主人を殺された傀儡は地の女王と復讐の旅に出る

タカヒラ 桜楽

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第41話

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「センサザールさん、い、痛いです」

リーネはセンサザールに引かれる手に徐々に力が入っていることを咎めるようにそう言う。

センサザールはそこで初めて気づく。
自身の爪がリーネの皮膚にめり込むほど力強く握っていたことに・・。

「ご、ごめんなさいリーネ」

センサザールはリーネの手を離すと、何とも言えない表情でいいあぐねていた。

「あの人たちを置いてきても良かったんです?」

リーネは先程の二人がゼンに用があったのだろうと推察していたため、センサザールにそう訊ねる。

「・・そうね」

張り詰めたその表情と噛み合わない会話からセンサザールの余裕のなさが窺える。
ゼンも先日のことからまだ立ち直れていないようで、虚な目で遠くを眺めていた。

リーネは深く息を吸うと、「わっ!」と、大声を出す。
その行動にセンサザールは目を丸くする。

「ど、どうしたのよ・・。」

「センサザールさん、ゼンさん一度深く息を吸って落ち着きましょう!」

リーネは溌溂とした声でそう言うと、両手を大きく広げて深呼吸をしてみせる。

「ボクは二人の辛さや苦しみをちゃんとは分かち合えないかもしれないです。でも、寄り添ってくれれば、少しでもボクに委ねてくれたら、協力もこれからの旅もしたいと思っているです!」

ぎこちない笑顔でリーネはそう宣言するように言う。

「ボクにそうしてくれたように、ボクもお二人の力になりたいです・・。」

リーネの言葉にセンサザールの張り詰めていた糸が弛み笑顔が溢れる。

「そうね、一人で悩んでも仕方ないわよね・・。」

センサザールはそう言い一呼吸置くと、話始める。

「さっきの人相書きに書かれていたのは私の父と妹よ。今でも殺したいほど憎んでいるね・・。」

センサザールはそう言うと木にもたれかかりながら地面に座り込む。
リーネもセンサザールを真似るようにその場にそっと座る。

「まあ、妹と言っても腹違いなんだけどね。彼女は肥沃翼竜ファートル・ドラゴンの純血、対する私は母親のエルフとしての血が流れている混血種、何でだと思う?」

解答しづらい問いにリーネは言い淀んでいると、センサザールは答えなくていいといったように手のひらを見せる。

「父親は戦争の道具にするために私を産んだのよ。自然エネルギーを用いた魔法に長けた肥沃翼竜ファートル・ドラゴンを作るためにね・・。」

地面を削るほど爪を立てて怒りを露わにしたセンサザールは更に続ける。

「だからこそ、あの男は母さんの恋愛感情を利用して私を産ませたのよ。そのあとは・・。」

どれほどその過去を思い出したくなかったのか・・。
おそらくだが、リーネの想像など遥かに越えているのだろう。
口元を抑え、涙を見せぬように俯くセンサザールの咽び泣く声は彼女の強い精神力があるからだろう。

「結局蓋を開けてみれば、あの男はいろんな種族の女と交配をしていたらしいわ。純血種よりも優秀な種を求めてね・・。けれども駄目だったみたいでね」

嘲笑うように言い放った言葉だが、センサザールの目には怒りの炎が宿っていた。

「混血種の中で私が生かされた。それが私の知りうる限りのあの男の情報、そしてその男が唯一愛した女の間に生まれたのが私の妹ってわけ」

「生かされたっていうのは・・?」

「さっきも言ったようにあの男の中では、混血種の私たちは戦争の道具でしかなかったのよ。自分の子供が活躍すれば、それだけ名誉や褒賞が与えられるから・・。だからそれが出来ない者はポイっ・・みんな殺されたわ」

軽く言った言葉だが、内容残虐以外の何物でもなかった。
リーネは自身の表情が強張っていると理解出来るほどその言葉に対しての嫌悪が表に出てしまう。

センサザールは話し終えると、項垂れたように地面を見つめる。

「私は愛情なんてあの男から貰ったこともないのに、妹・・メローテって言うのだけれど、彼女は過剰なほどにその愛情を注がれていたのよ・・純血であり、愛した女の娘という理由で・・。」

「子供っぽいっていうのはよく分かっているわ!でも、私は・・幼い頃から混血種というだけで虐げられ、父親にも見放されていた。だから心底恨んで、四天王に入った時にあの男とも縁を切ったのに・・。
何で近くにいるのよ・・。」

悲痛な叫びがセンサザールの声音から伝わる。

「子供っぽくないです!」

リーネはセンサザールの言葉を大声で掻き消すように否定する。
リーネが自身の翼の毛が逆立つほどに憤っていることにセンサザールは気づく。
握り締められたこぼしから鮮血が滴り落ちるのを見てセンサザールの瞳が潤む。

リーネは涙を見せまいとリーネから顔を背けるセンサザールの顔に、手を添えてリーネの方向に向ける。

「センサザールさん、強がる必要も自分を卑下する必要もないです。センサザールさんはとっても素晴らしい人・・魔族です!ボクはセンサザールさんにも本当に感謝しているです。奴隷商人の人から守ってくれたときも、ボクたちの新しい居場所を作ってくれたのもあなたです・・。昔のことなんてどうでもいいです、今はボクたちと一緒に生きて行けばいいです!」

「・・リーネ・・。」

リーネの子供ながらに必死に自身の思いを伝えようとするその言動にセンサザールの頬が緩む。

「言いことをいうじゃない、リーネちゃん・・。」

「・・・ッ!?」

リーネはセンサザールの真上から聞こえて来る声の方を見上げる。

木の幹の上に座り、足をぶらぶらと垂らしてこちらを見ていた者は、栗色のソバージュが目立つ女と、その隣に銀の長髪の女が腕を組み直立不動で幹の上に立ちリーネを見下ろしていた。

おそらく先程の二人組なのだろうが、雰囲気と容姿が明らかに変わっていた。

主に二人の容姿なのだが、犬などを連想させる厚い毛並みの尖った耳に釣り目から放たれる威圧的な眼光、剥き出しになったんだ太く鋭い犬歯が生えており、明らかに人とは違う何かであることが分かる。

彼女たちは人狼妖精コボルトと呼ばれる魔妖精であった。
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