霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太

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遺跡への道

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意識が戻ったとき、僕は城の一室のベッドに横たわっていた。体の痛みは和らいでいたが、まだ微かに紫の霧が体内を巡っているのを感じる。

「目が覚めましたか、アリストン様」

エリザベスが心配そうな顔で僕を見下ろしていた。

「ああ...どれくらい眠っていたんだ?」

「丸一日です。レイモンド様も心配されていました」

僕はゆっくりと体を起こした。頭の中には、昏睡中に見た幻影がまだ鮮明に残っている。

「エリザベス、至急みんなを集めてくれないか。話さなければならないことがある」

しばらくして、大広間に人々が集まった。シャドウクリフ王国の外交官レイモンド・ブラックソーン、村の長老たち、そして研究者たち。みんなの表情に、不安と期待が入り混じっているのが見て取れた。

「アリストン、大丈夫なのか?」レイモンドが心配そうに尋ねた。彼の声には、かつての厳しさは影を潜め、代わりに本物の懸念が感じられた。僕とレイモンドの関係は、最初の緊張した交渉から、今では互いを理解し合う同志とも呼べるものに変化していた。

僕は頷いた。「ああ、大丈夫だ。それより...」

深呼吸をして、僕は話し始めた。昏睡中に見た幻影のこと、そしてそこで得た情報について。

「古代の遺跡があるんです。そこには、闇の霧を封印した守護者たちの秘密が眠っている」

「遺跡?」長老の一人が眉をひそめた。「そんなものが本当にあるのですか?」

「ああ」僕は確信を込めて答えた。「場所も分かる。ヴェイルミストの北東、霧に覆われた山脈の奥だ」

レイモンドが前に出た。その姿は、シャドウクリフ王国の威厳を纏いつつも、今や僕たちの味方としての存在感を放っていた。「しかし、そんな危険な場所に...」

「行かなければならない」僕は静かに、しかし力強く言った。「このままでは、闇の霧の次の攻撃に耐えられない。秘密の書に書かれた古の魔法こそが、我々の希望なんだ」

部屋が静まり返る。みんな、事の重大さを理解したようだった。

「分かった」レイモンドが深いため息をついた。彼の目には、複雑な思いが浮かんでいた。シャドウクリフ王国の利益を考えながらも、今や彼はヴェイルミストの未来も気にかけているのだ。「だが、一人で行かせるわけにはいかない。護衛を付ける。シャドウクリフからも、精鋭を同行させよう」

その申し出に、僕は感謝の念を抱いた。かつては対立していた私たちが、今や共通の脅威に立ち向かおうとしている。この変化こそ、希望の証だと思えた。

「ありがとう、レイモンド。君の協力は本当に心強い」

レイモンドは微笑んだ。その表情には、初めて会った時には見られなかった温かみがあった。「互いの国の未来がかかっている。全力で支援しよう」

準備に三日を要した。その間、僕は体内に残る闇の霧と向き合い、少しずつそれを制御する方法を学んでいった。それは苦しい過程だったが、同時に新たな力の可能性も感じられた。レイモンドは、シャドウクリフの古文書から得た情報を共有してくれた。彼の協力は、準備を進める上で大きな助けとなった。

出発の日、城の前には多くの人々が集まっていた。

「気をつけて行ってらっしゃい、アリストン様」
「必ず、無事に戻ってきてください」

村人たちの声に送られ、僕たちの一行は北東へと出発した。

道中、霧はますます濃くなっていった。時折、不気味な影が霧の中をよぎるのが見える。護衛の兵士たちは神経をとがらせているが、僕には霧の動きが手に取るように分かった。

「もうすぐだ」

僕の言葉と共に、霧の向こうに巨大な山の輪郭が見えてきた。その山肌には、古代の文字が刻まれているのが見える。

「あれは...」

護衛の一人が驚いた声を上げた。

「守護者たちの警告だ」僕は静かに説明した。「"ここより先に進む者よ、覚悟せよ"...そう書かれている」

一行の表情が引き締まる。

山の麓に到着すると、そこには巨大な石門があった。その表面には複雑な魔法陣が刻まれている。

「どうやって開ければ...」

護衛の一人が呟いたその時、僕の体内に残っていた闇の霧が反応した。

「くっ...!」

突然の痛みに僕は膝をつく。しかし、その痛みと共に、扉を開く方法が脳裏に浮かんだ。

「下がってください」

僕は両手を石門に押し付け、体内の力を解放した。すると、魔法陣が輝き始め、ゆっくりと扉が開いていく。

「すごい...」

感嘆の声が上がる中、僕たちは遺跡の中へと足を踏み入れた。

内部は、予想以上に保存状態が良かった。壁には古代の壁画が描かれ、至る所に不思議な装置が置かれている。

「これらは一体...」

僕が壁画に近づいたその時、突然床が揺れ始めた。

「注意して!」

僕の警告の直後、床が割れ、僕たちは深い穴へと落下していった。

「うわあああっ!」

闇の中を落ちていく感覚。そして...。

「おっと」

柔らかい何かが僕たちの落下を受け止めた。目を開けると、そこは幻想的な光に満ちた広間だった。

「みんな、無事か?」

幸い、全員が無事だったようだ。

広間の中央には、巨大な石碑が立っていた。その表面には、複雑な文字が刻まれている。

「これは...」

僕が石碑に近づくと、突然文字が輝き始めた。そして、石碑の前に幽霊のような姿が現れた。

「よくぞここまで来た、若き守護者よ」

その声は、どこか懐かしく、そして威厳に満ちていた。

「あなたは...」

「私は、かつてこの地を守護していた者の一人だ。お前が来るのを、長い間待っていた」

僕は息を呑んだ。ついに、守護者たちの秘密に辿り着いたのだ。

「教えてください」僕は真剣な表情で言った。「闇の霧を倒す方法を」

守護者の幽霊は静かに頷いた。

「よかろう。だが、それを知るには試練を乗り越えねばならぬ。お前に、その覚悟はあるか?」

僕は迷わず答えた。

「はい、どんな試練でも受けて立ちます」

守護者の目が、僕を見抜くように輝いた。

「よかろう。では、始めよう。お前の真の力を目覚めさせる儀式を」

その言葉と共に、広間全体が光に包まれた。

僕の体が宙に浮かび、周りを光の渦が巡り始める。これから始まる試練が、どれほど過酷なものになるのか想像もつかない。

しかし、僕には後には引けない。ヴェイルミストのため、そして世界のため...。

守護者の声が、僕の心に直接響いた。

「準備はいいか、若き守護者よ。お前の真の旅は、ここからだ」

僕は目を閉じ、深く息を吸った。

「はい、始めましょう」

こうして、僕の新たな試練が幕を開けた。その先に待っているものが、僕の想像を遥かに超えるものだとは、まだ知る由もなかった。
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