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屋敷へ 3*
陽斗はただならぬ予感を覚えて指先を強張らせた。自分の中の小心な部分が顔をのぞかせて、恐怖にブルリとわななく。
「嫌ならやめておくかい? 僕は強要しないよ」
「やめたら、どうなるんですか」
「契約はなしだ」
「じゃあ、光斗のことも」
「そうだね」
陽斗は診察台を見ながら、なけなしの勇気を振り絞った。ここまできて怖いから引き返すというわけにはいかない。両手を握りしめ、腹から声を絞り出した。
「……わかりました」
「いい子だ」
陽斗は高梨の横で、服を脱いだ。震える手でベルトに手をかけ、男の視線を感じながらデニムパンツとその下のボクサーパンツを取り去る。くるぶしまでの長さのソックスも脱ぐ。そしておずおずと診療台に近よった。
「そこに座って。それから足おきに、膝をのせて」
言われるがままに足をひらいて座り、両側の長細い台に腿をのせる。すると高梨が足の間にやってきた。
「いい眺めだね」
口角を片側だけ持ちあげて笑う。陽斗は羞恥に唇をかみしめた。
俯く陽斗の前で、高梨が背広の上着を脱いで、シャツの腕をまくりあげる。それから部屋の隅にあったスツールを持ってきて、陽斗の足の間に座った。足おきにのせられた足を、ベルトで固定していく。
「なんで縛るんですか……」
「感じすぎて暴れちゃうから」
「……」
縛られる腿が震える。けれど高梨は、まるで作業のように淡々と手を動かした。両足が結束されると、今度は椅子の下部にあるレバーを回して足おきの角度を変えていった。
腿ももが徐々に持ちあがり、足の間が彼に丸見えの状態になる。高梨には前に一度、股間を見られてはいるがさすがにこれは恥ずかしすぎる体勢だ。
「君もオメガだから知っていると思うけど、オメガは体内に子供をもうける器官が存在する。オメガ宮という名称で呼ばれるものだ。普段はとても小さな、ウズラの卵のような形状をしていて、年頃になるとそこが熟れてフェロモン分泌腺を刺激するようになる場所だ」
高梨が横にあった小机を引きよせる。そうしながら話を続けた。
「成人しても発情しないオメガを研究した論文をいくつも取りよせて読んでみたところ、どうやらそのオメガ宮を刺激すれば、発情が誘発されるという結果を出した医師が何人かいた。メンタル面の不安定さから発情しないオメガにも成果があったと発表されていた」
「け、けど、その器官は、身体の奥にあって、刺激するって言ったって……」
机の上にあった鞄をあけると、そこには医療器具のようなものがいくつも並んでいた。シリコン製の管、ステンレス製の大小様々なマドラーのような棒。医療用ゼリー。
「オメガ宮そのものを刺激するんじゃなくて、前立腺のように、近くから刺激を与えるんだよ。それはちょうど、性器の下部、尿道の裏にあるんだ」
「……」
「つまり、尿道側から、ノックしてあげるんだね。快感で」
「……高梨さん」
相手を呼ぶ声が震えた。
「嫌だ、怖い……」
瞳に涙がたまる。何をされるのか、やっとわかってきた陽斗は、イヤイヤをするように小さく首を振った。
「お願い、やめて。他の方法をして。他なら何でもするから」
陽斗は前のめりになり、高梨に懇願した。それに高梨は冷酷に言った。
「君は僕の望むことを何でもすると言っただろう。そういう契約だったろ? 僕の望みはこれで、他の方法には興味がないんだよ」
穏やかに、けれどまるで人が変わってしまったかのように冷たく告げる。
もしかしてこの人は本当はとても残酷で、他人の気持ちの理解できない人間なのではないだろうか。そう思うと、背筋がガタガタとわななき始めた。
「そんな治療法は聞いたことないです。俺も医者にかかってるけど、そういう治療は勧められたことがない」
「嫌ならやめておくかい? 僕は強要しないよ」
「やめたら、どうなるんですか」
「契約はなしだ」
「じゃあ、光斗のことも」
「そうだね」
陽斗は診察台を見ながら、なけなしの勇気を振り絞った。ここまできて怖いから引き返すというわけにはいかない。両手を握りしめ、腹から声を絞り出した。
「……わかりました」
「いい子だ」
陽斗は高梨の横で、服を脱いだ。震える手でベルトに手をかけ、男の視線を感じながらデニムパンツとその下のボクサーパンツを取り去る。くるぶしまでの長さのソックスも脱ぐ。そしておずおずと診療台に近よった。
「そこに座って。それから足おきに、膝をのせて」
言われるがままに足をひらいて座り、両側の長細い台に腿をのせる。すると高梨が足の間にやってきた。
「いい眺めだね」
口角を片側だけ持ちあげて笑う。陽斗は羞恥に唇をかみしめた。
俯く陽斗の前で、高梨が背広の上着を脱いで、シャツの腕をまくりあげる。それから部屋の隅にあったスツールを持ってきて、陽斗の足の間に座った。足おきにのせられた足を、ベルトで固定していく。
「なんで縛るんですか……」
「感じすぎて暴れちゃうから」
「……」
縛られる腿が震える。けれど高梨は、まるで作業のように淡々と手を動かした。両足が結束されると、今度は椅子の下部にあるレバーを回して足おきの角度を変えていった。
腿ももが徐々に持ちあがり、足の間が彼に丸見えの状態になる。高梨には前に一度、股間を見られてはいるがさすがにこれは恥ずかしすぎる体勢だ。
「君もオメガだから知っていると思うけど、オメガは体内に子供をもうける器官が存在する。オメガ宮という名称で呼ばれるものだ。普段はとても小さな、ウズラの卵のような形状をしていて、年頃になるとそこが熟れてフェロモン分泌腺を刺激するようになる場所だ」
高梨が横にあった小机を引きよせる。そうしながら話を続けた。
「成人しても発情しないオメガを研究した論文をいくつも取りよせて読んでみたところ、どうやらそのオメガ宮を刺激すれば、発情が誘発されるという結果を出した医師が何人かいた。メンタル面の不安定さから発情しないオメガにも成果があったと発表されていた」
「け、けど、その器官は、身体の奥にあって、刺激するって言ったって……」
机の上にあった鞄をあけると、そこには医療器具のようなものがいくつも並んでいた。シリコン製の管、ステンレス製の大小様々なマドラーのような棒。医療用ゼリー。
「オメガ宮そのものを刺激するんじゃなくて、前立腺のように、近くから刺激を与えるんだよ。それはちょうど、性器の下部、尿道の裏にあるんだ」
「……」
「つまり、尿道側から、ノックしてあげるんだね。快感で」
「……高梨さん」
相手を呼ぶ声が震えた。
「嫌だ、怖い……」
瞳に涙がたまる。何をされるのか、やっとわかってきた陽斗は、イヤイヤをするように小さく首を振った。
「お願い、やめて。他の方法をして。他なら何でもするから」
陽斗は前のめりになり、高梨に懇願した。それに高梨は冷酷に言った。
「君は僕の望むことを何でもすると言っただろう。そういう契約だったろ? 僕の望みはこれで、他の方法には興味がないんだよ」
穏やかに、けれどまるで人が変わってしまったかのように冷たく告げる。
もしかしてこの人は本当はとても残酷で、他人の気持ちの理解できない人間なのではないだろうか。そう思うと、背筋がガタガタとわななき始めた。
「そんな治療法は聞いたことないです。俺も医者にかかってるけど、そういう治療は勧められたことがない」
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