霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太

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迫り来る闇

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紫色に染まった空の下、僕は霧と共に地上へと舞い降りた。遠くでは雷鳴が轟き、大地には無数の亀裂が走っている。その隙間から、漆黒の霧が次々と湧き出していた。

「アリストン様!」

振り返ると、エリザベスが駆け寄ってくるのが見えた。その表情には安堵と焦りが混ざっている。

「エリザベス、皆の無事は?」

「はい、なんとか...。でも、状況は刻一刻と悪化しています」

彼女の説明によると、僕が遺跡に入ってから数時間後に突如として地震が起き、その直後から紫の霧が噴出し始めたという。村人たちは一時的に城内に避難させたが、霧の勢いは増す一方だった。

「レイモンドは?」

「シャドウクリフに急報を送り、援軍を要請しています。しかし...」

エリザベスの言葉が途切れる。

「しかし?」

「闇の霧は、ヴェイルミストの境界を越えて広がり始めています。シャドウクリフにも被害が出始めているようです」

僕は歯を食いしばった。状況は予想以上に深刻だ。

「アリストン!」

振り返ると、レイモンドが走ってくるのが見えた。その顔には疲労の色が濃く出ている。

「無事だったか。心配していたぞ」

「ああ、なんとか」僕は頷いた。「状況は?」

レイモンドは重々しく息を吐いた。

「芳しくない。シャドウクリフからの援軍は期待できそうにない。我が国も闇の霧への対応に追われているようだ」

「そうか...」

僕は空を見上げた。紫の霧が渦を巻き、その中心から何かが生まれ出ようとしているように見える。

「時間がない」僕は決意を固めて言った。「今すぐに対策を立てよう」

城の大広間に、残された者たちが集まった。村の長老たち、研究者たち、そしてレイモンド。皆の表情に不安の色が見える。

「まず、現状を整理しよう」僕は静かに、しかし力強く言った。「闇の霧は刻一刻と広がっている。このままでは、ヴェイルミスト全体が飲み込まれてしまう」

「どうすればいいんです?」村の長老の一人が震える声で言った。

「私には策がある」僕は深く息を吸った。「遺跡で学んだ術を使えば、霧を一時的に押し戻すことができる」

「本当か?」レイモンドが身を乗り出した。

「ああ。だが...」僕は躊躇いがちに続けた。「それには大きなリスクが伴う」

部屋の空気が一気に緊張した。

「どんなリスクだ?」レイモンドが尋ねた。

「霧を押し戻すためには、私自身が霧の中心に向かわなければならない。そして...」

僕は一瞬言葉を詰まらせた。

「闇の霧の根源と直接対峙することになる」

部屋に重苦しい沈黙が流れた。

「だめだ」レイモンドが強く言った。「そんな危険なことは...」

「他に方法はありません」僕は静かに、しかし断固とした口調で言った。「このままでは、全てが失われてしまう」

「しかし...」

「レイモンド」僕は彼の目をまっすぐ見つめた。「私にはこの力がある。そして、この力を使う責任もある」

レイモンドは長い間僕を見つめ、そして深いため息をついた。

「分かった。だが、お前一人では行かせない。私も共に行こう」

「私も行きます」エリザベスが前に出た。「研究者として、闇の霧の性質を調べる必要があります」

次々と、共に行くと名乗り出る者たちが現れた。僕は胸が熱くなるのを感じた。

「みんな...ありがとう」

計画の詳細を詰めている最中、突然の衝撃が城全体を揺るがした。

「なっ...!?」

窓の外を見ると、紫の霧の渦の中心から、巨大な影が形作られつつあるのが見えた。

「あれは...」

僕の背筋が凍りついた。闇の霧の化身。かつて夢の中で見た、あの存在だ。

「もう時間がない」僕は急いで言った。「今すぐ出発する」

準備を整え、僕たちは城を出た。紫の霧が渦巻く中、その中心に向かって進む。

途中、僕は立ち止まり、振り返った。霧に包まれつつあるヴェイルミストの風景。守るべきもの、大切なもの。全てがここにある。

「必ず...守ってみせる」

僕は静かに誓った。そして、仲間たちと共に、闇の霧の中心へと歩を進めた。

決戦の時が、いよいよ訪れようとしていた。
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