SEVEN TRIGGER

匿名BB

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揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》

揺れる二つの銀尾《ダブルパーソナリティー》9

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「えッ!?いやぁぁぁぁ!!!!」
 二階とはいえジャンボジェット機の高さとほぼ同じ、約20mくらいの位置からガラスを突き破って外に飛び出したフォルテの後ろでアタシは悲鳴を上げた。
 以前ケンブリッジ大学の時も15mくらいから降りたことはあったけど、あの時はフォルテがアタシのことを考慮して壁伝いにゆっくり降りてくれたが、今回はそれとは全く違う。
 まさに紐無しバンジーの状態でビルの6~7階から飛び降りたのと同じ状態。
 自由落下するアタシ達に激しい風圧が襲い、アタシの着ていた黒のプリーツスカートをバサバサと弄び、自慢のポニーテールは地面に逆らって上を向いた状態で一匹の蛇のように小刻みに揺れ動いた。瞼が上手く開けられず視界が暗く狭まるが、刻一刻と白いコンクリートの地面が近づいてくるのが分かる。
 怖い────
 内臓が死神に鷲掴みにされたように全身をあのフワッとした嫌な感覚が襲い、身体の力が抜けていくような気がした。
「セイナッ!!」
 フォルテが強くアタシの名前を呼びかけた。
 その声にハッとして抜けかけていた全身に力を再度込めてフォルテの背にがっちりとしがみ付いた。
 そうだッ!フォルテはアタシに信じろと言った!だから────
「大丈夫よッ!!」
 それを信じてやるのがパートナーってもんでしょッ!!
 アタシはそう決心して目をキツく閉じたままフォルテにしがみついた。
 フォルテの全身が再び紅く、さっきよりもさらに濃い紅いオーラに包まれていく。
 フォルテに密着しているアタシの身体がそのオーラに触れてどこか温かいような感覚が伝わってくる。
 力強くもあり、それでいてどこか心が休まるような優しい感覚。ケンブリッジ大学の時には感じなかったその感覚にアタシは身を委ねた。
「行くぞォォォォ!!」
 地面に激突する瞬間フォルテが叫んだ。
 ドォォォォンッ!!
 地面に両足で着地したフォルテの足元に人間が出したものとは思えない衝撃音が響き、アタシ達を中心にコンクリートの地面が蜘蛛の巣状にヒビが入る。足で殺しきれなかった勢いで前のめりに倒れたフォルテは、身体を支えるようにして両膝と右手をついた四つん這いならぬつん這いの状態になった。
「痛ッテェェェェ!!」
 フォルテは眼をギュッとキツく閉じて素早く能力を切った状態に戻りつつ、口を大きく開けながら痛みに呻いた。それでもフォルテはビルの6~7階から42㎏背負った状態で飛び降りたのにもかかわらず、大怪我どころか軽症で済んでいた。しかも背負われていたアタシに至っては全くの無傷だった。
 生きてる────
 だが、今のアタシたちはそんな奇跡のような体験を喜んでいる暇は無かった。
「早く行くわよッ!!」
 素早く背中から降りたアタシはフォルテの左腕の間に肩を貸すようにして身体を支え、一階のガラス窓の方に小走りで向かっていく。
 バリバリバリバリッ!!
 二階の頭上からアタシ達に向けてFBI達がアサルトライフルを撃ち下ろしてくる。
「クッ!」
 アタシはガラス窓に向けて、右手で持ったグロック17を構え、走ったまま数発銃弾を撃ちこむ。
「せーのッ!」
 バリンッ!!
 そのままフォルテと一緒にガラスに体当たりして空港ラウンジBコンコースの一階内部に倒れ込んだ。
 辺りを見渡すと、幸い一般客はもうすでに逃げ出したあとのようで警備員とFBIも含めてアタシたち以外の姿は見当たらなかった。
 それにここはさっきまでいたショッピングモールのような広い空港ラウンジと違い、上と下に続く階段が両サイドにある狭い通路だった。
 恐らくここは二階に上がる階段と、地下のエアロトレインBコンコース駅に向かうための階段だろう。
 エアロトレインとはこのワシントン・ダレス空港のA~Cの空港ラウンジコンコースとメインターミナルビルを繋ぐ乗客輸送用の地下鉄のことで、出口のあるメインターミナルに行けるはずなのだが。
 アタシ達を逃がさないために多分もう運航してないでしょうね……
「追手が来る前に早く逃げるわよ……」
「おう……」
 アタシはフォルテにそう呼びかけながら再び肩を貸すようにして立ち上がらせる。
「足、どこか痛めたの?」
 誰もいなくなった狭い通路を二人三脚のような感じの小走りで地下の方向に向かって逃げる中、左足を引きずっていたフォルテに声を掛けた。
「骨は多分折れてない……ただ、着地の衝撃で足首と膝の関節を痛めたみたいだ。能力を一瞬だけ限界の10倍まで引き上げたから大丈夫だと思ったんだけど……」
 歩くたびに痛むのか、フォルテは少し息荒げにそう答えた。
「……地下鉄は動いてなくても地下道に降りれば身を隠せるかもしれないわ、助けてもらって悪いけど、今は身を隠せるまで我慢して……」
「悪い迷惑かけて……能力を使えば多少は動けるようにはなると思うんだが無駄な消耗は避けたいだ……だからもし敵と交戦になって俺が足手まといになるようならお前は構わず逃げろ」
「こんな時になにふざけたこと言ってるのッ!?ハリウッド映画級のアクション決めて自分酔ってるのか知らないけど、冗談でもそんなこと言わないで!」
 アタシの言葉にフォルテが意外そうに右眼を見開いてキョトンとする。
「貴族たるもの受けた恩は忘れるべからず、これはアタシの母である女王陛下の教えよ!それに、アタシ達はパートナーになったんでしょ?パートナーはどんな時でも相棒を見捨てたりしないわ!いい?分かったら無駄口叩く前に足を動かしなさい!バカッ……」
 アタシの話しを少し俯き気味で聞いていたフォルテは数秒の沈黙の後────
「プッ……フフフフッ……」
 と急に小さく噴き出してから苦笑いを浮かべた。
「なによ?」
「いや、まさかセイナからそんなこと言われるとは思ってなかっただけさ……」
「なにそれ?アタシにことなんだと思っているのよ?」
「別に、真面目なお嬢様としか思ってないよ……ただ今回は俺の責任とミスで犯罪者の片棒を担がせる羽目になっちまったから流石に怒っていると思ってな」
 あ……確かに言われてみればそうだった。紐無しバンジーのせいですっかり忘れてたけど……
「そう言われたら無性にアンタを置いていきたくなったわ……」
「ちょッ!?今更心変わりは勘弁してくれッ!貴族たるものなんたらじゃなかったの!?」
「今からでもアンタを差し出して「脅されてました」って言えば助かるかも……」
「それも相棒見捨ててんじゃん!?それにもうセイナも入国審査官に危害加えてるからもう
 遅いって……イダダダダッ!!」
「無駄口叩く前に足を動かせって言ったのもう忘れたの?大体誰のせいでそうなったのよ!?あと、それに対する謝罪の言葉もまだ聞いてないんだけどッ!」
 アタシが無駄口をたたくフォルテの左頬を思いっきり左手でつねる。
「イデデデッ!|わるあったって悪かったってッ!もうよへいなほともう余計なこといわないはらゆなひて言わないから放してッ!」
 涙目で謝罪しながらそう懇願してきたフォルテの頬からアタシは「ふん!」と鼻を鳴らしながら手を離した。
「分かればいいのよ分かれば」
 アタシはそう吐き捨ててフォルテと一緒に階段を下ろうとした瞬間────
「いたぞッ!!あそこだッ!」
 警備員ではなくFBIが数十m後ろの二階の階段から駆け下りてきた。
「クソッもう来やがったかッ!」
「追いつかれる前に早く行くわよ!」
 アタシ達は急いで階段を駆け下りる。
「見えた!地下鉄だわ!」
 階段を下りた先、地上の光の差し込まない天井の照明だけで照らされた広い空間に出る。
 エアロトレインの通る線路とホームの間は、乗客落下防止用のガラス窓で区切られている。
 このガラスを撃って地下鉄に降りれば────
 ブゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
 と階段を下りたタイミングで遠くから低い重低音を鳴らしながら何かが近づいてきているのにアタシ達は気づいた。
 エアロトレインがこっちに近づいてきている……?
 これだけ混乱しているのなか電車が動いているのはおかしい。それに、こっちに向かってきているのであれば地下道に降りることができない。
「ウソだろ……!?」
 ホームに侵入してきたエアロトレインを見たフォルテが悪態をついた。
 それが単に地下道に降りれないからというわけではなく、中に数人乗っていることを指して言っていることにアタシもすぐに気づいた。エアロトレインの中に乗客ではなく武装した警備員が数名乗っていることに……
「どうする?反対側の階段からまた上に行く?」
「いや……上は警備員が張っている可能性があるから……こっちだッ!」
 フォルテはホームから階段横のトイレの方を指さした。
 幸いエアロトレインは両側から降りれるということもあって、警備員達はたまたま反対のホームの方を向いていたおかげでまだこっちに気づいていない。
 アタシ達はその隙に急いで階段横の女子トイレに入り、10個ある個室の入り口から一番奥の中に逃げ込んだ。
「クソッ!?どこに行きやがったッ!?」
 階段を下りてきたFBI数名が大声で話す声が入り口の方から聞こえてくる。
 アタシ達は見つからないように息を顰める。
「まだ遠くには行っていないはずだッ!!お前達はあっちを探せ!俺は念のためこっちを調べる!」
 トイレの外でFBI達がそれぞれ走っていく音が聞こえて遠ざかっていくなか、一人だけが立ち止まって中に入ってきた。
 ゆっくりとした足取りでトイレに侵入してきたその男は、慎重に一つ一つをクリアリングしていく。
 一個、また一個と、ゆっくりと調べていく音に、アタシは息を呑むことすら音が出るのをおそれてできなくなっていた。
 自分の心臓の音が、胸に手を当てていなくてもドクンッ!ドクンッ!と普段よりも大きく早く鼓動しているのが伝わってきて、額から冷たい嫌な汗が一滴流れ落ちた。
「おいッ!そこに隠れているには分かっている!大人しく出てこいッ!」
 9個目を調べ終えたFBI捜査官が最後の一つに向けて外から大声で叫んだ。
 返事はない。
 アタシもフォルテも音を一切出さないように押し黙っていた。
「外から銃撃しても構わないんだぞッ!」
 FBI捜査官が返事がないことなど気にせずに大声でもう一度忠告してきた。
 もちろん返事はしない。
 女子トイレ内が数秒の沈黙に包まれる。
「そうかッ!!死んでも後悔するなよ!」
 バリバリバリバリッ!
 FBI捜査官はそう言い放ってから、持っていたアサルトライフルを最後の個室に向けて連射した。
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