ダークファンタジーの魔法少女、異世界スローライフで日常を知る

タカヒラ 桜楽

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帰る場所

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 大狼はこの世界に人が誕生するずっと前から存在していた。
 ずっと前という漠然とした言葉は本人もよくわかっていないからである。

 だが、ずっと前だ。

 空は暗く、昼夜の判断もつかない時代から・・。
 
 大狼は、ほぼ全ての誕生を目の当たりにしている珍しい存在だ。
 大狼にとってこの世界は絵画のような存在であった。
 大地が出現し、光が生まれ、生命が誕生したその時を見た存在は神とも崇められたし、破滅の象徴とも恐れられた。
 
 世界が型取られ、退屈な日々から抜け出した彼に待っていたのは、孤独であった。
 
 彼の退屈を凌げる物は何もなかった。
 食に疎く、睡眠は死ぬほどした。
 性欲ははじめからなかった・・。

 そんな彼が唯一興味を持ったのが闘争であった。
 動物が争うその姿に彼は鳥肌が立つほどの興奮を覚えた。

 生死の狭間を体験したい、だがそのためには自分と同等の者を見つけなければいけなかった。

 その時に大狼が注目したのが、人や魔族といった存在であった。

 だが大狼は魔の存在が生まれ、人が生まれ、その両者が争う時代を眺めることしか出来なかった。
 
 結局彼を満足させる物はいなかった。

 ただ一人を除いて・・。

 

ーーーーー


 「目が覚めた?」

 大狼の上からそんな言葉が聞こえる。
 ゆっくり瞼を上にあげて大狼は安堵の声を上げる。

 「やっぱり君が魔女だったんだね・・。」

 大狼の顔からわずかだが笑みが溢れる。

 大狼は、ベーラという少女の膝に乗って眠っていたのだろう。

 「私は魔女じゃないよ。というか、こんなにちっちゃくなるなんてびっくりしたよ!?」
 「原因はわからないけど力を使うとこんな姿になるんだよ・・。」

 と、大狼は懐かしむように言い、丸まっていた身体を伸ばしながら、先刻のことを思い出す。

 どんな攻撃をもたった一人の少女に弾かれ、相殺され、自分の持ち合わせた全ての力を使い果たし、大狼は気絶したのであった。

 「ねえ、貴方はどうして魔女にそんなにこだわるの?」
 
 突然の少女の質問に大狼は苦笑する。
 
 もう隠す必要ないだろう・・。

 そう感じた大狼はふっと笑ってみせる。

 「魔女はボクに生きる喜びを教えてくれた方なんだよ・・。だから次はボクが魔女のために尽くしたいと考えたんだよ。魔女はボクにこう言ったんだ、『私は生まれ変わるから、また会いましょう』ってね」

 大狼の言葉に私は戸惑う。
 きっと彼の求めている魔女は私ではない。
 私には前世の記憶があるからだ。

 「君がそうじゃないってことは薄々気づいていたよ。だから戦ってみて実感したよ、彼女はとても暖かかったが、君は氷のように冷たく感じたから・・。」
 「あら?私はとっても優しいのよ?だから貴方の攻撃は効かないけど、攻撃も出来ないとってもか弱い女の子なんだからっ!?」

 私の言葉に大狼は清々しい笑い声を上げる。
 
 「ハハハハハ!自分から優しいって言う人はなかなかいないよ。そういうところじゃないのかい?どこか打算的な感じがするんだよなー」

 大狼はニヤケながらそう言った。
 その姿には、先程の恐ろしい雰囲気は微塵も感じられなかった。
 それと同時に、大狼の背中がとても小さく、そして寂しさで溢れているように見えた。

 「ボクはまたどこかでひっそりと過ごすことにするよ。久しぶりに全力を出せてスッキリしたしね。こんなボクのわがままに付き合ってくれてありがとう・・。」
 「付き合ったんじゃなくて巻き込まれたんだけど・・。」
 「君は本当のことしか喋れないのかい?」

 大狼はそう言い苦笑すると、ベーラの膝からするりと抜け出ると、

 「じゃあボクはこれで失礼するよ・・。自分勝手な行動をして本当にごめんね。君の友達たちにも言っておいてくれないかな?」

 大狼はベーラたちの方向を向かずに歩みを進める。

 「勝手に行っちゃダメだよ。これだけ私たちに迷惑をかけておいて、はいじゃあねで済むと思っているの?」

 そんな姿を見て、ベーラは素っ気なくそう言う。
 
 「それは悪いことをしたと思っているけど、ボクにはどうすることも出来ないよ・・。」
 「貴方がそう決めつけているだけでしょ」
 「・・というと?」
 「私犬が好きなのよ。だからウチに来ない?」
 「き、君の家にかい?!」

 ベーラの突然の申し出に、流石の大狼も驚きを隠せずにいた。
 だが、すぐに大狼の表情が暗くなる。

 「ボクは魔の存在よりもよっぽど恐ろしい存在だよ?魔力を使わなければいくらでも大きくなるし、ボクは誰とも共存出来ない異形の生物なんだよ、だから・・。」
 「そんなのどうだっていいよ。私は責任をとって欲しいだけだよ」
 「責任って・・。」

 大狼の言葉にベーラは満面の笑みを向け大狼に指差す。

 「皆んなに迷惑をかけたのと、モフモフ罪よ!」
 「もふもふ・・罪?」

 キョトンとした大狼にベーラは近づき抱き抱える。

 「私が満足するまでずーっとモフモフされるのよ!」

 ベーラは大狼の身体を弄るようにわしわしと身体を触る。
 
 「や、やめっ・・ハフゥ//。」

 と、大狼はまんざらでもない声を上げる。

 「貴方の悩みは全て私に任せてよ。そのかわりペットみたいな扱いになっちゃうかもだけど・・。」
 「それでいいよ・・。」

 諦めたように、だが嬉しそうに大狼はそう言うと、ゆっくり目を閉じる。
 
 「なんだか君の手は心地が良いな・・。」
 「私は聖母のように優しいからじゃない?」
 「また君はそんなことを言って・・。」

 大狼がベーラに撫でられることをまんざらでもなさそうにしていると、他の視線を感じ大狼は目を開ける。

 「ねえ、私も触って良い!?」
 「わ、私も・・。」

 先程まで、大狼を怖がっていたミリアンヌとレーネが目を輝かせて大狼を見下ろしていた。

 大狼は一瞬困り顔になるが、ベーラの「責任よ」と、いう言葉を受け、彼女たちにそっと背中を差し出すのであった。





 
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