SEVEN TRIGGER

匿名BB

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赤き羽毛の復讐者《スリーピングスナイパー》

鎮魂の慈雨《レクイエムレイン》5

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「まさか……またあのレーザーが撃てるの!?」

 ボクが七発装填の銃をリロードしている最中……真下で何かしていた二人の動向を見ていたセイナが後ろからそう告げる。
 セイナの言う通り、視界の端に映ったグリーズとか言う機械人形が、ボクに浴びせてきたレーザーと同じ挙動を開始していた。
 漂う光の粒子を吸収するように、不気味な黄色い一つ目の点滅する速度がみるみる上がっていく────そして……

 バスゥゥゥゥゥゥ……

 煌めきが限界まで高められた瞬間、タイヤの空気が抜けたような音を響かせたグリーズは静かに沈黙した。

「ふ、不発……!?」

 それを見たセイナが驚愕で眼を剥く。
 あれだけ注目を集めておいてなにも起こらなかったことに、どこか肩透かしを食らったといった感じだ。
 いや違う。これは……!

「ありがとう……フォルテ……!」

 カチッ!カチッ!ダァァァァァン!!!!

 彼が成そうとしていた意味を理解したボクは素早くボルトレバーを引き、猛烈な魔力を込めた銃弾を発射する。
 狙いはスコープ越しに映っていた、父さんのかたき。奴に向かってボクの銃弾は、風による爆発的なスピードでベトナムの曇り空を突き抜けていく。
 フォルテ達はきっとレーザーを撃って援護しようとしたんじゃない。少しでも敵から注意を引いてくれようとしたんだ。グリーズのレーザーを撃つふりをすることで、その脅威を知っている奴の気を引き隙を作る……この拮抗状態きっこうじょうたいに変化を与えてくれようとしたんだ。
 それが例えたった数秒……いや、数瞬かもしれない……だけどボクにとってそれは、勝利を勝ち取るために必要だった運命を左右するときだった。

「きゃッ……!」

 竜巻の如く、大気を揺るがす銃弾の突風がボク達の長い髪をバサバサと弄び、セイナから小さな悲鳴を引き出す。
 スコープ越しの父の仇も、それに気づいて慌てて応射する……だが、ボクの銃弾は奴の放った銃弾の真下をすり抜けていった。父の仇であるスナイパーが小さく動揺を露わにした。
 強力な魔力を含んだ銃弾が織りなす回転……さっきボクは魔力の込め過ぎて跳ね上がったポップアップした銃弾を敢えて逆手に取り、野球選手の投げるボールの伸びと同じ軌道をイメージしながら銃弾をやや下方気味に放った。
 結果、奴の真っすぐに飛んできた銃弾をボクの銃弾が緩いU字軌道で躱し、目標に向かって突き進む。
 それでも父の仇であるスナイパーは抵抗を諦めない。素早くボルトアクションライフルのレバーを引き、再び銃弾を放とうとするが────

「……ッ!?」

「……これは……」

 スコープ越しに映っていたスナイパーが顔を覆い、セイナの口から声が零れる。
 雲の切れ間から突然、美しい陽の光がボク達の間に差しまれたのだ。薄い絹のカーテンのようなそれをスコープ越しに覘いてしまった奴は、その眩しさの余り反射的に顔を覆ってしまったのだ。
 これはもちろん偶然なんかではない。風を斬る弾丸ウィンドシュナイド。ありったけの魔力を込めた銃弾が大気を切り裂き、その反動で空を覆っていた雲すら吹き飛ばしたのだ。
 奇襲、大技。そのどちらもが絡み合い、ボクの放った風を斬る弾丸ウィンドシュナイドはとうとう奴に────

「……ヒット」

 スコープ越しに映っていたスナイパーの右腕が吹き飛び、その場にしゃがみ込んだのを確認した刹那、ぐらりと視界が歪んだ。いや、正確には歪んだというよりも、角度が90度近くずれたのだ。

「グッ……!!」

 声を上げたのはセイナだった。
 ボクの視界がずれたのではなく、光り輝く翼をセイナが態勢を崩したのだ。
 奴の放った銃弾はボクにではなく、後ろのセイナの神器とやらに着弾したのだ。
 てっきりボクに目掛けて飛んでくると思っていた弾丸が来なかったことに、優秀だと思っていたスナイパーでも、手元が狂うことがあるのか?と、どこか釈然としない思いがこみ上げたが、戦いが終わったその瞬間から、そんなことはどうでもいい……とすぐに考えるのを止めてしまう。

「片方だけだと……無理……!耐えられないッ……!」

 片翼を失い、二人の体重を支えきれなくなったセイナが必死に態勢の立て直しを図るも、墜落する飛行機と同じように空中をくるくると錐揉きりもみみしながら落ちていく。

「……ヤバそうなら手を貸そうか?」

「い、いや……大丈夫!!何とかできそうッ……!!」

 バタバタと片翼でセイナが頑張ってくれているおかげで、死を感じない程度には緩く落ちている。下手にこれ以上声をかけて手元が狂っては元も子も無いので、ボクはそれ以上何も言わなかった。
 正直今は、落下を止めるための魔力も、喋るために必要なエネルギーを使うのも惜しいくらい身体に眠気が襲ってきている。多分寝たら当分は目を覚ましそうにないな、これ。
 ────それでもせめて泥のように眠る前に、父さんの仇がどんな奴かだけは見ておきたい……
 そして聞き出すんだ。何故父さんが殺されたのかを。
 閉じかけた瞼の隙間から、さっきまで米粒のように小さかった機械人形グリーズが、巨大だと感じるほど地上へと近づき、フォルテとロナ……に踏まれた気絶中の小デブの姿が薄っすらと映っていた。





 インカム越しの狙撃結果ヒットコールに俺とロナが地上でハイタッチをかます中、深海に差し込んだ木漏れ日のような光────が差し込むアスファルトの地面を着地点に、頭部を真下に向けたセイナ達がゆっくりと下降してきていた。まるで空から天使が舞い降りてきたように。
 ロナが糸で受け止めようとするまでも無く、着地前に大きく羽ばたいたタングリスニ?タングニョースト?……どっちか分からんが、その片翼がセイナ達を一瞬だけ空中に制止させ、スタンッ……履いていたアサルトブーツの音を響かせる。

「狙撃は無事に……て、もう寝てやがるのか?」

「……」

 抱っこされていたアイリスは、セイナが手を離してもピクリとも動かない。
 その姿は、フィギュアを机に立てた時のように微動だにしない……こえーよ、ちゃんと生きてるんだよなこれ?

「その狙撃された片翼は大丈夫なの?」

 ひょこっと俺とセイナの間に図々しく入り込んできたロナが消えた翼を見ていた。

「多分大丈夫……だと思うわ。アタシもこれが撃たれたところを見たことないけど、ほら!こうやってリングも残ってるから時間が経てばまた使えるわ」

 そう言ってセイナが右腕に付けたブレスレッドを掲げる。
 良かった。折角回収できた神器を壊されたなんてエリザベス三世に報告したら、俺がどんな嫌がらせを受けるか分かったもんじゃないしな。

「アイリスも……って、あれ?アイリスは何処に行ったの?」

 さっきまで抱えていたセイナが意味不明なことを呟いた。
 何処行ったってお前な……今もここで寝てる……

「あれ!?」

 俺は驚愕で眼を見開いた。
 つい数瞬前までそこに居たはずのアイリスが、神隠しのように忽然と姿を消していた。

「あぁ!!あそこ!!」

 ロナが指差した先、チャップリンのスーツの下に隠されていた恐らく脱出用のパラシュート────を担いだアイリスが、地上でそれを展開させる。

「お前まさか……!?」

 俺達三人に風が押し付けられる。
 セイナ、ロナは顔を覆ったが、何をしようとしてるのか気づいた俺はがむしゃらに走り、地上から飛び立ったアイリスの足にギリギリでしがみ付いた。

「フォルテ!!」

 背後から声を震わせたセイナが心配そうな声を上げる中、展開されたパラシュートが魔力の風に乗り、地上がどんどん遠くなっていく。アイリスを真下から覗くが……だめだ、完全に魔力消費を抑える省エネモードに入っていて、俺が掴んだことすら気づいていない様子だった。
 こうなってしまっては仕方ない……

「大丈夫だ!!コイツは父の仇を見に行こうとしているだけだ!!二人は先に逃走用の車を用意しておいてくれ!!」

 咄嗟にそう叫ぶが、二人の姿はみるみる小さくなっていった。
 インカムも付けているから多分伝わったとは思うが……
 時間がない上、あまり長居はできない……だが、これでようやく散々苦戦させられた魔術弾マジックブレット使いの正体が判明する……!
 一体どんな奴なのか、父の仇にアイリスは何を思うのか……俺は珍しく僅かな緊張感じながら眉間のシワを深くさせた。
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