39 / 43
第39話
しおりを挟む
夕日が差し込む余地すらないほど多い茂った森の中にゼンたちは一時的に身を置いていた。
「ゼンさん具合はどうですか?」
大木に寄りかかって俯いていたゼンを心配したのは、天翼族のリーネであった。
だが、語りかけられたゼンはリーネの問いに答えず地面を見つめるばかりであった。
「ゼンさん・・。」
「リーネそっとしてあげてちょうだい。ゼンは今整理がつかずに混乱しているから」
リーネたちから少し離れた場所で嗚咽を繰り返しながらそう言ったのは竜化を解いたセンサザールであった。
センサザール曰く、竜化は精神が拒絶反応を起こし竜化を解くと激しい吐き気を催してしまうのだという。
竜化はハイエルフとして生きると誓ったセンサザールの意志に反く行為だかららしい。
リーネはどちらの心配をするべきか困っていると、センサザールが口元を拭いながら近づいてくる。
「リーネちょっと向こうで話さない?ゼンについて知らないことが多いでしょう。私が知っている範囲で貴方に教えてあげるわ」
センサザールはリーネに耳打ちをして、開けた場所を指指す。
リーネは静かに頷いてセンサザールについて行くのであった。
ーーーーー
「そういうことだったんですね・・。」
リーネはセンサザールの話を聞いて、視線を下に落としていた。
ゼンの正体と、復讐の目的を聞き自分の過去のしがらみと似ており悲観的になっていたからである。
リーネも大切な家族を失った悲しみを痛いほどわかっているので、ゼンの苦しみがどれほどものなのか理解しているからこそ、レイラの言動に苛立ちを覚える。
「それで私たちはこれからどうすればいいです?」
「正直なところ私はこれ以上あの女に執着しない方がいいと思っているわ。あの女がその気になれば精神的に弱ったゼンをどうかすることなんて容易いと思うわ」
センサザールは倒れた大木に腰掛けながら、そう推察する。
だが、魔力量やその流れを視認出来る魔眼を有するリーネにはその考えが不思議でならなかった。
「何でです?ボクは二人の全力を目の当たりにしてはないですが、魔眼で見た限り二人の魔力差は圧倒的にゼンさんが勝ってたです」
リーネの疑問にセンサザールはゆっくりと、首を振る。
「そういうことじゃないのよ。ゼンの身体は元々別の魂が入っていた器なの。つまりゼンの肉体には別の魂がまだあり、精神的に強い魂が表面的に現れているだけなの」
「・・つまり?」
「弱った精神力のゼンじゃいつ別の魂と変わってもおかしくないってことよ。あの状態じゃ一度入れ替わると二度と戻って来れないわ」
「そ、それは駄目です!?」
リーネが心許したのも恋心を抱いたのも傀儡師としてのノウトではなく、その傀儡のゼンであるからだ。
ゼンじゃなくなるのならばリーネが彼についていく理由もなくなる。
「ならしばらくは私たち二人で警戒するしかなさそうね。きっと今度はあの女から接触を図るだろうし・・。」
「わかったです・・。」
歯切れの悪い返事のリーネは足取り重くゼンのもとへと帰っていくのであった。
そんな腑に落ちない勇者との邂逅の最中ラスイーガに不穏な影が迫っていた。
ーーーーー
「部下の報告によるとこの街にセンサザールは向かっていると聞いたのですが・・。」
キョロキョロと辺りを見渡しそう言ったのは全身に灰色のローブを被せた四天王の一人、兎骸族のデルスターであった。
デルスターは人間の街であるラスイーガに訪れていたのである。
「まあ、来ていようがいまいが私からは逃れられないさ」
そう言った肥沃翼竜のブラウフラスはデルスターと打って変わりタキシードタイプの燕尾服を着こなしていた。
ブラウフラスは擬態魔法で角と尻尾を隠し、傍目から見れば落ち着いた雰囲気の執事といったところだろう。
そう言ったブラウフラスは胸ポケットからある物を取り出してデルスターに見せる。
「これは一体なんですか・・?」
デルスターが目にしたのは腐敗し黒ずんだ肉片であった。
ブラウフラスは大事そうに握りしめると、
「我が愚娘の耳の一部さ、エルフとして生きようとした愚娘の誇りを私が食いちぎったのさ。これは、肥沃翼竜独自のマーキングみたいなものでね、自分の唾液に魔力を混ぜて匂いや自身の魔力がする方角などを感知することが出来るんだよ」
「戒めのつもりで食い千切ったのが役に立ってしまったね」と、爽やかな笑みでそう言ったブラウフラスにデルスターの顔が引き攣る。
「ちょっとパパそんな気持ち悪い追跡魔法をお姉ちゃんに掛けていたの?」
デルスターが反応に困っていると、二人の前を歩く少女が振り返りながら怪訝な目をブラウフラスに向けていた。
その少女は、幼さの残る顔に硝子細工のように美しく丸い瞳に橙を基調とした華やかなドレスを纏った愛らしい人形のようであった。
彼女の名はメローテ、ブラウフラスの娘でありセンサザールの腹違いの妹である。
デルスターはそんな少女を見てブラウフラスに耳打ちをする。
「何故メローテ様をご同行なされたのですか?」
「久しぶりに会いたいと愛娘が言ったんだ。メローテの望むことは極力してやりたい、それが親の役目だからな」
見惚れた様子のブラウフラスは、そう言うと顎に手をやる。
「そ、そんな理由で・・!?」
デルスターの呆れた感情がため息となり、口から出てしまう。
「ちょっと二人とも歩くのが遅い!メローは早くお姉ちゃんに会いたいんだから急いでよね」
勝ち気な雰囲気のメローテは腰に手を当て不満を露わにする。
「はいはい、そんなに急いでも仕方ないだろ。居場所はわかっているんだから落ち着きなさい」
「落ち着けるわけないじゃない・・。」
メローテは身体を震わして俯く。
「メローテ様、だ、大丈夫ですか?」
「魔王軍を自ら辞めてくれたのよ!?やっと私のペットに出来るのよ!どれほどこの時を待ち続けていたか・・!」
恍惚とした表情で天を仰ぐメローテにデルスターは今までにない怖気を感じる。
その表情が、その思想が異常であることは言うまでもないだろう・・。
「メローテ、人前ではしたないじゃないか・・。」
ブラウフラスは辺りの通行人を見て目尻を下げて、メローテを注意する。
「この世界は魔族中心で動いているのよ?何故人の目を気にしないといけないの?」
メローテはそう言うと大きく息を吸い込む。
身体が一回りほど大きくなるほどに膨張したその身体から不穏な空気を感じ取ったデルスターは空中へと跳躍する。
瞬間、鳴り響く爆音にデルスターは耳を覆う。
咆哮にも似た魔力を凝縮した物を口から吐き出しながらメローテは自身を軸にぐるりと、一回転する。
メローテから波動のような魔力が止むと直径数百メートルが更地へと変わり果てていた。
デルスターはその所業に冷や汗をかく。
規格外の魔力攻撃と、常識のなさに開いた口が塞がらずにいた。
周りにいた住人は身体を切断され息絶えているものがほとんど、かろうじて生きていた者も虫の息であった。
「ほら、こんなにも簡単に死んじゃって羽虫となんら変わらないでしょう?ねえパパ!」
「ああ、そうだね」
メローテの言葉に笑顔で頷くブラウフラスは彼女の手を取り再び歩き出す。
「ねえパパ、もしお姉ちゃんが魔王軍を裏切っていたなら私が貰っていいんだよね?」
「ああ、好きにしなさい」
「やったー!!とっても楽しみだわ!」
「デルスターそんなところにいないで早く来い」
二人のそんなやりとりを見てデルスターはセンサザールに同情する。
デルスターは引き攣った笑顔のまま、ブラウフラスたちのもとに戻って行くのであった。
「ゼンさん具合はどうですか?」
大木に寄りかかって俯いていたゼンを心配したのは、天翼族のリーネであった。
だが、語りかけられたゼンはリーネの問いに答えず地面を見つめるばかりであった。
「ゼンさん・・。」
「リーネそっとしてあげてちょうだい。ゼンは今整理がつかずに混乱しているから」
リーネたちから少し離れた場所で嗚咽を繰り返しながらそう言ったのは竜化を解いたセンサザールであった。
センサザール曰く、竜化は精神が拒絶反応を起こし竜化を解くと激しい吐き気を催してしまうのだという。
竜化はハイエルフとして生きると誓ったセンサザールの意志に反く行為だかららしい。
リーネはどちらの心配をするべきか困っていると、センサザールが口元を拭いながら近づいてくる。
「リーネちょっと向こうで話さない?ゼンについて知らないことが多いでしょう。私が知っている範囲で貴方に教えてあげるわ」
センサザールはリーネに耳打ちをして、開けた場所を指指す。
リーネは静かに頷いてセンサザールについて行くのであった。
ーーーーー
「そういうことだったんですね・・。」
リーネはセンサザールの話を聞いて、視線を下に落としていた。
ゼンの正体と、復讐の目的を聞き自分の過去のしがらみと似ており悲観的になっていたからである。
リーネも大切な家族を失った悲しみを痛いほどわかっているので、ゼンの苦しみがどれほどものなのか理解しているからこそ、レイラの言動に苛立ちを覚える。
「それで私たちはこれからどうすればいいです?」
「正直なところ私はこれ以上あの女に執着しない方がいいと思っているわ。あの女がその気になれば精神的に弱ったゼンをどうかすることなんて容易いと思うわ」
センサザールは倒れた大木に腰掛けながら、そう推察する。
だが、魔力量やその流れを視認出来る魔眼を有するリーネにはその考えが不思議でならなかった。
「何でです?ボクは二人の全力を目の当たりにしてはないですが、魔眼で見た限り二人の魔力差は圧倒的にゼンさんが勝ってたです」
リーネの疑問にセンサザールはゆっくりと、首を振る。
「そういうことじゃないのよ。ゼンの身体は元々別の魂が入っていた器なの。つまりゼンの肉体には別の魂がまだあり、精神的に強い魂が表面的に現れているだけなの」
「・・つまり?」
「弱った精神力のゼンじゃいつ別の魂と変わってもおかしくないってことよ。あの状態じゃ一度入れ替わると二度と戻って来れないわ」
「そ、それは駄目です!?」
リーネが心許したのも恋心を抱いたのも傀儡師としてのノウトではなく、その傀儡のゼンであるからだ。
ゼンじゃなくなるのならばリーネが彼についていく理由もなくなる。
「ならしばらくは私たち二人で警戒するしかなさそうね。きっと今度はあの女から接触を図るだろうし・・。」
「わかったです・・。」
歯切れの悪い返事のリーネは足取り重くゼンのもとへと帰っていくのであった。
そんな腑に落ちない勇者との邂逅の最中ラスイーガに不穏な影が迫っていた。
ーーーーー
「部下の報告によるとこの街にセンサザールは向かっていると聞いたのですが・・。」
キョロキョロと辺りを見渡しそう言ったのは全身に灰色のローブを被せた四天王の一人、兎骸族のデルスターであった。
デルスターは人間の街であるラスイーガに訪れていたのである。
「まあ、来ていようがいまいが私からは逃れられないさ」
そう言った肥沃翼竜のブラウフラスはデルスターと打って変わりタキシードタイプの燕尾服を着こなしていた。
ブラウフラスは擬態魔法で角と尻尾を隠し、傍目から見れば落ち着いた雰囲気の執事といったところだろう。
そう言ったブラウフラスは胸ポケットからある物を取り出してデルスターに見せる。
「これは一体なんですか・・?」
デルスターが目にしたのは腐敗し黒ずんだ肉片であった。
ブラウフラスは大事そうに握りしめると、
「我が愚娘の耳の一部さ、エルフとして生きようとした愚娘の誇りを私が食いちぎったのさ。これは、肥沃翼竜独自のマーキングみたいなものでね、自分の唾液に魔力を混ぜて匂いや自身の魔力がする方角などを感知することが出来るんだよ」
「戒めのつもりで食い千切ったのが役に立ってしまったね」と、爽やかな笑みでそう言ったブラウフラスにデルスターの顔が引き攣る。
「ちょっとパパそんな気持ち悪い追跡魔法をお姉ちゃんに掛けていたの?」
デルスターが反応に困っていると、二人の前を歩く少女が振り返りながら怪訝な目をブラウフラスに向けていた。
その少女は、幼さの残る顔に硝子細工のように美しく丸い瞳に橙を基調とした華やかなドレスを纏った愛らしい人形のようであった。
彼女の名はメローテ、ブラウフラスの娘でありセンサザールの腹違いの妹である。
デルスターはそんな少女を見てブラウフラスに耳打ちをする。
「何故メローテ様をご同行なされたのですか?」
「久しぶりに会いたいと愛娘が言ったんだ。メローテの望むことは極力してやりたい、それが親の役目だからな」
見惚れた様子のブラウフラスは、そう言うと顎に手をやる。
「そ、そんな理由で・・!?」
デルスターの呆れた感情がため息となり、口から出てしまう。
「ちょっと二人とも歩くのが遅い!メローは早くお姉ちゃんに会いたいんだから急いでよね」
勝ち気な雰囲気のメローテは腰に手を当て不満を露わにする。
「はいはい、そんなに急いでも仕方ないだろ。居場所はわかっているんだから落ち着きなさい」
「落ち着けるわけないじゃない・・。」
メローテは身体を震わして俯く。
「メローテ様、だ、大丈夫ですか?」
「魔王軍を自ら辞めてくれたのよ!?やっと私のペットに出来るのよ!どれほどこの時を待ち続けていたか・・!」
恍惚とした表情で天を仰ぐメローテにデルスターは今までにない怖気を感じる。
その表情が、その思想が異常であることは言うまでもないだろう・・。
「メローテ、人前ではしたないじゃないか・・。」
ブラウフラスは辺りの通行人を見て目尻を下げて、メローテを注意する。
「この世界は魔族中心で動いているのよ?何故人の目を気にしないといけないの?」
メローテはそう言うと大きく息を吸い込む。
身体が一回りほど大きくなるほどに膨張したその身体から不穏な空気を感じ取ったデルスターは空中へと跳躍する。
瞬間、鳴り響く爆音にデルスターは耳を覆う。
咆哮にも似た魔力を凝縮した物を口から吐き出しながらメローテは自身を軸にぐるりと、一回転する。
メローテから波動のような魔力が止むと直径数百メートルが更地へと変わり果てていた。
デルスターはその所業に冷や汗をかく。
規格外の魔力攻撃と、常識のなさに開いた口が塞がらずにいた。
周りにいた住人は身体を切断され息絶えているものがほとんど、かろうじて生きていた者も虫の息であった。
「ほら、こんなにも簡単に死んじゃって羽虫となんら変わらないでしょう?ねえパパ!」
「ああ、そうだね」
メローテの言葉に笑顔で頷くブラウフラスは彼女の手を取り再び歩き出す。
「ねえパパ、もしお姉ちゃんが魔王軍を裏切っていたなら私が貰っていいんだよね?」
「ああ、好きにしなさい」
「やったー!!とっても楽しみだわ!」
「デルスターそんなところにいないで早く来い」
二人のそんなやりとりを見てデルスターはセンサザールに同情する。
デルスターは引き攣った笑顔のまま、ブラウフラスたちのもとに戻って行くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
冴えない建築家いずれ巨匠へと至る
木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」
かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。
安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。
現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。
異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
さようなら、私を「枯れた花」と呼んだ貴方。~辺境で英雄を救って聖女と呼ばれたので、没落した元婚約者の謝罪は受け付けません~
阿里
恋愛
「お前のような見栄えの悪い女は、俺の隣にふさわしくない」
婚約者アレクに捨てられ、辺境へ追いやられたセレナ。
けれど、彼女が森で拾ったのは、アレクなど足元にも及ばないほど強くて優しい、呪われた英雄ライアンだった。
セレナの薬草が奇跡を起こし、王都を救う特効薬となったとき、かつて自分を捨てた男との再会が訪れる。
「やり直そう」と縋り付くアレクに、セレナは最愛の人と寄り添いながら静かに微笑む。
――あなたが捨てたのは、ただの影ではなく、あなたの未来そのものだったのですよ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる