霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太

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運命の家族会議

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成人の儀の失敗から数日が経った。僕は自室に籠もったまま、ほとんど外に出ることはなかった。食事も最小限で、リリーが持ってくる軽食を少しつまむ程度だった。

窓の外では、他の成人を迎えた若者たちの祝宴の余韻が続いていたが、僕の耳には遠い世界の出来事のように聞こえた。

ノックの音がして、リリーが部屋に入ってきた。

「アリストン様、家族会議が開かれます。大広間にお越しくださいとのことです」

僕は重い腰を上げた。この日が来ることは分かっていた。自分の運命が決まる瞬間だ。

大広間に向かう途中、廊下でエドガー兄さんとすれ違った。

「アリストン」エドガー兄さんは立ち止まり、僕の顔をじっと見た。「大丈夫か?」

僕は小さく頷いた。「はい、なんとか...」

エドガー兄さんは何か言いかけたが、結局黙ったまま歩き出した。その背中を見送りながら、僕は兄の気持ちを測りかねていた。

大広間に到着すると、既に家族全員が揃っていた。父上、エドガー兄さん、ヴィクター兄さん、そしてお祖母様。全員の表情が硬く、重苦しい空気が漂っていた。

「座りなさい、アリストン」父上の声は冷たかった。

僕は用意された椅子に座った。手が少し震えているのを感じる。

「今日の会議の目的は明白だ」父上は厳しい表情で切り出した。「アリストンの今後についてだ」

一瞬、部屋中が静まり返った。

「成人の儀での...お前の演技は、期待以下だった」父上の言葉に、僕は顔を伏せた。「ヴァンガード家の名に恥じない才能を示すことができなかった」

エドガー兄さんが口を開いた。「父上、アリストンにはまだ若さがあります。もう少し時間を...」

「いいえ、エドガー」ヴィクター兄さんが遮った。「現実を直視すべきだ。アリストンには、この家を担う能力がない」

僕は息を呑んだ。ヴィクター兄さんの言葉は痛かったが、反論する言葉が見つからなかった。

「私たちは長い間、アリストンの...特殊な才能を見守ってきた」父上は続けた。「しかし、幻影を見せるだけでは、この家の未来は担えない」

お祖母様が静かに口を開いた。「ロレンス、アリストンの能力は特別なものよ。時間をかければ...」

「母上」父上は厳しく言った。「今はその議論をする時ではありません」

僕はお祖母様に感謝の眼差しを向けたが、同時に胸が締め付けられる思いだった。

父上は深いため息をついた。「我々は決断を下さねばならない。アリストン、お前をヴェイルミストへ送ることにした」

「ヴェイルミスト...?」僕は驚いて顔を上げた。その名前は聞いたことがあった。家族の間で、追放同然の場所として時々話題に上がっていた辺境の領地だ。

「そこで、お前は領主として領地を治めることになる」父上の声に、わずかな同情が混じっているように聞こえた。「これが、お前に与えられた最後のチャンスだ」

エドガー兄さんが立ち上がった。「父上、それは酷すぎます。アリストンはまだ...」

「黙れ、エドガー」父上の声が鋭く響いた。「これは家の決定だ」

ヴィクター兄さんは冷ややかな目で僕を見た。「辺境の地で、お前の...特殊な才能が役立つことを願おう」

その言葉に、皮肉が込められているのは明らかだった。僕は言葉を失った。追放。その現実が、重い鉛のように胸に沈んでいく。

「はい...分かりました」かすれた声で答えるのが精一杯だった。

「決定事項だ」父上は厳しく言い切った。「アリストン、1週間後に出発の準備をしろ。必要な指示は後ほど伝える」

会議は終わり、家族たちが立ち去っていく。エドガー兄さんが一瞬立ち止まり、僕の肩に手を置いた。

「アリストン...」その声には、申し訳なさと無力感が混ざっていた。

「大丈夫です、兄さん」僕は弱々しく微笑んだ。「僕なりに...頑張ります」

エドガー兄さんは何か言いたげな表情を浮かべたが、結局黙ったまま部屋を出て行った。

最後に残った祖母が、僕を抱きしめてくれた。

「アリストン...強く生きるのよ」

「ありがとう、お祖母様」

お祖母様も去り、僕は一人、大広間に残された。窓から差し込む夕日が、僕の影を長く伸ばしていた。

追放。その言葉が、頭の中でエコーのように響く。
ヴェイルミスト。未知の地での生活。領主としての責務。
そのどれもが、僕にとっては遠い世界の出来事のように感じられた。

部屋に戻る途中、廊下の窓から外を見ると、ヴィクター兄さんが剣の訓練を始めていた。その姿は力強く、僕には今や別世界の人のように思えた。

自室に戻った僕は、ベッドに身を投げ出した。
天井を見つめながら、呟いた。

「オリヴィア...聞こえる?僕は...追放されることになったんだ」

返事はない……静寂だけが、僕を包み込む。
窓の外では、夜の帳が降り始めていた。
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