。


ーーーーー

「ねぇ、もうそろそろ休憩しない?もう足がクタクタだわ」

あれからどれだけ歩いたのだろうか。
気づけば日は傾き夕闇が今か、今かと闇夜を待ち望んでいるかのようであった。
センサザールの言葉に、数歩先にいたゼンが歩みを止め振り返る。

「我慢しろ、あと2キロ程度でラスイーガに辿り着ける。今日中には街の方まで行っておきたいのだが・・。」

「そんなこと言ったって私の足が悲鳴を上げているのよ!もうこれ以上は進めないわ」

センサザールは何故か誇らしげに言うと、駄々をこねた子供のように膝を曲げてその場に留まり動こうとしない。

表情は変わらないが困惑しているのか、頬に手を当てて何やら思案しているようであった。

「仕方ない・・。夜道の移動は集中力を欠き、困難を極める。今日は野営して、早朝に出発するとしよう・・。」

しばらくして、センサザールの態度に折れたゼンはそう言うと、雑木林の中へと入っていく。
突然の行動にセンサザールは慌てる。

「ちょっとどこに行くのよ!?」

「寝床を作る。こんな固くて冷える地面に寝ても体力は回復しない。ただでさえ女は身体が冷えやすいと聞くしな」

「あら随分と優しいじゃない?」

センサザールはゼンの言葉にニマニマとからかうように笑う。

「女に優しくしろと、ライナに教えてもらったからな。性別上お前・・センサザールも女だからな。ただそれだけのことだ」

センサザールの言葉を跳ね返しながら、ゼンは雑木林の中へと消えていった。

「一言余計なのよ・・。」

センサザールはそう言うと、頬を膨らませ苛立ちを露わにした。


ーーーーー

数十分程時間が経ち、日は完全落ち闇夜が喜びを上げているかのように夜風を強く吹かせる。
ガサガサと辺りの草木が揺れるたびにセンサザールは肩を震わす。
一人でいる不安と、そもそもセンサザールは魔族に関わらずアンデッドやゴーストといった種類が苦手なのである。
夜行性である彼らは、聖職者プリースト白魔術士ホワイト・ウィザードなどの浄化魔法でないと効果がなく、見た目も受け付けないという、ある意味天敵であるそれらには極力出くわしたくないのである。

「何をチンタラやっているのかしら。早く戻ってきなさいよ・・。」

ビクビクと辺りを見回しながらゼンの帰りを待つセンサザール。
恐怖から次第にイラつきが増すセンサザールはついゼンに対して悪態を吐いてしまう。

寒いわけではないがゼンが脱いだローブに身を包み、温もりを求めるようにローブを肌に擦り寄せて待っていると。

「おい!まだ見つかんねぇのかよ!?」

「大事な商品だ、丁重に扱えよ!」

と、粗野な物言いが奥の方から聞こえ、センサザールは咄嗟に木陰に隠れる。
男たちは焦りながら何かを探しているようであった。
男たちが走り去っていくのを確認して安堵の息を吐く。

「今のは何だったのかしら・・?」

「何でそんなところにいるんだ?」

安堵したセンサザールの前に音もなく現れたゼン。

「ひゃあああ~!驚かせないでよ!」

センサザールはいきなりのことで、情けない叫び声を上げてしまう。

「一つ聞きたいことが出来たのでこちらに戻ってきた」

センサザールはその言葉に眉を顰める。

「聞きたいこと?

どうせまた変なことに違いない、そう思っていたが・・。

「森の中に少女が倒れていた、その数百メートル先に見慣れない動物を連れた集団がいたのだが、どうすればいいか?」

そう言いゼンは自分の腕に抱き留めている少女をセンサザールに見せる。
少女は、黄金糖のような艶のある長い金髪の花顔という、とても愛らしい姿であった。
そして、天使のような美しい毛並みの翼・・。

「貴方って本当に面倒ごとに巻き込まれるわね・・。」

センサザールはそう言い、自分の顔を手で覆ってしまう。


ゼンが見つけた少女は、魔族の中でも希少種のと呼ばれる魔導支援に長けた種族である。
センサザールとは関わりがあまりないが、彼女もおそらく魔王軍であるのだろう・・。

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