32 / 52
オサム
可哀想なのは誰なのか(5)
しおりを挟む
神成さんが誰を好きだったとしても、それが安田くんだったとしても、僕には関係ない。
そう言い聞かせていても、燻ぶったモヤモヤは一向に消えず、それどころかどんどんと膨らんでいくようだった。
一度、何でもないフリを装って、安田くんと付き合っているのかどうか聞いてみた。
神成さんの答えはNO、しかも大嫌いだった。
その答えに、胸を撫で下ろした。
自分にはナミちゃんという彼女がいながら、神成さんには誰とも付き合ってほしくないなんて。そんなことを一瞬でも思った自分が最低すぎて、ナミちゃんにも神成さんにも申し訳なくなって。居た堪れない気持ちで一杯になった。
もう、自分でも自分がどうしたいのか、分からない。
……神成さんのことをこれ以上考えるのは止めよう。
彼女は仲のいい友人で、それ以上でもそれ以下でもない。何より僕にはナミちゃんがいる。ナミちゃんはこんな僕のことを好きだと言ってくれる稀有な存在で、本当に天使の様な子だ。もちろん僕もそんなナミちゃんが好きだ。ナミちゃんの想いを真摯に受けとめて、そして答えたい。ナミちゃんのことだけを考えたい。
ナミちゃんを悲しませるような、裏切る様な事は絶対にしちゃいけないんだ。
そう必死になって言い聞かせるも、ダメだった。
あの日のーー居酒屋のトイレでのあの、神成さんの顔。
あの一瞬で、友人だった神成さんは僕にとって恋愛対象どころか、性的対象となり果てた。
大学に行っても、論文を進めている時も、ご飯を食べていても、お風呂に入っていても、ナミちゃんと話している時も、ナミちゃんを抱いてる時も。
いつも頭の片隅に、あの時の神成さんの表情がチラついていた。そして、その顔を思い出す度に、かっと身体の芯が火照って汗が噴き出すのだ。
さらに、僕の頭を熱くさせる原因がある。ーー安田くんだ。
多分、いや絶対に神成さんと安田くんは特別な関係だ。
あの神成さんにあんな表情をさせるのだ。何もないはずがない。
あの時も、具合の悪くなった神成さんを介抱していたなんて言っていたけど、絶対違う。あの場では突然のことに動揺して言われるがままになってしまったけど、後になって考えれば考えるほど怪しい。
確実に、二人の間には身体の関係がある。
苦い気持ちが広がって、僕は無意識のうちに、ぎりっと奥歯を噛み締めた。
神成さんと安田くんがーー
そう思うと安田くんに対する嫉妬と神成さんに対する独占欲で目の前が真っ赤に染まり、発狂したくなる。だというのに、安田くんの手によって厭らしく乱れる神成さんを想像すると、僕のペニスは痛い位勃起した。そして僕は、それを自分の手で解放するどころか、全てをぶつけるようにナミちゃんの中に吐き出した。一度だけではなく、何度も、何度も。八つ当たりのように、腰を打ち付けた。
こんな自分が最低すぎて死にたい。
あの日から僕はナミちゃんを抱いた後、必ず酷い自己嫌悪に陥るようになった。
記憶の中の神成さんに欲情して、それをナミちゃんと重ねて、ぶつけて、後悔する。それが最近のセックスの一連の流れとさえなっていた。
ーーもう色々と、限界だ。
この現状をどうにかしたくて、僕は安田くんの元へと行った。
そう言い聞かせていても、燻ぶったモヤモヤは一向に消えず、それどころかどんどんと膨らんでいくようだった。
一度、何でもないフリを装って、安田くんと付き合っているのかどうか聞いてみた。
神成さんの答えはNO、しかも大嫌いだった。
その答えに、胸を撫で下ろした。
自分にはナミちゃんという彼女がいながら、神成さんには誰とも付き合ってほしくないなんて。そんなことを一瞬でも思った自分が最低すぎて、ナミちゃんにも神成さんにも申し訳なくなって。居た堪れない気持ちで一杯になった。
もう、自分でも自分がどうしたいのか、分からない。
……神成さんのことをこれ以上考えるのは止めよう。
彼女は仲のいい友人で、それ以上でもそれ以下でもない。何より僕にはナミちゃんがいる。ナミちゃんはこんな僕のことを好きだと言ってくれる稀有な存在で、本当に天使の様な子だ。もちろん僕もそんなナミちゃんが好きだ。ナミちゃんの想いを真摯に受けとめて、そして答えたい。ナミちゃんのことだけを考えたい。
ナミちゃんを悲しませるような、裏切る様な事は絶対にしちゃいけないんだ。
そう必死になって言い聞かせるも、ダメだった。
あの日のーー居酒屋のトイレでのあの、神成さんの顔。
あの一瞬で、友人だった神成さんは僕にとって恋愛対象どころか、性的対象となり果てた。
大学に行っても、論文を進めている時も、ご飯を食べていても、お風呂に入っていても、ナミちゃんと話している時も、ナミちゃんを抱いてる時も。
いつも頭の片隅に、あの時の神成さんの表情がチラついていた。そして、その顔を思い出す度に、かっと身体の芯が火照って汗が噴き出すのだ。
さらに、僕の頭を熱くさせる原因がある。ーー安田くんだ。
多分、いや絶対に神成さんと安田くんは特別な関係だ。
あの神成さんにあんな表情をさせるのだ。何もないはずがない。
あの時も、具合の悪くなった神成さんを介抱していたなんて言っていたけど、絶対違う。あの場では突然のことに動揺して言われるがままになってしまったけど、後になって考えれば考えるほど怪しい。
確実に、二人の間には身体の関係がある。
苦い気持ちが広がって、僕は無意識のうちに、ぎりっと奥歯を噛み締めた。
神成さんと安田くんがーー
そう思うと安田くんに対する嫉妬と神成さんに対する独占欲で目の前が真っ赤に染まり、発狂したくなる。だというのに、安田くんの手によって厭らしく乱れる神成さんを想像すると、僕のペニスは痛い位勃起した。そして僕は、それを自分の手で解放するどころか、全てをぶつけるようにナミちゃんの中に吐き出した。一度だけではなく、何度も、何度も。八つ当たりのように、腰を打ち付けた。
こんな自分が最低すぎて死にたい。
あの日から僕はナミちゃんを抱いた後、必ず酷い自己嫌悪に陥るようになった。
記憶の中の神成さんに欲情して、それをナミちゃんと重ねて、ぶつけて、後悔する。それが最近のセックスの一連の流れとさえなっていた。
ーーもう色々と、限界だ。
この現状をどうにかしたくて、僕は安田くんの元へと行った。
0
あなたにおすすめの小説
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
ウブな契約妻は過保護すぎる社長の独占愛で甘く囚われる
ひなの琴莉
恋愛
大企業の清掃員として働くゆめは、ある日社長室の担当を命じられる。強面と噂される社長の誠はとても紳士的な男性だった。ある夜、ストーカーに襲われかけたところを誠に助けられ、心配してくれた彼に同居を提案される。傷ついた自分を大きな愛情で包み込んでくれる誠に、身分違いと知りつつ惹かれていくゆめ。思いを断ち切ろうと決めたとき、彼から偽装結婚を頼まれ、本当の妻のように甘く接されて……!?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
偽りの婚約者のはずが、極上御曹司の猛愛に囚われています
冬野まゆ
恋愛
誕生日目前に恋人に裏切られた舞菜香は、行きつけの飲み屋で顔見知りだった男性・裕弥と誘われるままに一夜を過ごしてしまう。翌朝も甘く口説かれ、動揺のあまりホテルから逃げ出した舞菜香だったが、その後、彼が仕事相手として再び舞菜香の前に現れて!? すべて忘れてなかったことにしてほしいと頼むが、彼は交換条件として縁談を断るための恋人役を提案してくる。しぶしぶ受け入れた舞菜香だったが、本当の恋人同士のように甘く接され、猛アプローチを受け……!?
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる