霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太

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内なる闇との対峙

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周囲の景色が歪み、再び形を成す。僕は目を開けると、そこが見覚えのある場所だと気づいた。ヴェイルミストの中心広場だ。しかし、何かが違う。

空は暗く、建物は荒廃し、かつての活気は影も形もない。そして、広場の中央には...。

「これは...」

僕は息を呑んだ。そこには僕自身が立っていた。しかし、その姿は僕の知るものとは全く異なっていた。

漆黒の霧を纏い、冷酷な笑みを浮かべるその姿。目は紫色に輝き、その周りには恐怖に震える村人たちがいる。

「よく来たな、アリストン」

もう一人の僕が口を開く。その声は僕のものでありながら、どこか異質だった。

「お前は...僕?」

「そう、お前の可能性の一つだ」闇の僕が答える。「力に溺れ、全てを支配した未来のお前さ」

僕は戸惑いを隠せない。これが、僕の可能性?こんな恐ろしい存在に?

「信じられないか?」闇の僕が嗤う。「だが、これもまた真実だ。お前の中にある闇の可能性さ」

突然、周囲の景色が変わる。そこには、僕が闇の力を振るう様々な場面が映し出されていた。

村人たちを奴隷のように使役する姿。
シャドウクリフを征服し、その民を虐げる姿。
果ては、世界中を闇の霧で覆い尽くす姿。

「やめろ!」僕は叫んだ。「僕はこんなことはしない!」

「本当にそうか?」闇の僕が近づいてくる。「力があれば、誰もお前を止められない。全てを思いのままにできるんだぞ」

その言葉に、僕の心が揺らぐ。確かに、こんな力があれば...。

「違う!」僕は必死に否定する。「僕には守るべき人がいる。オリヴィア、ヴァルデマール、村人たち、レイモンド...」

「彼らのためだと?」闇の僕が嘲笑う。「彼らこそが、お前の足かせになっているんだ。彼らを捨てれば、お前は本当の力を手に入れられる」

その瞬間、僕の目の前に映像が浮かび上がる。

オリヴィアが僕を見限る姿。
ヴァルデマールが失望の表情を浮かべる姿。
村人たちが僕を恐れ、避ける姿。
レイモンドが僕を裏切る姿。

「見たか?結局、誰もお前を理解しない。誰もお前の味方にはならないんだ」

闇の僕の言葉が、僕の心に突き刺さる。

「そんな...」

僕は膝をつく。心が闇に飲み込まれそうになる。

その時、かすかな光が見えた。

記憶の中の声が聞こえる。

「アリストン、あなたの力を信じているわ」オリヴィアの声。
「若き領主よ、お前には守るべきものがあるはずじゃ」ヴァルデマールの声。
「領主様、私たちはあなたと共にいます」村人たちの声。
「アリストン、お前を信じている」レイモンドの声。

そうだ。僕には、信じてくれる人がいる。

「違う」僕はゆっくりと立ち上がる。「確かに、僕の中にはこの可能性もある。でも、それは僕が選ぶものじゃない」

闇の僕が驚いた表情を浮かべる。

「僕には守るべき人がいる。彼らの笑顔を守るために、僕は戦う。たとえ、彼らが僕を見限ることがあっても...それでも、僕は彼らを守り続ける」

僕の体から、光が放たれ始める。

「なぜだ!」闇の僕が叫ぶ。「なぜ、この力を拒むんだ!」

「それは...」僕は静かに答えた。「この力で守れるものより、失うものの方が大切だからだ」

光が闇を押し返していく。

「くっ...」闇の僕が苦しそうに呟く。「だが、忘れるな。私もまた、お前自身なのだ」

「ああ、分かっている」僕は頷いた。「だからこそ、決して忘れない。この可能性があることを。そして、それを選ばないという決意を」

闇の僕の姿が、光の中に溶けていく。

「よくぞ乗り越えた、若き守護者よ」

守護者の声が響く。僕が振り返ると、そこには穏やかな表情の守護者が立っていた。

「お前は最後の試練を見事に克服した。自らの闇と向き合い、それを受け入れながらも乗り越える...これぞ、真の強さだ」

僕は深々と頭を下げた。全身が痛み、心は疲れ果てていた。しかし、新たな力と覚悟が芽生えているのを感じる。

「ありがとうございます」

「だが、これは始まりに過ぎない」

守護者の表情が厳しくなる。

「闇の霧の本当の恐ろしさは、これからだ。お前の力を最大限に引き出し、仲間たちと共に立ち向かわねば」

僕は決意を込めて頷いた。「はい、必ず...」

その時、突然地面が揺れ始めた。

「なっ...!?」

守護者の表情が曇る。「まさか、こんなに早く...」

「何が起きているんです!?」

「闇の霧が...完全に目覚めてしまったようだ」

僕の背筋が凍りついた。

守護者は急いで言った。「急げ!地上に戻るんだ。お前の仲間たちが、危険に晒されている!」

僕は必死に頷き、地上への道を探し始めた。しかし、遺跡全体が揺れ動き、道を見つけるのは困難を極めた。

「くっ...このままじゃ...」

その時、僕の中で新たに目覚めた力が反応した。

「そうか、これを使えば!」

僕は両手を広げ、霧を操る。すると、僕の周りに霧の渦が巻き起こり、僕を包み込んだ。

「みんな...待っていてくれ。今、行く!」

僕は霧と共に、地上へと飛び立った。

遺跡を飛び出すと、そこには信じられない光景が広がっていた。空が紫色に染まり、大地には無数の亀裂が走っている。そして、その亀裂から漆黒の霧が噴き出していた。

「これが...闇の霧の本当の姿」

僕は震える声で呟いた。

目の前には、想像を絶する戦いが待っている。しかし、もう後には引けない。

僕は新たに目覚めた力を感じながら、決意を固めた。

「さあ、最後の戦いだ」

そう言って、僕は仲間たちの元へと飛び立った。闇の霧との決戦の時が、いよいよ訪れたのだ。
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