暗闇の中ただ君の存在だけが光だった

もやし

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百地丹波という男

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丹波は爆音の聞こえた方に駆けつける。
そこには男から逃げようと必死に足掻いている少女がいた。年は16か17歳ぐらいだろう。真紅の瞳に夜空に浮かぶ月のような銀色の長い髪、白装束のような服を押し上げる胸に引き締まったボディーライン。とても印象的で美少女と言い表すに相応しかった。

「何者かは知らんがその少女を離せ!」
丹波はそう言うと、右手の中指についている月桂樹の葉が掘られた指輪を見せる。
ーこの邪馬台国にとって月桂樹とは国の国旗に描かれるほど神聖なものである。そしてそれが意味するもの。
「まさか貴様、魔法帥。だがありえん。この国3番目の権力者がこんなところにいるはずがない。それに魔力量があまりにも少なすぎる。噂では魔法帥はミリオンホルダーのはず。」
「ご名答。俺は現、邪馬台国が魔法帥。百地丹波だ。事情により魔力量は少ないがミリオンホルダーでもある。わかったら少女を離せ」
声には怒気と殺意がこもっている。
普通の人間なら殺気に耐えられず凍りついたかのような固まってしまうだろう。だが目の前の敵は違った。殺気を受けても何事も無かったかのように平然としている。丹波は瞬時に敵の力量を理解した。
その時だ。一瞬の隙を見て少女は男の腕を振り払う。丹波はそれを見るや否や地面を強く蹴り少女を左手で抱える。それと同時に左足を軸に90°回転し少女を後ろにかばう形をとる。
さらに回転運動によって前に出た右手で敵の魔法攻撃を無効化する。一瞬にして炎がブラックホールに呑み込まれたかのように消える。男は即座に丹波が使った魔法がマジックキャンセラーだと理解する。
男は魔法では不利だと理解し間合いを取りつつ鞘から刀を抜く。
丹波もそれに反応するかのように鞘を握り、敵が自分の間合いに入ってくるのを待つ。
男は身体と刀に強化魔法をかけ、刀が白色に発光する。
刹那、男は丹波との間合いを一気に詰める。丹波は刀と手足のみに強化魔法かけ、さやから抜ける時の反動で加速する刀身をさらに加速させ、真向から受け止める。
丹波は刀が当たる瞬間、魔力を自身の腕に重点的に集め、破壊する。だがそれだけではない終わらない、丹波の刀は破壊するだけでは飽き足らず男の体に刀が突き刺さる。
男からおびただしいほどの血液が漏れる。それはさながら噴火したばかりのマグマのようだった。このままでは男は死しんでしまうだろう。丹波はそれを好機だと思い、交渉を持ちかける。
「俺の質問に答えれば治療をすることを約束しよう。では質問だ。貴様一体何者だ?帝国式剣術は帝国陸軍、特務魔法部隊にのみ教えられる剣術のはずだ。そんなエリートが何故道を踏み外した。そして何故この少女を狙う?」
男は自分で傷口を押さえつつ掠れた声で必死に喉を震わせる。
「そうだ。俺は元、特務魔法部隊だ。だが国に使えることがばからしくなったから辞めた。そして今はフリーの賞金稼ぎをしている。依頼主は知らんが彼女が狙われる理由は知っている。だがその少女から聞いた方が詳しいことがわかると思うぞ。だがら早く治療し」
てくれとは続かなかった。男は気を失ってしまった。
男の服は真っ赤に染まり、地面一面に血液が漏れている。さらに脈拍が早くなり、冷たくなっていくのを感じる。それは誰が見ても早く治療しなければならないとわかるほど危険な状態だった。
「癒し魔法。治療の泉」
危険な状態だった男は一瞬にして意識を取り戻し脈拍と体温も正常に戻る。
「約束は守ったぞ。ゲート。」
丹波の足元に黒色の水溜まりのようなものが現れる。そして丹波と少女は墓を後にした。

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