SEVEN TRIGGER

匿名BB

文字の大きさ
164 / 361
赤き羽毛の復讐者《スリーピングスナイパー》

鎮魂の慈雨《レクイエムレイン》5

しおりを挟む
「まさか……またあのレーザーが撃てるの!?」

 ボクが七発装填の銃をリロードしている最中……真下で何かしていた二人の動向を見ていたセイナが後ろからそう告げる。
 セイナの言う通り、視界の端に映ったグリーズとか言う機械人形が、ボクに浴びせてきたレーザーと同じ挙動を開始していた。
 漂う光の粒子を吸収するように、不気味な黄色い一つ目の点滅する速度がみるみる上がっていく────そして……

 バスゥゥゥゥゥゥ……

 煌めきが限界まで高められた瞬間、タイヤの空気が抜けたような音を響かせたグリーズは静かに沈黙した。

「ふ、不発……!?」

 それを見たセイナが驚愕で眼を剥く。
 あれだけ注目を集めておいてなにも起こらなかったことに、どこか肩透かしを食らったといった感じだ。
 いや違う。これは……!

「ありがとう……フォルテ……!」

 カチッ!カチッ!ダァァァァァン!!!!

 彼が成そうとしていた意味を理解したボクは素早くボルトレバーを引き、猛烈な魔力を込めた銃弾を発射する。
 狙いはスコープ越しに映っていた、父さんのかたき。奴に向かってボクの銃弾は、風による爆発的なスピードでベトナムの曇り空を突き抜けていく。
 フォルテ達はきっとレーザーを撃って援護しようとしたんじゃない。少しでも敵から注意を引いてくれようとしたんだ。グリーズのレーザーを撃つふりをすることで、その脅威を知っている奴の気を引き隙を作る……この拮抗状態きっこうじょうたいに変化を与えてくれようとしたんだ。
 それが例えたった数秒……いや、数瞬かもしれない……だけどボクにとってそれは、勝利を勝ち取るために必要だった運命を左右するときだった。

「きゃッ……!」

 竜巻の如く、大気を揺るがす銃弾の突風がボク達の長い髪をバサバサと弄び、セイナから小さな悲鳴を引き出す。
 スコープ越しの父の仇も、それに気づいて慌てて応射する……だが、ボクの銃弾は奴の放った銃弾の真下をすり抜けていった。父の仇であるスナイパーが小さく動揺を露わにした。
 強力な魔力を含んだ銃弾が織りなす回転……さっきボクは魔力の込め過ぎて跳ね上がったポップアップした銃弾を敢えて逆手に取り、野球選手の投げるボールの伸びと同じ軌道をイメージしながら銃弾をやや下方気味に放った。
 結果、奴の真っすぐに飛んできた銃弾をボクの銃弾が緩いU字軌道で躱し、目標に向かって突き進む。
 それでも父の仇であるスナイパーは抵抗を諦めない。素早くボルトアクションライフルのレバーを引き、再び銃弾を放とうとするが────

「……ッ!?」

「……これは……」

 スコープ越しに映っていたスナイパーが顔を覆い、セイナの口から声が零れる。
 雲の切れ間から突然、美しい陽の光がボク達の間に差しまれたのだ。薄い絹のカーテンのようなそれをスコープ越しに覘いてしまった奴は、その眩しさの余り反射的に顔を覆ってしまったのだ。
 これはもちろん偶然なんかではない。風を斬る弾丸ウィンドシュナイド。ありったけの魔力を込めた銃弾が大気を切り裂き、その反動で空を覆っていた雲すら吹き飛ばしたのだ。
 奇襲、大技。そのどちらもが絡み合い、ボクの放った風を斬る弾丸ウィンドシュナイドはとうとう奴に────

「……ヒット」

 スコープ越しに映っていたスナイパーの右腕が吹き飛び、その場にしゃがみ込んだのを確認した刹那、ぐらりと視界が歪んだ。いや、正確には歪んだというよりも、角度が90度近くずれたのだ。

「グッ……!!」

 声を上げたのはセイナだった。
 ボクの視界がずれたのではなく、光り輝く翼をセイナが態勢を崩したのだ。
 奴の放った銃弾はボクにではなく、後ろのセイナの神器とやらに着弾したのだ。
 てっきりボクに目掛けて飛んでくると思っていた弾丸が来なかったことに、優秀だと思っていたスナイパーでも、手元が狂うことがあるのか?と、どこか釈然としない思いがこみ上げたが、戦いが終わったその瞬間から、そんなことはどうでもいい……とすぐに考えるのを止めてしまう。

「片方だけだと……無理……!耐えられないッ……!」

 片翼を失い、二人の体重を支えきれなくなったセイナが必死に態勢の立て直しを図るも、墜落する飛行機と同じように空中をくるくると錐揉きりもみみしながら落ちていく。

「……ヤバそうなら手を貸そうか?」

「い、いや……大丈夫!!何とかできそうッ……!!」

 バタバタと片翼でセイナが頑張ってくれているおかげで、死を感じない程度には緩く落ちている。下手にこれ以上声をかけて手元が狂っては元も子も無いので、ボクはそれ以上何も言わなかった。
 正直今は、落下を止めるための魔力も、喋るために必要なエネルギーを使うのも惜しいくらい身体に眠気が襲ってきている。多分寝たら当分は目を覚ましそうにないな、これ。
 ────それでもせめて泥のように眠る前に、父さんの仇がどんな奴かだけは見ておきたい……
 そして聞き出すんだ。何故父さんが殺されたのかを。
 閉じかけた瞼の隙間から、さっきまで米粒のように小さかった機械人形グリーズが、巨大だと感じるほど地上へと近づき、フォルテとロナ……に踏まれた気絶中の小デブの姿が薄っすらと映っていた。





 インカム越しの狙撃結果ヒットコールに俺とロナが地上でハイタッチをかます中、深海に差し込んだ木漏れ日のような光────が差し込むアスファルトの地面を着地点に、頭部を真下に向けたセイナ達がゆっくりと下降してきていた。まるで空から天使が舞い降りてきたように。
 ロナが糸で受け止めようとするまでも無く、着地前に大きく羽ばたいたタングリスニ?タングニョースト?……どっちか分からんが、その片翼がセイナ達を一瞬だけ空中に制止させ、スタンッ……履いていたアサルトブーツの音を響かせる。

「狙撃は無事に……て、もう寝てやがるのか?」

「……」

 抱っこされていたアイリスは、セイナが手を離してもピクリとも動かない。
 その姿は、フィギュアを机に立てた時のように微動だにしない……こえーよ、ちゃんと生きてるんだよなこれ?

「その狙撃された片翼は大丈夫なの?」

 ひょこっと俺とセイナの間に図々しく入り込んできたロナが消えた翼を見ていた。

「多分大丈夫……だと思うわ。アタシもこれが撃たれたところを見たことないけど、ほら!こうやってリングも残ってるから時間が経てばまた使えるわ」

 そう言ってセイナが右腕に付けたブレスレッドを掲げる。
 良かった。折角回収できた神器を壊されたなんてエリザベス三世に報告したら、俺がどんな嫌がらせを受けるか分かったもんじゃないしな。

「アイリスも……って、あれ?アイリスは何処に行ったの?」

 さっきまで抱えていたセイナが意味不明なことを呟いた。
 何処行ったってお前な……今もここで寝てる……

「あれ!?」

 俺は驚愕で眼を見開いた。
 つい数瞬前までそこに居たはずのアイリスが、神隠しのように忽然と姿を消していた。

「あぁ!!あそこ!!」

 ロナが指差した先、チャップリンのスーツの下に隠されていた恐らく脱出用のパラシュート────を担いだアイリスが、地上でそれを展開させる。

「お前まさか……!?」

 俺達三人に風が押し付けられる。
 セイナ、ロナは顔を覆ったが、何をしようとしてるのか気づいた俺はがむしゃらに走り、地上から飛び立ったアイリスの足にギリギリでしがみ付いた。

「フォルテ!!」

 背後から声を震わせたセイナが心配そうな声を上げる中、展開されたパラシュートが魔力の風に乗り、地上がどんどん遠くなっていく。アイリスを真下から覗くが……だめだ、完全に魔力消費を抑える省エネモードに入っていて、俺が掴んだことすら気づいていない様子だった。
 こうなってしまっては仕方ない……

「大丈夫だ!!コイツは父の仇を見に行こうとしているだけだ!!二人は先に逃走用の車を用意しておいてくれ!!」

 咄嗟にそう叫ぶが、二人の姿はみるみる小さくなっていった。
 インカムも付けているから多分伝わったとは思うが……
 時間がない上、あまり長居はできない……だが、これでようやく散々苦戦させられた魔術弾マジックブレット使いの正体が判明する……!
 一体どんな奴なのか、父の仇にアイリスは何を思うのか……俺は珍しく僅かな緊張感じながら眉間のシワを深くさせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます! 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...