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第42話
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「何で、貴方たちがここに・・!?」
センサザールの言葉に人狼妖精である、栗色のソバージュが特徴的な女が笑顔を向ける。
「まあ、私的な用があるからかな?」
「私的な用?」
センサザールは眉を顰めそう聞き返す。
「そ、でも説明をする前に、まずは自己紹介した方が良いよね。アタシはラシャダ、こっちのツンケンしてるのがシーア。アタシたちラスイーガで活動している魔族平等人権家団体の幹部なの」
ソバージュの女、ラシャダはそう自己紹介をすると、木の幹を蹴って難なく地面に着地する。
人狼妖精は、運動能力が高いとされている、人型の魔族である。
正式な名前は魔妖精や悪戯妖精などという呼称があるのだが、魔族と人間の戦争が起きた後からは、魔王軍に降った高・中位の者を魔族と総称したためなのだが、この人狼妖精たちも例外なく魔王軍に降ったため、今では魔族と呼ばれることが多いのだ。
「シャリスティア・・です?」
「そうよ!アタシたちは魔族と人類の共存を目標に人類圏内にいる弱い立場の魔族を救う慈善団体なのよ!」
「ふんっ。その慈善団体様に私は矛を向けられたのだけれど?」
目を輝かせてそう言ったラシャダにセンサザールは鼻を鳴らし、やっかみを入れる。
だが、その言葉はいつの間にか地面に下りていた、もう一人の人狼妖精である銀髪のシーアに反論される。
「それはお前が我々の障害になりうる肥沃翼竜の可能性があったからだろう?だから抜刀したまでだ」
シーアの言葉もそうだが、センサザールは先程の甲冑を脱ぎ機能性重視のシャツとズボン姿が、シーアの我儘な肉付きの良い身体を主張していることに苛立ちを覚えたからなのだろうか。
「チッ」
と、あからさまな舌打ちをセンサザールはする。
決して貧相ではないが、シーアに比べたらお子様サイズの自身の身体を見直して怒りの燃料を投下したセンサザールは、負けじとシーアに毒づく。
「道理で早計な判断をするだけはあるわね。あんな鉄製の剣で肥沃翼竜に勝てるなんて馬鹿過ぎて笑っちゃいそうだわ。それもやっぱり頭の養分が分散しているせいなのかしら?」
「何だ羨ましいのか?」
シーアはセンサザールの視線に気づき、更なる挑発を加える。
「ああ!?羨ましくなんてないわよ!そんなのあったって邪魔なだけよッ!」
シーアの主張し過ぎた胸を指差し、怒り任せに否定するセンサザール。
「・・・・。それで結局私たちに用とは?」
両者が睨み合っているのを横目にリーネはそう疑問を口にする。
「厳密に言うとたちではなく、あなたに用があるのよリーネちゃん」
「・・・・ボクです?」
ラシャダの言葉に疑問符を浮かべるリーネ。
そんやリーネにラシャダは微笑む。
「ええそうよ。アタシはビュティニアに貴方の保護を頼まれているのよ」
「・・・・ッ!?」
意外な人物の名にリーネは驚く。
ビュティニアは四天王の一人で、リーネと同じ天翼族であり、リーネの叔母である存在だ。
同じ天翼族であるが、それだけを理由に彼女の名前を出すとは思えない。
「そっか、貴方確か奴隷としてラスイーガに来る手筈だったのか・・。」
リーネの反応にラシャダは顎に手を当て、思案している様子でそう言う。
「どうしてそれを・・。」
リーネは自身の境遇を知っているラシャダに驚く。
だが、センサザールがいち早く現状を理解したのか、「なるほどね」と、腕を組んで頷く。
「そういえばビュティニアが言っていたわね。魔族中立組織っていうのが天翼族の子供たちを保護する手筈だってね」
「・・・あっ!?」
センサザールの言葉でリーネは思い出すと、同時にラシャダを指差す。
「何だ貴方も知っていたのね。そう、アタシは魔族平等人権家集団の幹部であり、魔族中立組織の設立者として、日々魔族の戦争孤児や避難民の援助をしているの。
ビュティニアの頼みで天翼族の子達を迎え入れる予定だったのに一向に来ないから心配していたのよ」
ラシャダは首を横に振って、ため息を吐く。
「でも、貴方と偶然出会って良かったわ。さあ私たちと街に行きましょう。それと他の子たちはどこにいるの?」
ラシャダの疑問に何と答えていいか分からずにリーネは困り顔になる。
「ええっと・・。」
リーネは助け舟を求めて、センサザールを見る。
センサザールはリーネの意図を汲み取ったのか、小さく挙手をして「私が説明をするわ」と、仕方なくことの顛末を話すのであった。
センサザールの言葉に人狼妖精である、栗色のソバージュが特徴的な女が笑顔を向ける。
「まあ、私的な用があるからかな?」
「私的な用?」
センサザールは眉を顰めそう聞き返す。
「そ、でも説明をする前に、まずは自己紹介した方が良いよね。アタシはラシャダ、こっちのツンケンしてるのがシーア。アタシたちラスイーガで活動している魔族平等人権家団体の幹部なの」
ソバージュの女、ラシャダはそう自己紹介をすると、木の幹を蹴って難なく地面に着地する。
人狼妖精は、運動能力が高いとされている、人型の魔族である。
正式な名前は魔妖精や悪戯妖精などという呼称があるのだが、魔族と人間の戦争が起きた後からは、魔王軍に降った高・中位の者を魔族と総称したためなのだが、この人狼妖精たちも例外なく魔王軍に降ったため、今では魔族と呼ばれることが多いのだ。
「シャリスティア・・です?」
「そうよ!アタシたちは魔族と人類の共存を目標に人類圏内にいる弱い立場の魔族を救う慈善団体なのよ!」
「ふんっ。その慈善団体様に私は矛を向けられたのだけれど?」
目を輝かせてそう言ったラシャダにセンサザールは鼻を鳴らし、やっかみを入れる。
だが、その言葉はいつの間にか地面に下りていた、もう一人の人狼妖精である銀髪のシーアに反論される。
「それはお前が我々の障害になりうる肥沃翼竜の可能性があったからだろう?だから抜刀したまでだ」
シーアの言葉もそうだが、センサザールは先程の甲冑を脱ぎ機能性重視のシャツとズボン姿が、シーアの我儘な肉付きの良い身体を主張していることに苛立ちを覚えたからなのだろうか。
「チッ」
と、あからさまな舌打ちをセンサザールはする。
決して貧相ではないが、シーアに比べたらお子様サイズの自身の身体を見直して怒りの燃料を投下したセンサザールは、負けじとシーアに毒づく。
「道理で早計な判断をするだけはあるわね。あんな鉄製の剣で肥沃翼竜に勝てるなんて馬鹿過ぎて笑っちゃいそうだわ。それもやっぱり頭の養分が分散しているせいなのかしら?」
「何だ羨ましいのか?」
シーアはセンサザールの視線に気づき、更なる挑発を加える。
「ああ!?羨ましくなんてないわよ!そんなのあったって邪魔なだけよッ!」
シーアの主張し過ぎた胸を指差し、怒り任せに否定するセンサザール。
「・・・・。それで結局私たちに用とは?」
両者が睨み合っているのを横目にリーネはそう疑問を口にする。
「厳密に言うとたちではなく、あなたに用があるのよリーネちゃん」
「・・・・ボクです?」
ラシャダの言葉に疑問符を浮かべるリーネ。
そんやリーネにラシャダは微笑む。
「ええそうよ。アタシはビュティニアに貴方の保護を頼まれているのよ」
「・・・・ッ!?」
意外な人物の名にリーネは驚く。
ビュティニアは四天王の一人で、リーネと同じ天翼族であり、リーネの叔母である存在だ。
同じ天翼族であるが、それだけを理由に彼女の名前を出すとは思えない。
「そっか、貴方確か奴隷としてラスイーガに来る手筈だったのか・・。」
リーネの反応にラシャダは顎に手を当て、思案している様子でそう言う。
「どうしてそれを・・。」
リーネは自身の境遇を知っているラシャダに驚く。
だが、センサザールがいち早く現状を理解したのか、「なるほどね」と、腕を組んで頷く。
「そういえばビュティニアが言っていたわね。魔族中立組織っていうのが天翼族の子供たちを保護する手筈だってね」
「・・・あっ!?」
センサザールの言葉でリーネは思い出すと、同時にラシャダを指差す。
「何だ貴方も知っていたのね。そう、アタシは魔族平等人権家集団の幹部であり、魔族中立組織の設立者として、日々魔族の戦争孤児や避難民の援助をしているの。
ビュティニアの頼みで天翼族の子達を迎え入れる予定だったのに一向に来ないから心配していたのよ」
ラシャダは首を横に振って、ため息を吐く。
「でも、貴方と偶然出会って良かったわ。さあ私たちと街に行きましょう。それと他の子たちはどこにいるの?」
ラシャダの疑問に何と答えていいか分からずにリーネは困り顔になる。
「ええっと・・。」
リーネは助け舟を求めて、センサザールを見る。
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