57 / 361
揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》
揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》9
しおりを挟む
「えッ!?いやぁぁぁぁ!!!!」
二階とはいえジャンボジェット機の高さとほぼ同じ、約20mくらいの位置からガラスを突き破って外に飛び出したフォルテの後ろでアタシは悲鳴を上げた。
以前ケンブリッジ大学の時も15mくらいから降りたことはあったけど、あの時はフォルテがアタシのことを考慮して壁伝いにゆっくり降りてくれたが、今回はそれとは全く違う。
まさに紐無しバンジーの状態でビルの6~7階から飛び降りたのと同じ状態。
自由落下するアタシ達に激しい風圧が襲い、アタシの着ていた黒のプリーツスカートをバサバサと弄び、自慢のポニーテールは地面に逆らって上を向いた状態で一匹の蛇のように小刻みに揺れ動いた。瞼が上手く開けられず視界が暗く狭まるが、刻一刻と白いコンクリートの地面が近づいてくるのが分かる。
怖い────
内臓が死神に鷲掴みにされたように全身をあのフワッとした嫌な感覚が襲い、身体の力が抜けていくような気がした。
「セイナッ!!」
フォルテが強くアタシの名前を呼びかけた。
その声にハッとして抜けかけていた全身に力を再度込めてフォルテの背にがっちりとしがみ付いた。
そうだッ!フォルテはアタシに信じろと言った!だから────
「大丈夫よッ!!」
それを信じてやるのがパートナーってもんでしょッ!!
アタシはそう決心して目をキツく閉じたままフォルテにしがみついた。
フォルテの全身が再び紅く、さっきよりもさらに濃い紅いオーラに包まれていく。
フォルテに密着しているアタシの身体がそのオーラに触れてどこか温かいような感覚が伝わってくる。
力強くもあり、それでいてどこか心が休まるような優しい感覚。ケンブリッジ大学の時には感じなかったその感覚にアタシは身を委ねた。
「行くぞォォォォ!!」
地面に激突する瞬間フォルテが叫んだ。
ドォォォォンッ!!
地面に両足で着地したフォルテの足元に人間が出したものとは思えない衝撃音が響き、アタシ達を中心にコンクリートの地面が蜘蛛の巣状にヒビが入る。足で殺しきれなかった勢いで前のめりに倒れたフォルテは、身体を支えるようにして両膝と右手をついた四つん這いならぬ三つん這いの状態になった。
「痛ッテェェェェ!!」
フォルテは眼をギュッとキツく閉じて素早く能力を切った状態に戻りつつ、口を大きく開けながら痛みに呻いた。それでもフォルテはビルの6~7階から42㎏背負った状態で飛び降りたのにもかかわらず、大怪我どころか軽症で済んでいた。しかも背負われていたアタシに至っては全くの無傷だった。
生きてる────
だが、今のアタシたちはそんな奇跡のような体験を喜んでいる暇は無かった。
「早く行くわよッ!!」
素早く背中から降りたアタシはフォルテの左腕の間に肩を貸すようにして身体を支え、一階のガラス窓の方に小走りで向かっていく。
バリバリバリバリッ!!
二階の頭上からアタシ達に向けてFBI達がアサルトライフルを撃ち下ろしてくる。
「クッ!」
アタシはガラス窓に向けて、右手で持ったグロック17を構え、走ったまま数発銃弾を撃ちこむ。
「せーのッ!」
バリンッ!!
そのままフォルテと一緒にガラスに体当たりして空港ラウンジの一階内部に倒れ込んだ。
辺りを見渡すと、幸い一般客はもうすでに逃げ出したあとのようで警備員とFBIも含めてアタシたち以外の姿は見当たらなかった。
それにここはさっきまでいたショッピングモールのような広い空港ラウンジと違い、上と下に続く階段が両サイドにある狭い通路だった。
恐らくここは二階に上がる階段と、地下のエアロトレインBコンコース駅に向かうための階段だろう。
エアロトレインとはこのワシントン・ダレス空港のA~Cの空港ラウンジとメインターミナルビルを繋ぐ乗客輸送用の地下鉄のことで、稼働していれば出口のあるメインターミナルに行けるはずなのだが。
アタシ達を逃がさないために多分もう運航してないでしょうね……
「追手が来る前に早く逃げるわよ……」
「おう……」
アタシはフォルテにそう呼びかけながら再び肩を貸すようにして立ち上がらせる。
「足、どこか痛めたの?」
誰もいなくなった狭い通路を二人三脚のような感じの小走りで地下の方向に向かって逃げる中、左足を引きずっていたフォルテに声を掛けた。
「骨は多分折れてない……ただ、着地の衝撃で足首と膝の関節を痛めたみたいだ。能力を一瞬だけ限界の10倍まで引き上げたから大丈夫だと思ったんだけど……」
歩くたびに痛むのか、フォルテは少し息荒げにそう答えた。
「……地下鉄は動いてなくても地下道に降りれば身を隠せるかもしれないわ、助けてもらって悪いけど、今は身を隠せるまで我慢して……」
「悪い迷惑かけて……能力を使えば多少は動けるようにはなると思うんだが無駄な消耗は避けたいだ……だからもし敵と交戦になって俺が足手まといになるようならお前は構わず逃げろ」
「こんな時になにふざけたこと言ってるのッ!?ハリウッド映画級のアクション決めて自分酔ってるのか知らないけど、冗談でもそんなこと言わないで!」
アタシの言葉にフォルテが意外そうに右眼を見開いてキョトンとする。
「貴族たるもの受けた恩は忘れるべからず、これはアタシの母である女王陛下の教えよ!それに、アタシ達はパートナーになったんでしょ?パートナーはどんな時でも相棒を見捨てたりしないわ!いい?分かったら無駄口叩く前に足を動かしなさい!バカッ……」
アタシの話しを少し俯き気味で聞いていたフォルテは数秒の沈黙の後────
「プッ……フフフフッ……」
と急に小さく噴き出してから苦笑いを浮かべた。
「なによ?」
「いや、まさかセイナからそんなこと言われるとは思ってなかっただけさ……」
「なにそれ?アタシにことなんだと思っているのよ?」
「別に、真面目なお嬢様としか思ってないよ……ただ今回は俺の責任とミスで犯罪者の片棒を担がせる羽目になっちまったから流石に怒っていると思ってな」
あ……確かに言われてみればそうだった。紐無しバンジーのせいですっかり忘れてたけど……
「そう言われたら無性にアンタを置いていきたくなったわ……」
「ちょッ!?今更心変わりは勘弁してくれッ!貴族たるものなんたらじゃなかったの!?」
「今からでもアンタを差し出して「脅されてました」って言えば助かるかも……」
「それも相棒見捨ててんじゃん!?それにもうセイナも入国審査官に危害加えてるからもう
遅いって……イダダダダッ!!」
「無駄口叩く前に足を動かせって言ったのもう忘れたの?大体誰のせいでそうなったのよ!?あと、それに対する謝罪の言葉もまだ聞いてないんだけどッ!」
アタシが無駄口をたたくフォルテの左頬を思いっきり左手で抓る。
「イデデデッ!|わるあったってッ!もうよへいなほといわないはらゆなひてッ!」
涙目で謝罪しながらそう懇願してきたフォルテの頬からアタシは「ふん!」と鼻を鳴らしながら手を離した。
「分かればいいのよ分かれば」
アタシはそう吐き捨ててフォルテと一緒に階段を下ろうとした瞬間────
「いたぞッ!!あそこだッ!」
警備員ではなくFBIが数十m後ろの二階の階段から駆け下りてきた。
「クソッもう来やがったかッ!」
「追いつかれる前に早く行くわよ!」
アタシ達は急いで階段を駆け下りる。
「見えた!地下鉄だわ!」
階段を下りた先、地上の光の差し込まない天井の照明だけで照らされた広い空間に出る。
エアロトレインの通る線路とホームの間は、乗客落下防止用のガラス窓で区切られている。
このガラスを撃って地下鉄に降りれば────
ブゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
と階段を下りたタイミングで遠くから低い重低音を鳴らしながら何かが近づいてきているのにアタシ達は気づいた。
エアロトレインがこっちに近づいてきている……?
これだけ混乱しているのなか電車が動いているのはおかしい。それに、こっちに向かってきているのであれば地下道に降りることができない。
「ウソだろ……!?」
ホームに侵入してきたエアロトレインを見たフォルテが悪態をついた。
それが単に地下道に降りれないからというわけではなく、中に数人乗っていることを指して言っていることにアタシもすぐに気づいた。エアロトレインの中に乗客ではなく武装した警備員が数名乗っていることに……
「どうする?反対側の階段からまた上に行く?」
「いや……上は警備員が張っている可能性があるから……こっちだッ!」
フォルテはホームから階段横のトイレの方を指さした。
幸いエアロトレインは両側から降りれるということもあって、警備員達はたまたま反対のホームの方を向いていたおかげでまだこっちに気づいていない。
アタシ達はその隙に急いで階段横の女子トイレに入り、10個ある個室の入り口から一番奥の中に逃げ込んだ。
「クソッ!?どこに行きやがったッ!?」
階段を下りてきたFBI数名が大声で話す声が入り口の方から聞こえてくる。
アタシ達は見つからないように息を顰める。
「まだ遠くには行っていないはずだッ!!お前達はあっちを探せ!俺は念のためこっちを調べる!」
トイレの外でFBI達がそれぞれ走っていく音が聞こえて遠ざかっていくなか、一人だけが立ち止まって中に入ってきた。
ゆっくりとした足取りでトイレに侵入してきたその男は、慎重に一つ一つをクリアリングしていく。
一個、また一個と、ゆっくりと調べていく音に、アタシは息を呑むことすら音が出るのをおそれてできなくなっていた。
自分の心臓の音が、胸に手を当てていなくてもドクンッ!ドクンッ!と普段よりも大きく早く鼓動しているのが伝わってきて、額から冷たい嫌な汗が一滴流れ落ちた。
「おいッ!そこに隠れているには分かっている!大人しく出てこいッ!」
9個目を調べ終えたFBI捜査官が最後の一つに向けて外から大声で叫んだ。
返事はない。
アタシもフォルテも音を一切出さないように押し黙っていた。
「外から銃撃しても構わないんだぞッ!」
FBI捜査官が返事がないことなど気にせずに大声でもう一度忠告してきた。
もちろん返事はしない。
女子トイレ内が数秒の沈黙に包まれる。
「そうかッ!!死んでも後悔するなよ!」
バリバリバリバリッ!
FBI捜査官はそう言い放ってから、持っていたアサルトライフルを最後の個室に向けて連射した。
二階とはいえジャンボジェット機の高さとほぼ同じ、約20mくらいの位置からガラスを突き破って外に飛び出したフォルテの後ろでアタシは悲鳴を上げた。
以前ケンブリッジ大学の時も15mくらいから降りたことはあったけど、あの時はフォルテがアタシのことを考慮して壁伝いにゆっくり降りてくれたが、今回はそれとは全く違う。
まさに紐無しバンジーの状態でビルの6~7階から飛び降りたのと同じ状態。
自由落下するアタシ達に激しい風圧が襲い、アタシの着ていた黒のプリーツスカートをバサバサと弄び、自慢のポニーテールは地面に逆らって上を向いた状態で一匹の蛇のように小刻みに揺れ動いた。瞼が上手く開けられず視界が暗く狭まるが、刻一刻と白いコンクリートの地面が近づいてくるのが分かる。
怖い────
内臓が死神に鷲掴みにされたように全身をあのフワッとした嫌な感覚が襲い、身体の力が抜けていくような気がした。
「セイナッ!!」
フォルテが強くアタシの名前を呼びかけた。
その声にハッとして抜けかけていた全身に力を再度込めてフォルテの背にがっちりとしがみ付いた。
そうだッ!フォルテはアタシに信じろと言った!だから────
「大丈夫よッ!!」
それを信じてやるのがパートナーってもんでしょッ!!
アタシはそう決心して目をキツく閉じたままフォルテにしがみついた。
フォルテの全身が再び紅く、さっきよりもさらに濃い紅いオーラに包まれていく。
フォルテに密着しているアタシの身体がそのオーラに触れてどこか温かいような感覚が伝わってくる。
力強くもあり、それでいてどこか心が休まるような優しい感覚。ケンブリッジ大学の時には感じなかったその感覚にアタシは身を委ねた。
「行くぞォォォォ!!」
地面に激突する瞬間フォルテが叫んだ。
ドォォォォンッ!!
地面に両足で着地したフォルテの足元に人間が出したものとは思えない衝撃音が響き、アタシ達を中心にコンクリートの地面が蜘蛛の巣状にヒビが入る。足で殺しきれなかった勢いで前のめりに倒れたフォルテは、身体を支えるようにして両膝と右手をついた四つん這いならぬ三つん這いの状態になった。
「痛ッテェェェェ!!」
フォルテは眼をギュッとキツく閉じて素早く能力を切った状態に戻りつつ、口を大きく開けながら痛みに呻いた。それでもフォルテはビルの6~7階から42㎏背負った状態で飛び降りたのにもかかわらず、大怪我どころか軽症で済んでいた。しかも背負われていたアタシに至っては全くの無傷だった。
生きてる────
だが、今のアタシたちはそんな奇跡のような体験を喜んでいる暇は無かった。
「早く行くわよッ!!」
素早く背中から降りたアタシはフォルテの左腕の間に肩を貸すようにして身体を支え、一階のガラス窓の方に小走りで向かっていく。
バリバリバリバリッ!!
二階の頭上からアタシ達に向けてFBI達がアサルトライフルを撃ち下ろしてくる。
「クッ!」
アタシはガラス窓に向けて、右手で持ったグロック17を構え、走ったまま数発銃弾を撃ちこむ。
「せーのッ!」
バリンッ!!
そのままフォルテと一緒にガラスに体当たりして空港ラウンジの一階内部に倒れ込んだ。
辺りを見渡すと、幸い一般客はもうすでに逃げ出したあとのようで警備員とFBIも含めてアタシたち以外の姿は見当たらなかった。
それにここはさっきまでいたショッピングモールのような広い空港ラウンジと違い、上と下に続く階段が両サイドにある狭い通路だった。
恐らくここは二階に上がる階段と、地下のエアロトレインBコンコース駅に向かうための階段だろう。
エアロトレインとはこのワシントン・ダレス空港のA~Cの空港ラウンジとメインターミナルビルを繋ぐ乗客輸送用の地下鉄のことで、稼働していれば出口のあるメインターミナルに行けるはずなのだが。
アタシ達を逃がさないために多分もう運航してないでしょうね……
「追手が来る前に早く逃げるわよ……」
「おう……」
アタシはフォルテにそう呼びかけながら再び肩を貸すようにして立ち上がらせる。
「足、どこか痛めたの?」
誰もいなくなった狭い通路を二人三脚のような感じの小走りで地下の方向に向かって逃げる中、左足を引きずっていたフォルテに声を掛けた。
「骨は多分折れてない……ただ、着地の衝撃で足首と膝の関節を痛めたみたいだ。能力を一瞬だけ限界の10倍まで引き上げたから大丈夫だと思ったんだけど……」
歩くたびに痛むのか、フォルテは少し息荒げにそう答えた。
「……地下鉄は動いてなくても地下道に降りれば身を隠せるかもしれないわ、助けてもらって悪いけど、今は身を隠せるまで我慢して……」
「悪い迷惑かけて……能力を使えば多少は動けるようにはなると思うんだが無駄な消耗は避けたいだ……だからもし敵と交戦になって俺が足手まといになるようならお前は構わず逃げろ」
「こんな時になにふざけたこと言ってるのッ!?ハリウッド映画級のアクション決めて自分酔ってるのか知らないけど、冗談でもそんなこと言わないで!」
アタシの言葉にフォルテが意外そうに右眼を見開いてキョトンとする。
「貴族たるもの受けた恩は忘れるべからず、これはアタシの母である女王陛下の教えよ!それに、アタシ達はパートナーになったんでしょ?パートナーはどんな時でも相棒を見捨てたりしないわ!いい?分かったら無駄口叩く前に足を動かしなさい!バカッ……」
アタシの話しを少し俯き気味で聞いていたフォルテは数秒の沈黙の後────
「プッ……フフフフッ……」
と急に小さく噴き出してから苦笑いを浮かべた。
「なによ?」
「いや、まさかセイナからそんなこと言われるとは思ってなかっただけさ……」
「なにそれ?アタシにことなんだと思っているのよ?」
「別に、真面目なお嬢様としか思ってないよ……ただ今回は俺の責任とミスで犯罪者の片棒を担がせる羽目になっちまったから流石に怒っていると思ってな」
あ……確かに言われてみればそうだった。紐無しバンジーのせいですっかり忘れてたけど……
「そう言われたら無性にアンタを置いていきたくなったわ……」
「ちょッ!?今更心変わりは勘弁してくれッ!貴族たるものなんたらじゃなかったの!?」
「今からでもアンタを差し出して「脅されてました」って言えば助かるかも……」
「それも相棒見捨ててんじゃん!?それにもうセイナも入国審査官に危害加えてるからもう
遅いって……イダダダダッ!!」
「無駄口叩く前に足を動かせって言ったのもう忘れたの?大体誰のせいでそうなったのよ!?あと、それに対する謝罪の言葉もまだ聞いてないんだけどッ!」
アタシが無駄口をたたくフォルテの左頬を思いっきり左手で抓る。
「イデデデッ!|わるあったってッ!もうよへいなほといわないはらゆなひてッ!」
涙目で謝罪しながらそう懇願してきたフォルテの頬からアタシは「ふん!」と鼻を鳴らしながら手を離した。
「分かればいいのよ分かれば」
アタシはそう吐き捨ててフォルテと一緒に階段を下ろうとした瞬間────
「いたぞッ!!あそこだッ!」
警備員ではなくFBIが数十m後ろの二階の階段から駆け下りてきた。
「クソッもう来やがったかッ!」
「追いつかれる前に早く行くわよ!」
アタシ達は急いで階段を駆け下りる。
「見えた!地下鉄だわ!」
階段を下りた先、地上の光の差し込まない天井の照明だけで照らされた広い空間に出る。
エアロトレインの通る線路とホームの間は、乗客落下防止用のガラス窓で区切られている。
このガラスを撃って地下鉄に降りれば────
ブゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
と階段を下りたタイミングで遠くから低い重低音を鳴らしながら何かが近づいてきているのにアタシ達は気づいた。
エアロトレインがこっちに近づいてきている……?
これだけ混乱しているのなか電車が動いているのはおかしい。それに、こっちに向かってきているのであれば地下道に降りることができない。
「ウソだろ……!?」
ホームに侵入してきたエアロトレインを見たフォルテが悪態をついた。
それが単に地下道に降りれないからというわけではなく、中に数人乗っていることを指して言っていることにアタシもすぐに気づいた。エアロトレインの中に乗客ではなく武装した警備員が数名乗っていることに……
「どうする?反対側の階段からまた上に行く?」
「いや……上は警備員が張っている可能性があるから……こっちだッ!」
フォルテはホームから階段横のトイレの方を指さした。
幸いエアロトレインは両側から降りれるということもあって、警備員達はたまたま反対のホームの方を向いていたおかげでまだこっちに気づいていない。
アタシ達はその隙に急いで階段横の女子トイレに入り、10個ある個室の入り口から一番奥の中に逃げ込んだ。
「クソッ!?どこに行きやがったッ!?」
階段を下りてきたFBI数名が大声で話す声が入り口の方から聞こえてくる。
アタシ達は見つからないように息を顰める。
「まだ遠くには行っていないはずだッ!!お前達はあっちを探せ!俺は念のためこっちを調べる!」
トイレの外でFBI達がそれぞれ走っていく音が聞こえて遠ざかっていくなか、一人だけが立ち止まって中に入ってきた。
ゆっくりとした足取りでトイレに侵入してきたその男は、慎重に一つ一つをクリアリングしていく。
一個、また一個と、ゆっくりと調べていく音に、アタシは息を呑むことすら音が出るのをおそれてできなくなっていた。
自分の心臓の音が、胸に手を当てていなくてもドクンッ!ドクンッ!と普段よりも大きく早く鼓動しているのが伝わってきて、額から冷たい嫌な汗が一滴流れ落ちた。
「おいッ!そこに隠れているには分かっている!大人しく出てこいッ!」
9個目を調べ終えたFBI捜査官が最後の一つに向けて外から大声で叫んだ。
返事はない。
アタシもフォルテも音を一切出さないように押し黙っていた。
「外から銃撃しても構わないんだぞッ!」
FBI捜査官が返事がないことなど気にせずに大声でもう一度忠告してきた。
もちろん返事はしない。
女子トイレ内が数秒の沈黙に包まれる。
「そうかッ!!死んでも後悔するなよ!」
バリバリバリバリッ!
FBI捜査官はそう言い放ってから、持っていたアサルトライフルを最後の個室に向けて連射した。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
「ただの経費削減ですが?」 銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです
空木 架
SF
日本の企業で総務として働く星野明日虎(32歳)は、ある日突然、見知らぬ宇宙の帝国へと転移してしまう。彼が配属されたのは、整理整頓もままならない「銀河最弱」の補給艦隊だった!
ひょんなことから戦艦の艦長に任命されてしまった明日虎だが、宇宙の戦い方など全く分からない。そこで彼が武器にしたのは、長年の社畜生活で培った「経費削減」と「在庫管理」のスキルだった。
「弾薬の無駄遣い禁止!」「エンジンはこまめに切れ!」――ただ徹底的なコストカットと業務効率化を推し進めただけなのに、それがなぜか「天才的な軍事戦略」として周囲に大勘違いされていく。
個性豊かな仲間たちと共に、最弱だった倉庫部門を最強の組織へと育て上げる、痛快・お仕事&成り上がりSFファンタジー!
※この作品は、「小説家になろう」「カクヨム」でも連載しています
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~
日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ―
異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。
強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。
ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる!
―作品について―
完結しました。
全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる