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第30話
しおりを挟む日が昇りかけた明朝にゼンとセンサザールが空間跳躍を使い新たな天翼族の里に帰ってきたのだったが、その背後から現れたのは魔王軍に囚われていた天翼族たちであった。
その中にはミランダとマイヤの両親もおり、二人は飛びつくように両親の側まで駆け寄る。
長い間の魔王軍の呪縛から解放された天翼族たちは、喜び日常が返ってきたことに涙した。と、同時にゼンとセンサザールに対し感謝の意を示すためなのか、単にどんちゃん騒ぎがしたいのか謎だったが、宴が開かれることになったのである。
センサザールが乗り気になったためにゼンも巻き込まれて宴が日中から開かれることになったのである。
ーーーーー
「私にとってはね、部隊長や軍団幹部なんて紙切れ同然なのよ、なんていったって私は魔王直属の幹部であり、四天王!
ゼンと私が手を組めば鬼に金棒、貴方たちのご両親を助けるなんて朝飯前だったわ!」
麦芽酒が入っているためか、センサザールは天翼族の子供を集め数時間前の囚われた天翼族を救出した話を大っぴらに話ていた。
頬が微かに赤み帯びて、大声で自身の武勇伝を語るセンサザールに子供たちは目を輝かせ、その話を聴いていた。
「セーサちゃん凄い!」
「それで、それで・・!」
食い気味でセンサザールの言葉を待つ様子を遠目から見て、ビュティニアは微笑みながら隣の椅子に腰掛けているゼンに話しかける。
「センサザールは子供の扱いが上手ですわね。私も見習わないといけませんね・・。」
「精神年齢が一緒なだけだ、見習う必要はないさ。それよりも何故俺だけここに居なければならないんだ?」
ゼンはそう言い、なにか企んだ様子の笑みを浮かべるマイヤとミランダを見て不安になる。
「あら、族長の私から今後についての話がありましてよ、センサザールは魔術師として素晴らしいですが、お頭の方がからっきしなので貴方にご相談をと思った次第ですわ」
騒がしい宴の時でも紅茶を嗜むビュティニアにゼンは訝しげな目を向ける。
「今後の話?ならなぜ他に代表の大人がいないんだ?この二人がとは言わないよな?」
ゼンはそう言い、ミランダとマイヤを一瞥する。
この二人の齢は多く見積もっても14歳にも満たないだろう。
ゼンの言葉に口角を上げ妖艶な笑みを浮かべるビュティニア、
「本当に鋭いお方ね・・。」
「・・・ッ!?」
ビュティニアの言葉とともに背後から気配を感じ、ゼンは臨戦態勢を取る。
新手の刺客・ビュティニアは魔王軍を裏切っていなかった・センサザールと自分を引き離すための壮大な芝居・・など、ゼンの頭をそんなことが過ぎる。
異質なオーラを放つ背後の気配からゼンは身を翻し魔力糸をぐるりと背後の人物の首元に巻き付け威嚇する。
「動くな・・っ!?」
ゼンは鋭い視線で背後の人物を確認し、驚愕する。
「リ、リーネ?」
「・・えっ?・・えっ?」
何が起こったのか分からずテンパるリーネを見て、ゼンは自身の額に手を置きため息を吐く。
「ビュティニア、これはどいうことだ?」
ゼンは魔力糸を解きながらビュティニアにそう訊ねる。
「大事な義娘のわがままを聞いたまでですわ」
悪びれもない様子のビュティニアは、そう言い、紅茶を啜る。
ゼンがその光景に呆れた目を向けているとリーネがゼンの手を掴む。
その光景にミランダとマイヤは頬を紅葉させ、声にならない叫び声をあげる。
「ゼンさん、ボクの最後の我儘を聞いてもらえますか?」
リーネの語りかけるような言葉にゼンの鼓動が速くなる。
いや、その言葉ではなく彼女から感じる雰囲気というべきか・・。
ゼンの知っているリーネは半ベソをかき、泥だらけの子犬のような弱った少女という印象だったが、今目の前にいる少女は全くといっていいほど違った。
純白のドレスに首に下げたエメラルド色の大きな宝石に、天翼族の美貌を最大限活かした薄いメイクが彼女を大人びさせたのだろうか、それとも彼女の強い意志のようなものがそう思わせているのかゼンには理解出来なかったが、目の前の少女は明らかに今までのリーネではなかった。
「な、なんだ?言ってみろ・・。」
固唾を呑みリーネの言葉を待つゼン。
リーネは呼吸を整え、ゼンを見つめると、
「ボクもゼンさんの旅に連れていって欲しいです・・。」
頬を紅潮させ、そう言ったリーネの揺るぎない目にゼンは困惑してしまうのであった・・。
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