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第31話
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「ボクもゼンさんの旅に連れて行って欲しいです・・。」
リーネのその真っ直ぐな言葉にゼンは目を瞬かせるが、すぐにいつもの無表情になり、
「俺の旅の目的は知っているか?」
「それは分からないですが・・。」
「簡単に言えば復讐だ。一緒に来てもいいが楽しいものではないぞ」
ゼンは見定めるような視線でリーネを見る。
その言葉にリーネの表情が曇る。
自然とドルゴのことを思い出したのか、蒼白な顔に身体が僅かに震えているのを見る限り彼女の心の中で未だに払拭できないものがあるのだろう。
だが、リーネの決意は変わらなかった。
「それでもついて行っていいのならボクは行きたいです」
「どうしてだ?もう戦う必要も誰かを憎む必要もないはずだ。それにリーネには復讐する光景を見て欲しくないというのも俺の中にあるんだが・・。」
この数日でゼンのリーネ対する親心のようなものが働き、ゼンはリーネを心配する声が出てしまう。
リーネはその言葉を聞き柔和な笑みを浮かべる。
その笑顔はさながら天使のようであった。
「ゼンさんはボクたちみたいな境遇の者を救ってくれたです。差別や迫害などを気にもせず、ボクたちのことを助けてくれたです。ボクはそんな人になりたい、困っている人を助けられるような人に・・、そしてゼンさんの力になりたい・・それじゃ駄目です?」
ゼンの手を握りしめていたリーネの手は震えていた。
ゼンはしばらくの間思案すると、
「わかった、好きにしろ・・。」
と、ため息混じりにいったのであった。
「あら、私は反対だわ」
二人の会話に割り込んで来たのは、茹で蛸のように顔を赤くしたセンサザールであった。
この数時間の間にどれだけ麦芽酒を呑んだのか、センサザールは虚ろな目でゼンを睨む。
「あのれぇ今回みたいな危険なことにリーネを巻き込めないでしょお!わらしと貴方らったら大丈夫よ、だって強いんだからアハハハ!」
「呑み過ぎですわセンサザール。淑女がそんなはしたない笑い声を出しては品位が落ちますわ・・。」
豪快に笑うセンサザールに引いた目で見るビュティニア。
「いいのお、コイツはわらしのこと女としてなんかみちゃあーいなのいよ!」
ぶんぶんと手を勢いよく振り否定するセンサザールは大分酔っているらしい・・。
振った手の勢いだけで、足元をふらつかせる。
「コイツはねぇ、女心っていうのをわかってねえーのよ、なあゼン、のんとかいってみろー!?」
「セ、センサザール落ち着いて・・。」
「リーネェこんな男にれんぼしたって後悔するだけよぉ・・だってねぇこの男は・・おとこは・・なんだっけえ?」
「センサザールさん!な、何言っているんですか!?」
センサザールの言葉に一気に顔を赤くするリーネ。
センサザールの目は完全に据わっており、自分が発した言葉もよくわかってないだろう。
「あ、ああ!私センサザールさんの話聞きそびれちゃったから聞きたいなあー、ねぇミランダ!」
「そ、そうね、あっちで話してほしいなぁ!」
「しがたないわねぇ、とくべつに話してあげるわ・・!」
そんな姿を見かねたミランダとマイヤがセンサザールの背中を押しながら、千鳥足のセンサザールの気を逸らす。
ゼンはその姿を呆れた目で追っていると、リーネが咳払いをし、自然とそちらに目が移る。
「邪魔が入りましたけど、ボクはゼンさんについて行くですから、じゃあこれで・・。」
「お、おい・・。」
リーネは頬を朱に染めたまま、ゼンの静止も聞かずにその場を後にする。
「はあ、いつここを出るかも言ってないのに何でどっかに行ったんだ?」
「さあ?女心を理解しないと見限られてしまいますわよ?」
ビュティニアは呆れながら紅茶を啜る。
「それとリーネと付き合いたくなったら、しっかりセンサザールとは別れて貰いますわよ?二股は私が許さなくてよ?」
「何を言っているんだ?俺とセンサザールは付き合ってなどいないぞ?」
ゼンが頭上にハテナを浮かべながらそう言うと、ビュティニアは驚きのあまりティーカップを床に落としてしまう。
「あれで付き合ってないんですの?」
耳に残る、カップが割れる音ともに聞こえたビュティニアの声は実に間の抜けた声であった。
リーネのその真っ直ぐな言葉にゼンは目を瞬かせるが、すぐにいつもの無表情になり、
「俺の旅の目的は知っているか?」
「それは分からないですが・・。」
「簡単に言えば復讐だ。一緒に来てもいいが楽しいものではないぞ」
ゼンは見定めるような視線でリーネを見る。
その言葉にリーネの表情が曇る。
自然とドルゴのことを思い出したのか、蒼白な顔に身体が僅かに震えているのを見る限り彼女の心の中で未だに払拭できないものがあるのだろう。
だが、リーネの決意は変わらなかった。
「それでもついて行っていいのならボクは行きたいです」
「どうしてだ?もう戦う必要も誰かを憎む必要もないはずだ。それにリーネには復讐する光景を見て欲しくないというのも俺の中にあるんだが・・。」
この数日でゼンのリーネ対する親心のようなものが働き、ゼンはリーネを心配する声が出てしまう。
リーネはその言葉を聞き柔和な笑みを浮かべる。
その笑顔はさながら天使のようであった。
「ゼンさんはボクたちみたいな境遇の者を救ってくれたです。差別や迫害などを気にもせず、ボクたちのことを助けてくれたです。ボクはそんな人になりたい、困っている人を助けられるような人に・・、そしてゼンさんの力になりたい・・それじゃ駄目です?」
ゼンの手を握りしめていたリーネの手は震えていた。
ゼンはしばらくの間思案すると、
「わかった、好きにしろ・・。」
と、ため息混じりにいったのであった。
「あら、私は反対だわ」
二人の会話に割り込んで来たのは、茹で蛸のように顔を赤くしたセンサザールであった。
この数時間の間にどれだけ麦芽酒を呑んだのか、センサザールは虚ろな目でゼンを睨む。
「あのれぇ今回みたいな危険なことにリーネを巻き込めないでしょお!わらしと貴方らったら大丈夫よ、だって強いんだからアハハハ!」
「呑み過ぎですわセンサザール。淑女がそんなはしたない笑い声を出しては品位が落ちますわ・・。」
豪快に笑うセンサザールに引いた目で見るビュティニア。
「いいのお、コイツはわらしのこと女としてなんかみちゃあーいなのいよ!」
ぶんぶんと手を勢いよく振り否定するセンサザールは大分酔っているらしい・・。
振った手の勢いだけで、足元をふらつかせる。
「コイツはねぇ、女心っていうのをわかってねえーのよ、なあゼン、のんとかいってみろー!?」
「セ、センサザール落ち着いて・・。」
「リーネェこんな男にれんぼしたって後悔するだけよぉ・・だってねぇこの男は・・おとこは・・なんだっけえ?」
「センサザールさん!な、何言っているんですか!?」
センサザールの言葉に一気に顔を赤くするリーネ。
センサザールの目は完全に据わっており、自分が発した言葉もよくわかってないだろう。
「あ、ああ!私センサザールさんの話聞きそびれちゃったから聞きたいなあー、ねぇミランダ!」
「そ、そうね、あっちで話してほしいなぁ!」
「しがたないわねぇ、とくべつに話してあげるわ・・!」
そんな姿を見かねたミランダとマイヤがセンサザールの背中を押しながら、千鳥足のセンサザールの気を逸らす。
ゼンはその姿を呆れた目で追っていると、リーネが咳払いをし、自然とそちらに目が移る。
「邪魔が入りましたけど、ボクはゼンさんについて行くですから、じゃあこれで・・。」
「お、おい・・。」
リーネは頬を朱に染めたまま、ゼンの静止も聞かずにその場を後にする。
「はあ、いつここを出るかも言ってないのに何でどっかに行ったんだ?」
「さあ?女心を理解しないと見限られてしまいますわよ?」
ビュティニアは呆れながら紅茶を啜る。
「それとリーネと付き合いたくなったら、しっかりセンサザールとは別れて貰いますわよ?二股は私が許さなくてよ?」
「何を言っているんだ?俺とセンサザールは付き合ってなどいないぞ?」
ゼンが頭上にハテナを浮かべながらそう言うと、ビュティニアは驚きのあまりティーカップを床に落としてしまう。
「あれで付き合ってないんですの?」
耳に残る、カップが割れる音ともに聞こえたビュティニアの声は実に間の抜けた声であった。
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