16 / 43
第16話
しおりを挟む
数千年前、ボクたち天翼族は神の使いとして人間に崇拝されていた。
肩から生えた大翼に、人智を超えた回復魔導などがその原因だったと思うが、人間と天翼族との良好な関係は数百年続いていた。
だが、その関係もある出来事で破綻してしまう。
天翼族は肉体に魔素を取り込みエネルギーを循環させる特徴があり、何よりも死後魔石として朽ち果てることなどから、魔族であることを人間たちに知られてしまったのである。
人類の敵である魔物や魔族の類だとわかった人間たちは手のひらを返し、裏切り者と称してボクたち天翼族に刃を向けた。
そこからは、迫害・虐殺など、各地で天翼族の魔女狩りが起こり、天翼族は大幅に減少したのであった。
魔族からも人間側についていた天翼族は目の敵、人間の扱いと変わらない仕打ちを受けた天翼族は、僻地でひっそりと暮らすことになった。
だからこそ、天翼族はどちらにもつかない数少ない中立な立場を望む種族になったのだ。
だが、魔族と人類の争いが激化する中で、天翼族は貴重な回復・支援職として注目され始め、天翼族を取り込もうと両者が歩み寄って来たのだ。
というのも、天翼族は神話級の魔法、高レベルの支援魔術を使うことができる、魔導関係なら右に出る者がいないほど優れた種族であるのだ。
そのことから、天翼族を懐柔しようとした両者であったが、昔の因縁を天翼族は忘れなどしない。
天翼族は両者の誘いを断り、中立の関係を続けると断言。しかしそれが悪い方向に傾き出す。
次第に両者の考えは、自軍に取り込む方法ではなく、敵軍に寝返らないようにという思考になっていき、両軍の天翼族の侵攻が始まったのだ。
その侵攻によって天翼族の長は殺され、四天王であるビュティニアが天翼族の長となり、魔王軍の軍門に下ることになったのであった。
ーーーーー
「というのが、魔族の間で話されている天翼族の話ですが、実際は全然違うです」
リーネは魔王軍に入った経緯を大まかに話した後にそう話を切り出す。
「天翼族は魔族からあまりいい印象がないです。だから別種族の魔族から差別されたり、嫌がらせを受けたりしたです。
その中でも、ビュティニアに忠誠を誓わない者には、この魔呪式が施され抵抗も出来ず暴力を振るわれたりもしたです」
そして、リーネは堪えきれずに涙をボロボロとこぼす。
「それに、ビュティニアはボクの父さん、天翼族の長を殺した人物だったです。ボクをイジめながらそう自慢げに・・ッ!?」
それ以上言葉を続けられるずにリーネは俯く。
センサザールはビュティニアと仕事上の関係しかないが、そんなに表裏の激しい性格ではなかったと考えを巡らせていると、ゼン怒りで身体を震わせていた。
「・・ソイツら最低だな」
感情を露わにするゼンは一言そういうと自身の拳を強く握り込んだのであった。
肩から生えた大翼に、人智を超えた回復魔導などがその原因だったと思うが、人間と天翼族との良好な関係は数百年続いていた。
だが、その関係もある出来事で破綻してしまう。
天翼族は肉体に魔素を取り込みエネルギーを循環させる特徴があり、何よりも死後魔石として朽ち果てることなどから、魔族であることを人間たちに知られてしまったのである。
人類の敵である魔物や魔族の類だとわかった人間たちは手のひらを返し、裏切り者と称してボクたち天翼族に刃を向けた。
そこからは、迫害・虐殺など、各地で天翼族の魔女狩りが起こり、天翼族は大幅に減少したのであった。
魔族からも人間側についていた天翼族は目の敵、人間の扱いと変わらない仕打ちを受けた天翼族は、僻地でひっそりと暮らすことになった。
だからこそ、天翼族はどちらにもつかない数少ない中立な立場を望む種族になったのだ。
だが、魔族と人類の争いが激化する中で、天翼族は貴重な回復・支援職として注目され始め、天翼族を取り込もうと両者が歩み寄って来たのだ。
というのも、天翼族は神話級の魔法、高レベルの支援魔術を使うことができる、魔導関係なら右に出る者がいないほど優れた種族であるのだ。
そのことから、天翼族を懐柔しようとした両者であったが、昔の因縁を天翼族は忘れなどしない。
天翼族は両者の誘いを断り、中立の関係を続けると断言。しかしそれが悪い方向に傾き出す。
次第に両者の考えは、自軍に取り込む方法ではなく、敵軍に寝返らないようにという思考になっていき、両軍の天翼族の侵攻が始まったのだ。
その侵攻によって天翼族の長は殺され、四天王であるビュティニアが天翼族の長となり、魔王軍の軍門に下ることになったのであった。
ーーーーー
「というのが、魔族の間で話されている天翼族の話ですが、実際は全然違うです」
リーネは魔王軍に入った経緯を大まかに話した後にそう話を切り出す。
「天翼族は魔族からあまりいい印象がないです。だから別種族の魔族から差別されたり、嫌がらせを受けたりしたです。
その中でも、ビュティニアに忠誠を誓わない者には、この魔呪式が施され抵抗も出来ず暴力を振るわれたりもしたです」
そして、リーネは堪えきれずに涙をボロボロとこぼす。
「それに、ビュティニアはボクの父さん、天翼族の長を殺した人物だったです。ボクをイジめながらそう自慢げに・・ッ!?」
それ以上言葉を続けられるずにリーネは俯く。
センサザールはビュティニアと仕事上の関係しかないが、そんなに表裏の激しい性格ではなかったと考えを巡らせていると、ゼン怒りで身体を震わせていた。
「・・ソイツら最低だな」
感情を露わにするゼンは一言そういうと自身の拳を強く握り込んだのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる